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Cy Coleman が手がけたミュージカル映画『スィート・チャリティ』

2025.11.01
Sweet Charity

Sweet Charity

Cy Coleman Part 2

(1969)

#Cinema Music Composers

Cinema Music Composers シリーズ
Cy Coleman の2回目 (最終回) です。

今回は Cy Coleman が音楽を担当したミュージカル映画『スィート・チャリティ』 (Sweet Charity、1969) に焦点を当てたいと思います。

1966年に上演となったミュージカル『Sweet Charity』の映画化ですが、原作者のニール・サイモン (Neil Simon) は1957年のフェデリコ・フェリーニ (Federico Fellini) 監督作品のイタリア映画『カビリアの夜』 (NIGHTS OF CABIRIA) を下敷きにしてこの作品を書きました。

映画化に当たってはミュージカル版を演出、振付したボブ・フォッシー (Bob Fosse) がメガホンを取りました。これが映画監督デビュー作となります。ミュージカル版の主演には、そのボブ・フォッシー (Bob Fosse) の奥様のグウェン・ヴァードン (Gwen Verdon) でしたが、映画化にあたってはシャーリー・マクレーン (Shirley MacLaine) が演じました。

ボブ・フォッシーの演出は舞台劇の制限を解放するように、ニューヨークでの屋外ロケをふんだんに使い、凝った画面作りで映画的演出も駆使し、映画監督としても才能を発揮しました。躍動感あるダンス・シーンに対して、スティール写真を使って主人公の心象風景を表してみたり、創意工夫があちこちにみることができます。

また映画の背景も1960年代末の当時のカルチャー、例えば、サイケデリック・ムーブメント、ヒッピー・カルチャー、フラワー・ムーブメント、などニューヨークの若者文化もうまく取り入れているのも、興味深いです。この映画の一番の魅力はなんといってもチャリティを演じたシャーリー・マクレーンのはちきれんばかりの元気さとダンスと思います。

この映画を初めて観たのは、中学生の頃でした。当時はズタズタにカットされていたテレビ・バージョンで無残な状態だったと思います。それでも、ワンワン泣くぐらい、胸いっぱいに感動したことを覚えています。いくつかのシーンを Cy Coleman の音楽を交えて観てみたいと思います。


Somebody Loves Me/ I'm a Brass Band (Cy Coleman-Dorothy Fields) / Shirley MacLaine (1969)

ニューヨークでの屋外ロケのパレード・シーンです。シャーリー・マクレーンの溌溂としたダンス!姿勢よく何度見ても気持ちいいです。実際に行われた撮影ロケはほんとに素晴らしかったと思います。この作品以降、1970年代に入るとミュージカル映画が激減。かつての往年のMGM等のミュージカル映画の雰囲気を受けついだ最後のミュージカル映画作品といえるかもしれません。


The Aloof, The Heavyweight, The Big Finish (Cy Coleman) (1969)

かなりアバンギャルドで当時の流行のサイケデリック・ムーブメントを反映したこのダンスシーン。全員、8頭身の美男美女!よくこれまでビシッと決めたダンスシーンが完成したと思います。センターを務めた女性ダンサーはスザンヌ・カーニー (Suzanne Charny) という女優です。衣装デザインはイーディス・ヘッド (Edith Head) 。イーディス・ヘッドは1950年代のアメリカ映画黄金時代に一番活躍したコスチューム・デザイナーですが、この『スイート・チャリティ』はかなり晩年の作品になります。


There's Gotta Be Something Better Than This (Cy Coleman-Dorothy Fields) / Shirley MacLaine、Chita Rivera and Paula Kelly (1969)

シャーリー・マクレーンが演じるチャリティの仕事仲間3人によるダンス。。半分くらいからダンスシーンが始まりますが、シャーリー・マクレーンら3人によるスピード感あふれる切れのいいダンスは圧巻!3人共身体能力が高いです。チタ・リベラ (Chita Rivera) 、ポーラ・ケリー (Paula Kelly) 、共にこれが映画初出演となります。


Sweet Charity - Ending (Cy Coleman) (1969)

映画『スイート・チャリティー』、ラスト・シーンです。チャリティが失恋した後、一夜明けてのシーン。悲しいこと、楽しいこと、いろいろな出来事が起きたとしても、誰にでも、穏やかな朝が必ず訪れるということ。この映画を初めて観たあの日からずっと、このシーンは心の芯に焼きついています。




* 上記写真 : Cy Coleman と Neil Simon


* 映画『スイート・チャリティー』 (1969)



(富田英伸)