1980.09.12
LP(英) Virgin V2173 *1
1979.10.21
LP(日) ビクター VIP-6964 *1
1986
LP(英) Virgin OVED83
1987.03
CD(英) Virgin CDV2173
1989.03.01
CD(日) ヴァージンジャパン VJD-28109
1992.04.01
CD(日) ヴァージンジャパン VJCP-23135
1995.06.28
CD(日) 東芝EMI VJCP-3114
1999.07.28
CD(日) 東芝EMI TOCP-53073





日本盤LP外袋



LP
A-1
Respectable Street
Partridge
A-2
Generals And Majors
Moulding
A-3
Living Through Another Cuba
Partridge
A-4
Love At First Sight
Moulding
A-5
Rocket From A Bottle
Partridge
A-6
No Language In Our Lungs
Partridge
B-1
Greenman
Partridge
B-2
Paper And Iron (Notes And Coins)
Partridge
B-3
Burning With Optimism's Flames
Partridge
B-4
Sgt. Rock (Is Going To Help Me)
Partridge
B-5
Travels In Nihilon
Partridge

CD
01
Respectable Street
Partridge
02
Generals And Majors
Moulding
03
Living Through Another Cuba
Partridge
04
Love At First Sight
Moulding
05
Rocket From A Bottle
Partridge
06
No Language In Our Lungs
Partridge
07
Smokeless Zone *2
Moulding
08
Don't Lose Your Temper *2
Partridge
09
The Somnambulist *2
Partridge
10
Towers Of London
Partridge
11
Paper And Iron (Notes And Coins)
Partridge
12
Burning With Optimism's Flames
Partridge
13
Sgt. Rock (Is Going To Help Me)
Partridge
14
Travels In Nihilon
Partridge



Personel:
Andy Partridge(g,vo)
Colin Moulding(b,vo)
Dave Gregory(g, kb)
Terry Chambers(ds)
Producer:
Steve Lillywhite
Engineer:
Hugh Padgham
Recording Studio:
Townhouse Studio (London)



*1 英国盤、日本盤とも緑色のペーパースリーブにジャケットが包まれていた。
*2 'Generals and Majors' Single

 Black Sea は、前作のプロデューサーとエンジニアのコンビが今回も引き続いて手掛けました。彼らは、Drums And Wires 製作時のノウハウに基づいた重低音のドラムサウンドとノイズゲート/エコーマシンで一世を風靡した大傑作アルバム『Peter Gabriel(3rd)』をプロデュースしたばかりでもあり、自ずとサウンド面が注目されたアルバムです。当時のアルバム評を見ても最先端のサウンドだとか、重いドラムサウンドだとか。実際にその通りだったのですが、私が耳を奪われたのはそうした部分よりも、先ずソングライティング・センスでした。そして卓越した演奏力。これらに尽きます。
 このアルバムを初めて耳にしたのが渋谷陽一のサウンド・ストリートの新譜特集で、「Sgt Rock」,「Towers of London」,「Living Through Another Cuba」の順でした。今にして思えばこの選曲も絶妙で、どれも一度聞いたら忘れられなくなるようなフックの効いた曲ばかりでした。そしてこのアルバムから XTC に強烈にはまり出したのです。
 録音は 1st アルバムと同じくたった2週間で行われ、残り4週で仕上げられたアルバムとの事です。これは Andy の提案で Live で再現可能なアレンジだけで録音がなされ、キーボードなどのオーバー・ダビングを極力少なくした為だそうです。シンプルながらも4人の演奏の呼吸はぴったりで、ライヴ音源もブートレグを含めてこの頃が最も多いことからも、Live Band としては頂点の時期にいました。そんな彼らの凄まじいグルーヴがアルバムに忠実に再現されています。最も如実に現われているのが「Living Through Another Cuba」と「Paper And Iron」でしょう。特に前者の狂ったようなビートは強烈でした。
 一方で Beatles が引合いに出されたのもこの頃からでしょうか。けだるい「No Language In Our Lang」には Beatles の「I Want You」の影がちらつきますし、「Respectable Street」や「Towers Of London」には Kinks や Small Faces などの 60年代の英国ロックの影響が感じられます。評論家の間では、Andy と Colin のソングライティングが Lennon/McCartney と比較され始めました。サウンドの斬新さと英国的な楽曲の味わい深さが両立していることも、この作品の魅力でした。
 アルバムから4曲もシングルカットされたことからも判るように、今まで以上にポップで人なつっこいアルバムを作り上げた XTC。しかしアルバムの最後はそれまでの流れをひっくり返すような攻撃的でヘビーな曲で幕を閉じます。これがアルバムに一層の深みを与えています。
 Black Sea は主にサウンド面が取り沙汰されたためか、80年代の終り頃には English Settlement や Skylarking の影に隠れた印象がありました。しかし現在はこれを XTC の最高作に挙げる声もあり、1999年の時点では日本盤で手に入る Virgin レーベル時代の作品は本作だけという有り様です。思うに 90年代に入って最もその評価が高まった作品ということでしょう。Blur に代表される所謂「ブリット・ポップ」や日本のユニコーン等、この頃の XTC に強い影響を受けたグループが数多く登場したことも、Black Sea の再評価に継っているのだろうと考えています。
 個人的な話ですが、このアルバムは間違いなく自分が1980年代に一番聴いたアルバムであり、今でも愛聴しています。丁度、思春期の頃に聴いて衝撃を受けた作品だという事もありますけど、約20年前のアルバムだというのに自分の中では全く色褪せません。個々の曲の完成度、曲順構成、トータリティ、歌詞の素晴らしさ、演奏の上手さ、音の良さ、どれを取ってもほとんどケチの付けようがありません。『Terry & The Lovemen』,『Work Under Pressure』など予定されたアルバムタイトルが没になって、ジャケットから「海に関する事なら」というなげやりな理由で Black Sea に決まったという逸話を除けば(笑)。




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