Special Issue

Carpenters の思い出

森 勉





 Carpenters のレコードはアメリカではA&Mからの発売ですが、日本ではキング・レコードから発売されていました。1971年になってからだったと思いますが、セカンド・アルバムの『Close To You』が日本で始めて紹介されたアルバムとなりました。アメリカでは1970年からヒットを連発していましたが、日本では約1年遅れて人気に火がついたといった感じでした。この当時はそのぐらいのタイム・ラグは普通で、ほとんどの音楽ファンは日本盤が出たことによってその存在を知るという、ある意味幸せな時代でした。何が何でもスピードが優先されてしまう時代は情報量も多く、それを自分の中で処理するだけでも大変な時代になりました。
 話がそれてしまいましたが、横丁に入ったついでに1970年代前半のキング・レコードについて少し。このころのキングは音楽ファンにとって非常に魅力あるレコード会社で、僕がお小遣いを工面して買ったキング・レコードから発売されたアーティストを紹介すると、Carole King、Paul Williams、Barry White、Cat Stevens、Procol Harum、Joe Cocker、The Moody Blues、Humble Pie、Deodato、Don McLean、Otis Clay などなど。歌詞、対訳、解説などが充実していたものが多かったなあ。
 さて、Carpenters。友達で持っているやつがいたので、それを借りて聴くという半端なファンでしたが、曲は好きなものが多くありました。The Beatles のカヴァー「Ticket To Ride」、「Help」、Burt Bacharach 作品の「Close To You」(後半一度ブレイクしてまた出てくるところが大好き!)とサード・アルバムに入っていったバカラック・メドレー、Paul Williams & Roger Nichols 作の「We've Only Just Begun」などが特にお気に入りでした。1973年になって自分ではじめて買ったアルバム『Now & Then』が出ました。B面のオールディーズ・メドレーが購買動機になりました。この当時は”オールディーズ・バット・グッディーズ”という言葉があちらこちらで使われ、1950年代後半から1960年代前半に流行っていた曲を集めたオムニバス盤がレコード各社で編集されて仲間うちで話題になっていました。Carpenters はそれをただカヴァーするだけではなく、アメリカでラジオを聴いているようなDJを織り込みながら披露してくれました。なんと言っても車の爆音SE入りの The Beach Boys のナンバー「Fun Fun Fun」から始まるメドレーは個人的に嬉しかったものです。Brian Wilson 作品で始まり、Carole King 作品で終わるという僕にとっては文句のつけようのないオールディーズ・メドレーでした。ちなみに、現在ライブ盤として残っている『Live In Japan』ではドゥワップ・ナンバーも含めたメドレーが聴けますので是非。自分の好きな曲をいい形でカヴァーしてくれる彼らの存在がとても身近になり、彼らの作り出す音にますます共感を持てるようになったアルバムが『Now And Then』でした。
 そして、そのオールディーズ・メドレーをはさんだ「Yesterday Once More」は本当に名曲だと思います。楽しさとせつなさ−個人的にはこの曲を聴くと、いつでもラジオにかじりついていた時代の自分に戻れるような気がします。



Copyright (c) circustown.net