『Gabriel's Message』
Various Artists
NAXOS 8.554723
1999/CD
 とっても心が落ち着くクリスマスキャロルのCDを紹介しましょう。クリスマスキャロルとは、神をたたえクリスマスをお祝いする讃美歌などの曲です。キャロルの起源は中世のヨーロッパで、一般庶民がダンスの伴奏曲に用いたものだそうですが、現在は純粋に音楽だけが歌われています。Carol という単語の語源には「輪舞」があり、初期にはクリスマス以外の行事でも踊っていたそうです。ヨーロッパのふるいポピュラーミュージックの一つともいえるでしょう。


 このCDは合唱団とオルガンによるキャロルを20曲収録しており、演奏は聖歌隊など3つの合唱団によります。コーラスの持つ力は素晴らしく、自然と敬謙な気持ちにさせられます。実は私は合唱団にいたことがあって、ミサ曲なども何度か歌った経験があります。ですから礼拝とか結婚式で大きな声で讃美歌を歌うと、教会のおばさんに誉められることがあります。そういえば、池袋の某デパートで讃美歌を歌いながら店内を歩きまわるとかいうあやしいバイトもしたこともあります。いずれにせよそういう時は合唱団上がりでよかったなと思います。
 本CDは「キャロルの1000年」と副題されていますが、年代が明記されているものだけでも、14世紀の旋律から20世紀の現代音楽の作曲家の手になる作品までが収録されています。


"O Come All Ye Faithful"
18世紀中頃、フランスの曲。本CDでは4番まで演奏。曲が進むにつれよりダイナミックになる合唱とオルガンに心を動かされる。

"Silent Night"
1818年にチロル地方の教会のミサのために書かれた曲。こちらは無伴奏で、非常にやわらかい女声の高音を活かしたアレンジ。フォルテからピアノへの美しい切り替えがまことに鮮やか。

"God is with Us"
現在イギリスを代表する現代作曲家 John Tavener の1987年作。この人はかつて Apple Record からアルバム(くじら)を出したおかげで超ビートルズ・コレクタには有名。ソロとユニゾンを上手に使い、古典的な味わいを出しています。

"What Sweeter Music"
こちらもイギリスの作曲家 John Rutter の1970年代と思われる作。シンプルかつロマンチック。なつかしいアメリカ民謡のようでいてかつ宗教的な旋律が非常に魅力的で、本CD一番聞いていただきたい曲。この曲を含め、ここまでの4曲を演奏しているのは Elora Festival Singers というカナダの合唱団。このコーラスがすごく上手い。特に高音部やピアニッシモなどの難しい部分でもきれいに声がそろいます。

"Gabriel's Message"
伝承曲を大御所、英国王立音楽院の David Willcocks がアレンジに基づいて。彼の讃美歌のアレンジは、達郎さんも「Season's Greetings」では参考にしたとこのとですが、無駄を排した演奏にヨーロッパの田舎の街角が思い浮かびます。

キャロルでクリスマスはいかがでしょうか。

『ふたりだけの言葉』
国分友里惠
KING KATC101
1999/CD
 サーカスタウンのみなさんには、達郎さんまりやさんのバックヴォーカルでおなじみの国分友里惠さんのアルバムを紹介します。私はまりやさんが復活コンサートのトークで紹介されるのを聞いて、友里惠さんが讃美歌のアルバムを出していることを知りました。このアルバムはご主人の岩本正樹さんと一緒に作ったオリジナルの讃美歌集で、作曲は岩本さん、讃美歌を元にした作詞は友里惠さんの手になります。宗教歌ですが、岩本さんのピアノ、キーボードをベースに曲と編曲はおだやかなポップスです。
 友里惠さんは数枚のポップスアルバムを出しているそうですが、1999年にこのアルバムを含む2作の讃美歌集を発表しています。この讃美歌集はポップな曲に日本語でストレートに神への気持ちが乗せられていて、とてもわかりやすいものになっています。宗教歌も日本語以外だとどうしても雰囲気で聞いてしまって、実はその意味をつかむことが難しいのですが、このCDを聞くと讃美歌のメッセージの理解が深まります。強烈なラブソングに聞こえる曲もあります。このアルバムはクリスマス・アルバムというわけではありませんが、クリスマスや休日にぴったりです。『まりやさまも聞く讃美歌集』はいかが?


(たかはしかつみ)






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