第4回 : 中村欣嗣さん



音楽とオーディオの最適な関係

-達郎さんもアナログからデジタルに行くときにすごく苦労されましたよね。オーディオもアナログ盤からCDになって、演奏した音がなかなか忠実に再現されないということがあったと思うんですが、中村さんとしてもそういう苦労はおありでしたか。
 大滝さんにしても、山下さんにしても葛藤というか、相当苦労されたと思います。暗中模索というか、とにかくやってみなければ分からない、スタッフにしてもアナログの技術者にデータが作れるのか、ということはあったと思います。それで山下さんも相当アルバムが遅れましたよね。大滝さんはああいう性格だからデジタルはすごい楽だと思ったみたいですよ。でもそれが本当に分かるようになるまでにはCDになってからやっぱり10年ぐらいかかったみたいですけどね。

 最初はマイナス18dBぐらいなんですね。なぜかというと、それ以上ぶっこんだら音が割れると思っていたんですね。みんなアナログ出身者だったからなんです。アナログはなるべく音を小さく録ったほうがきれいに入る。それがあったからみんな低く緑ったんです。もっともっと上があると思っていたんだけど怖くて出来なかったんですよ。そこをどうやってうまく入れていくかが腕の見せ所だったんですが、当時はあまりにもADコンバータが良くなかった。それでその当時大滝さんとが何をやっていたかというと、デジタルとアナログの互換を合わせるということだったんです。「互換への旅」という(笑)・・・。





 SONYのPCMプロセッサーのPCM-1630と1610の音の違いをいろいろと試していたんです。まあ、そういう試行錯誤を繰り返してお二人とも本当によく勉強されたと思います。その答えが見つかりかけた頃に僕が大滝さんの所に初めて行ったんですよ。当時大滝さんがDATの良いのが欲しいというのでSONYの7010というのを薦めて、で達郎さんにも同じの買っていただいて。それから電源まわりをアドバイスさせてもらったり。1個50万円ぐらいするやつを一つの機械に1個ずつという・・・。

-大滝さんのオーディオの道っていうのはもう大体「見えた」というところまでは来たんですかね。
 もう行き着いたと思いますよ。

-それで「庭」の方に行っちゃったという(笑)。
-さて最後になりましたが、中村さんはその人が奏でる楽器の音を忠実に再現してくれるのがいいオーディオとして意味を持つという持論をお持ちになっているそうですが。
 僕はそう思うね。絶対そうだと思う。オーディオには2通りあって、自分の好きな音にして楽しむというのと、本物を知りたいということ。僕は絶対、本物を知りたいんですよ。
 僕はミュージシャン上がりだから、ミュージシャンというのは自分を表現するために道具として楽器を選んだりするということが分かる。だからその音が出てくれないとそのミュージシャンに対して失礼じゃないかと思うんですよ。クラシックやっている人は特にそうなんですけど、ラッパの音を柔らかくしよう、柔らかくしようとみんな思っているんですよ。何で柔らかくしようとするかというとその方が、ハーモニーしやすいんですよね。だからそのような音で出てくれないといけないし、チューニングしなければいけない、と思うんです。
 オーディオっていばっちゃいけないんですよ。脇役だしあくまでも道具であって、主役は演奏しているミュージシャン、アーティストなんですよ。
 昔、大滝さんが「『A Long Vacation』の主役は聴くリスナーだ」と言ってましたが、感動しました。山下さんもそういう考え方を持っているんですよ。大滝さんや山下さんが凄いのはギター1つとっても何本も用意してやるでしょ?山下さんのコンサートは長いですよね。コンサートを初めて見た時、一生懸命やっていることに涙出ましたね。「サンデー・ソング・ブック」を聴き始めたら、リスナーの熱いハガキというかそれを聴いて、なるほどこういう人達がファンとしてたくさんいるから、こんな風に一生懸命になるんだと思いました。
 3.21に大滝さんの『A Long Vacation』のイベントに行ってあれはあれで、すげー感動しちゃってさ、控え室で感動に浸っていたんですよ、実は。

-僕達は会場で大爆笑に浸っていたんですよ(笑)。

□□□□□(2001年7月16日
□□□□□秋葉原ダイナミック・オーディオSound Houseにて)



Copyright (c) circustown.net 1999 - 2001, All Right Reserved.