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フィラデルフィア・ソウルの源流を探る 〜 Barbara Mason

2025.08.07
Yes, I'm Ready

Yes, I'm Ready

Barbara Mason

(1965)

#Songwriter

(2025年8月3日SSB『納涼リクエスト大会』で "Maybe - If I Leave You" / Richmond International がかかったので、作者の Barbara Mason を取り上げます。)

Songwriterシリーズ
今回は Barbara Mason を取り上げていきます。

以前、Kenny Gamble の項目で Barbara Mason の "Yes, I'm Ready" のことを少し触れました。今回、その Barbara Mason を主に取り上げていきたいと思います。

Barbara Mason は1947年、ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。12歳の若さで祖母のピアノを弾き始めたそうです。歌だけでなく楽曲の大部分を作曲も手掛け、自ら曲を作り、ピアノ伴奏も担当し、自宅近くで開催される地元のタレントショーなどにも出演していました。彼女の近所には Doo Wop グループ、Larks のメンバーが住んでおり、彼らのライブにも度々出演。この Larks を介して、フィラデルフィアでDJをしていた Jimmy Bishop に出会います。彼は Barbara Mason の才能に惚れ込み、1964年にローカルレコード会社から "Trouble Child" でシングルデビュー。このシングルで確信した Jimmy Bishop は自らレコードレーベル Arctic Record Company を立ち上げ、Barbara Mason のデビューアルバム制作に取り掛かります。

1965年の夏、録音エンジニア Frank Virtue の Virtue Studios で Barbara Mason の自作の曲、"Yes, I'm Ready" のセッションが行われました。Jimmy Bishop がミュージシャンとして起用したのが Virtue Studios で腕をあげてきたスタジオミュージシャン達でした。ギターに Norman Harris、ベースに Ronnie Baker、ドラムスに Earl Young、そしてバックコーラスに Kenny Gamble でした。1970年以降、花開くフィラデルフィア・ソウルを担う若きミュージシャン達です。

スタジオには今まで殆どなかったストリングスを配置しました。このソウル・バラードの趣き、ストリングスの方向性は参加したミュージシャン達に大きな影響を与えることになり、その後、フィラデルフィア・ソウル "Philly Sound" が芽吹いていくことになります。

Yes, I'm Ready (Barbara Mason) / Barbara Mason (1965)

Jimmy Bishop の Arctic Records からリリースされた "Yes, I'm Ready" は Billboard R&B chart で2位、Billboard Hot 100 でも5位とヒットを記録。Carla Thomas や The Impalas といったミュージシャン達も取り上げました。ニューヨークでは Teddy Randazzo が興味を示し、The Royalettes の1965年のアルバム『It's Gonna Take A Miracle』で取り上げました。

Yes, I'm Ready (Barbara Mason) / The Royalettes (1965)





Barbara Mason が書いたスィートなソウルナンバーを聴いていきたいと思います。


Trouble Child (Barbara Mason) / Barbara Mason (1964)

Arctic Records 以前に Crusader Records からリリースしたシングルを聴いてみましょう。Barbara Mason の実質的デビューシングルです。1964年リリースですが、またこの頃のサウンドには "Philly Sound" に芽吹きを感じることはまだできないです。


Oh How It Hurts (Barbara Mason-Bernard Robert Broomer) / Barbara Mason (1968)

1968年に録音されたセカンドアルバム『Oh How It Hurts』収録曲。ファーストアルバム『Yes I'm Ready』に続く、スィートなソウルバラードが多く含まれ、Smokey Robinson、 Ed Townsend の楽曲も取り上げています。


Caught In The Middle (Of A One Sided Love Affair) (Barbara Mason) / Barbara Mason (1973)

1973年、Buddah Records からリリースされたアルバム『Lady Love』から。この頃になると Sigma Sound Studio で録音が行われていますが、参加ミュージシャン達はデビューアルバム『Yes I'm Ready』と殆ど変わらず。アレンジはベーシストの Ronnie Baker が担当しています。


(Girls Have Feelings) Just Like The Boys Do (Barbara Mason-Jimmy Bishop-Norman Harris) / Della Humphrey (1969)

Barbara Mason はシンガーソングライターという形で活動、他のミュージシャンに提供した楽曲は少なめですが、2曲程聴いてみたいと思います。マイアミ生まれの Della Humphrey という女性に提供した1曲。プロデューサー Jimmy Bishop とギターリストの Norman Harris との共作曲です。アレンジは Bobby Martin。


Maybe, If I Leave You (Barbara Mason) / Richmond International (1973)

If You Should Ever (Barbara Mason) / Richmond International (1974)

バージニア州リッチモンドで結成された3人ボーカルグループ、Richmond Internationalに提供した2曲。Red Coach Records というレーベルからリリースされていますが、アレンジ担当等不明。プロデューサー Jimmy Bishop 絡みで提供したものだと思われます。2曲共実に良い曲。


Yes I'm Ready (Barbara Mason) / Barbara Mason (1973)

Barbara Mason は1973年に自らのヒット曲、"Yes I'm Ready" をセルフリメイクしています。バックコーラスには既に大物プロデューサーとなった Kenny Gamble がオリジナルに引き続き再度参加したとのことです。





【ここに登場したミュージシャン達】

Songwriterシリーズ Kenny Gamble
Songwriterシリーズ Ronnie Baker
Songwriterシリーズ Norman Harris
Songwriterシリーズ Teddy Randazzo




(富田英伸)