大滝詠一「幸せな結末」の謎
2025.12.30
2025年の幸せな結末
大滝詠一
(2025)
今年は大滝詠一の「幸せな結末」がより身近になった年でした。といっても28年も前の曲ですが。
「幸せな結末」は12小節の美しいイントロから始まります。
上原"ユカリ"裕のドン、井上鑑の天から降るピアノの音粒、鈴木茂の切り込むけどお膳立てをするギター。
「カミを (髪を) 」から始まる大滝のヴォーカル。
1番はAG、ピアノ、ベー、ドラ、EGカッティングの装飾音を排したリズム隊。途中からスネアやピアノが加わります。
2番はカスタネットや"タカタン"ピアノや弦が入ってくる。
「踊り出す」展開部に入ると、ナイアガラオーケストラ総動員。フォルテシモでユニゾンのキメ打ち。
間奏はオルガンと弦が主役。茂のお膳立て切り込みソロも活躍。
もう一度「走り出す」展開部、ユカリのタムタムで強引に主旋律に戻り佳境へ。
そして美しい "Baby, your're mine" エンディングに雪崩れ込みます。
7月に、鈴木茂のコンサートで「幸せな結末」を聴きました。ピアノは井上鑑、ドラムはユカリ。ベースは長岡道夫ですので、おそらく大滝詠一「幸せな結末」レコーディングの再現メンツであります。
鈴木茂、井上鑑、ユカリ。福生時代から大滝詠一に永く欠かせないプレイヤー。しかし3人が揃い踏みの曲はどれだけあるでしょう。鈴木茂は大滝詠一のオールタイムプレイヤーですが、福生時代は井上鑑・ユカリと入れ違い。『ロンバケ』『イーチタイム』で3人が同時セッションの曲はありますが、全曲ということでもなく、ユカリ氏はカタギの仕事についていた時期も。これぞ3人という曲はどれ?
そこでこの曲「幸せな結末」です。3人の個性的な共演が1997年に実現しました。
しかし、ライブは?筆者も永くナイアガラーをしていますが、お三方を同時に見るなんて NHK の『SONGS』くらい。この目で見るのは初めて!それがこの曲なんて。
7月の渋谷のコンサート『鈴木茂☆大滝詠一を唄うvol.9〜ナイアガラ・レコード50周年記念スペシャル〜』。メンバーは鈴木茂、井上鑑、上原”ユカリ”裕、長岡道夫、外崎銀河、鈴木雄大、田中拡邦、笹倉慎介の各氏、ゲストに伊藤銀次と杉真理のサポートが得られました。
もう一つがNHKからのプレゼント。9月の『ETV特集 POP〜大滝詠一 幸せな結末〜』 (教育) と10月の『ドキュメント 20min.マスターピース 〜大滝詠一 幸せな結末〜』 (総合) 。
番組では、同曲の残されたレコーディングセッションの一部が明らかにされました。これ程の「内部の音」はレコーディングダイアリーの堀内久彦さんくらいしか聞けた人はいなかったんじゃないかなあと思います。「山下ならー」には笑いました。とても興奮しました。
「幸せな結末」はフジテレビのドラマ『ラブジェネ』の主題歌でした。同ドラマを演出した永山耕三さんは、大滝が音を完成させるのをじっと待ったといいます。届いたのがドラマスタートの2日前。綱渡りの苦労は日本コロムビア時代のディレクター谷川恰さんの姿も思い浮かびます。
NHKの放送は画期的でした。サンレコ誌のインタビューや「ナイアガラレコーディングダイアリー」で明らかにされてきた、大滝詠一のくち三味線アレンジメント。今回ついにその一部を音で体験できました。NHKとナイアガラと堀内さんには感謝しかありません。いつか「幸せな結末」セッションズ音源の公開を心からお願いします。
「普通そうに見えて、普通でない」
「隠された爪みたいな仕掛けがあちこちに」
これはNHKで放送された井上鑑さんのコメントです。
NHKでは大滝からドラムプレイのリクエスト。そのアイデア・意向がユカリの体を通して音になる過程が明らかになりました。一方渋谷では、ユカリ、井上鑑、鈴木茂らプレイヤーたちの個性がいかにナイアガラサウンドを作っていたかをまざまざと実感しました。
「幸せな結末」は「君は天然色」に勝るとも劣らない秘密に満ちた楽曲。まだまだ謎に満ちている。純カラを聴きたい、ドリーミーなリズム隊の秘密の源泉を知りたい。ソロ回しのイントロはどのタイミングできたのか、松たか子を介して謎をかけられたアウトロの豊潤な輝きはどうした得られたのか。知りたい。
「幸せな結末」の謎解きはまだまだ続きます。
(たかはしかつみ)