2017.09.13 - Songwriter
Crying In The Rain Crying In The Rain
Carole King - Songwriter

(1962)

Songwriterシリーズ、 Carole King、その第3回目です。

最終回となる第3回目は、ロサンゼルスを中心に西海岸で制作された作品を聴いていきたいと思います。

1963年、Goffin-King らが所属していた音楽出版社 Aldon Music は映画会社の大手で西海岸に本社のあるコロンビア映画社に買収され、Screen Gems-Columbia となります。それに伴ってニューヨークで制作された多くの楽曲は、コロンビア映画社の傘下のColpix Records からリリースされることが多くなってきます。

マンハッタンのブリル・ビル界隈で楽曲制作を行ってきたソングライター達は Screen Gems-Columbia の拠点が西海岸ということもあって、徐々にその場から巣立っていきます。しかし彼らの作った楽曲は大手の映画社の後ろ盾もあって、西海岸、イギリスへと販路は広がっていきます。

また、Screen Gems-Columbia は The Beatles などのイギリスのビートグループに対抗する形で、The Monkees をデビューさせ、映画会社とのコネクションを利用し、テレビでのマルチメディア商法で売り出します。そこで Goffin-King を始めとする、Screen Gems-Columbia 所属のライター達の楽曲が多く採用されるようになります。

1960年代中期になると、Goffin-King チームは人気ソングライターとしての地位を確立しますが、Gerry Goffin は作詞作業の過程で思い悩むことが多くなり、精神的に追い詰められるようになります。
1968年に2人は離婚。Carole King は新たな音楽、そして新たな仲間を求めて、住み慣れたニューヨークを離れ、西海岸、ロサンゼルスへ旅立っていきます。


Crying In The Rain(Howard Greenfield-Carole King) / The Everly Brothers(1962)

1962年、Warner Bros Records からリリース。ノンクレジットではありますが、この曲の仕掛人が Lou Adler だったということが現在、定説になっています。
Lou Adler はその後、 Carole King の西海岸での音楽の再出発点となったグループ、The City のアルバム制作や、ソロアルバム『Tapestry 』等でプロデューサーを務め、Carole King の精神的支柱となります。


Take Good Care Of My Baby (Carole King-Gerry Goffin) / Bobby Vee(1961)

1961年、ロサンジェルスの Liberty Records からリリース。シンガー、Bobby Vee に提供した人気曲でU.S. Billboard Hot 100の1位を獲得しています。プロデューサーは Snuff Garrett で以降、Snuff Garrett は積極的に Carole King の楽曲を採用するようになります。


How Many Tears(Carole King-Gerry Goffin) / Bobby Vee(1961)

これも同年、"Take Good Care Of My Baby" に先立ってリリースされた Bobby Vee への提供曲。西海岸らしい明るく爽やかなナンバーです。Liberty Records のプロデューサー、Snuff Garrett は何度もニューヨークを訪れ、Carole King のデモを聴きに来たそうです。


Point Of No Return(Carole King-Gerry Goffin) / Gene McDaniels(1962)

1962年、これも Snuff Garrett のプロデュースの Liberty Records からリリースされた作品。Gene McDaniels こと Eugene McDaniels はその後、ソングライターに転身します。明るいサウンド、力強いボーカルが魅力です。


I Can't Stay Mad At You(Carole King-Gerry Goffin) / Skeeter Davis(1963)

I Can't Stay Mad At You(Carole King-Gerry Goffin) / Pat Carroll(1963)

1963年、ナッシュビルの歌手、Skeeter Davis が取り上げた楽曲。プロデュースは Chet Atkins が担当。同年、ナッシュビル録音で Kathy Taylor という歌手も取り上げています。
オーストラリア出身のアイドルシンガー、Pat Carroll も歌っていますので合わせて一緒に。Pat Carroll は後に Olivia Newton-John と Pat and Olivia というガールデュオを組むことになります。


Can't Stop Talking About You(Carole King-Gerry Goffin) / Tobin Matthews(1963)

1963年、Warner Bros. Records からリリースされた作品。プロデュースは Al Kasha でアレンジは Alan Lorber が担当しました。ニューヨークでは Steve Lawrence & Eydie Gorme が取り上げました。後に大滝詠一さんの "FUN×4" に影響を与えた作品。


Just Once In My Life(Carole King-Gerry Goffin- Phil Spector) / The Righteous Brothers(1965)

プロデューサー Phil Spector も Goffin-King の楽曲を積極的に採用しました。Mann-Weil の "You've Lost That Lovin' Feelin'" と並ぶ名曲。US Billboard Hot 100の9位まで上昇しました。録音はハリウッドの Gold Star Studios。


A Long Way To Be Happy(Carole King-Gerry Goffin) / Carolyn Daye(1966)

A Long Way To Be Happy(Carole King-Gerry Goffin) / Darlene Love(1965)

1966年、Liberty ‎Records からリリース。 Carolyn Daye という女性シンガーが歌いました。アレンジは Gene Page が担当しました。
それに先立って、1965年に Phil Spector も取り上げています。こっちは Darlene Love の歌唱、Gold Star Studios 録音のウォール・オブ・サウンド全開です。
個人的には3拍子のロッカワルツ調の Carolyn Daye のバージョンの方が好きです。


I Can't Make It Alone(Carole King-Gerry Goffin) / P.J. Proby(1966)

1966年、Liberty ‎Records からリリース。P. J. Proby が歌いました。プロデュースとアレンジは Jack Nitzsche。Sunset Sound Studio での録音ですが、スペクター・イミテーションの中でもとりわけ優れた作品だと思います。


Up On The Roof(Carole King-Gerry Goffin) / Gerry Goffin and Carole King(Demo)

最後に、Gerry Goffin と Carole King による "Up On The Roof" のデモ録音を。Carole King のピアノで Gerry Goffin が歌っています。The Drifters、Laura Nyro、James Taylor 等多くのミュージシャンが取り上げ、愛された1曲となりました。


3回に分けて、1967年頃までに Carole King が作った楽曲を聴いていきましたが、これまで Carole King が作った曲は400曲以上と言われていますがそのごく一部となってしまいました。それぞれ録音された時代やスタジオの個性や特色、その土地そのものが持っている空気感辺りまで伝われば幸いです。

(富田英伸)

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