Shelley Fabares

Johnny Angel

1962 Colpix / Victor JET-1093 / Single





 あたたかなアルトの歌声、英語の洗練された発音、さらには、その整った容姿を裏切る茶目っ気……。竹内まりやさんと Karen Carpenter にはいくつもの共通点が認められます。そこへ、今回もうひとつ、60sポップスのカヴァー・アルバムが加わることとなりました。
 Carpenters の1973年のアルバム『Now & Then』のB面は、Richard と Karen 兄妹の愛聴・愛唱した60sポップスのカヴァーに彩られています(詳しくは、なかのみどりさん、森勉氏の文章をご覧ください)。「Fun, Fun, Fun」からはじまる8曲のメドレーの中には、まりやさんがこのたびカヴァーした「The End Of The World」と「Johnny Angel」も含まれており、そのしめくくりは「Yesterday Once More (reprise)」。そう、まりやさんの1stアルバム『Beginning』のラスト・トラック「すてきなヒットソング」は、同じノスタルジアを下敷きにした作品だったのです。同曲は、彼女が作詞・作曲を手がけた作品としては初めて世に出たものですが、その中で彼女は、「今も」「大事にして」「時々口ずさむ」「なつかしい歌」としてやはり8曲の60sポップスを挙げており、その最後のタイトルが他でもない「Johnny Angel」でした。


 同曲のオリジナル・アーティスト Shelley Fabares は、昨今は、大滝詠一氏らのナイアガラ・トライアングルのコンセプト・モデルとなった Teenage Triangle の一角を占めた歌手として知られているようですが、そもそもは、1958年から放映された人気テレビ・ドラマ『The Donna Reed Show(うちのママは世界一)』で娘役をつとめた女優でした。それが、1962年、CBSテレビの同番組のプロデューサーが一計を案じ、今日いうところのメディア・ミックス戦略にのっとり、系列会社の Colpix(Columbia Picturesの略)からレコードを出そうと目論み、嫌がる Shelley を説き伏せて、「Johnny Angel」をもって歌手デビューの運びとなったのでした。そうした経緯がありながら、Lee Pockriss(「Itsy Bitsy Teenie Weenie Yellow Polkadot Bikini(ビキニスタイルのお嬢さん)」の作曲者)と Lyn Duddy によるこのドリーミーな佳曲は、Billboard 誌Hot 100チャートに登場するや、またたくまにNo.1の座にのぼりつめ、60年代ガール・ポップスを代表する1曲にまでなりました。

 それから41年。Shelley は、Dunhill の創設者 Lou Adler と数年の夫婦生活を送ったのち、後年、俳優のMike Farrellと再婚し、齢60になんなんとする現在も女優として活躍中。公私共に充実した日々を送っているといいます。Karen は、『Now & Then』発表の10年後、拒食症の悪化のため、32年11ヶ月の短い生涯を終えました。そして、まりやさんは、「すてきなヒットソング」から四半世紀を経て、今秋、60sポップスへの変わることのない愛情を、そのきらめきを、私たちにあらためて伝えてくれます。

  いつのまにか時は過ぎて
  何もかもが変わったけど
  これだけはずっと残ってる
  すてきなあの日のヒットソングス

(T.M)


Colpix CP 621



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