ジャズナンバーを書いていた頃の Cy Coleman
2025.10.02

今回は Cy Coleman を取り上げたいと思います。
Cy Coleman は元々ジャズピアニスト、ジャズの楽曲の作曲家でしたが、後にミュージカルの音楽も手掛けました。2回に分け、今回はジャズ中心に初期の頃の曲について書いていきたいと思います。
Cy Coleman は1929年、ニューヨーク生まれ。東ヨーロッパ系ユダヤ人の一家で育ちました。子どもの頃からピアノが上手かったそうです。1950年代、Cy Coleman Trio を結成し活動を開始します。Cy Coleman が23才の時、 Joseph McCarthy, Jr. という作詞家と組んで、Frank Sinatra に "Why Try To Change Me Now" という曲を提供します。この曲はその後、多くのシンガーに歌い継がれていく曲となります。1955年には Coleman Trio のアルバム『Piano Patterns』をリリース。ピアノ演奏の傍ら、Nat "King" Cole、Tony Bennett、Patti Page といったジャスシンガー達に楽曲を提供していくようになります。
楽曲制作の過程で、Carolyn Leigh という女性作詞家と知り合います。彼女は主にブロードウェイ・ミュージカルで活動していた作詞家でした。Cy Coleman は Carolyn Leigh に誘われて、ミュージカルの楽曲を書くようになります。
1960年にルシル・ボール (Lucille Ball) が主演したミュージカル『Wildcat』の音楽を2人で担当します。1962年にはミュージカル『Little Me』の音楽を担当。この作品はニール・サイモン (Neil Simon) が書いたミュージカルでした。ダンス振付を行ったのはMGM映画社出身のボブ・フォッシー (Bob Fosse) でした。
1966年にこのチームでミュージカル『Sweet Charity』が上演されます。主演はボブ・フォッシーの奥様である、グウェン・ヴァードン (Gwen Verdon) 、作詞にはミュージカルの大御所、ドロシー・フィールズ (Dorothy Fields) を招きました。このミュージカルと映画化の詳細については第2回目に書きます。
第1回の今回は主に Cy Coleman が1950年代に書いた楽曲を聴いていきたいと思います。
Why Try To Change Me Now (Cy Coleman-Joseph McCarthy,Jr) / Frank Sinatra With Percy Faith & His Orch (1952)
Why Try To Change Me Now (Cy Coleman-Joseph McCarthy,Jr) / Connie Stevens (1958)
Why Try To Change Me Now (Cy Coleman-Joseph McCarthy,Jr) / Cy Coleman
1952年に Cy Coleman が23才の時に Frank Sinatra に提供した曲。演奏は Percy Faith のオーケストラです。Frank Sinatra は翌年に Columbia Records から Capitol Records に移籍しますが、よっぽど気に入った曲だったのか1959年にも再度、録音しています、その時にコンダクトは Gordon Jenkins でした。
その後、多くのシンガーが取り上げましたが、今回は Connie Stevens のバージョンでも聴いてみたいと思います。切なく心に染みるメロディーです。
テレビショーで Cy Coleman が弾き語りしているものも合わせて。とってもいい雰囲気。
I'm Gonna Laugh You Right out of My Life (Cy Coleman-Joseph McCarthy,Jr) / Nat King Cole (1955)
1955年、Nat King Cole に提供した曲です。この曲もとってもスムーズでロマンティックな曲です。演奏は Nelson Riddle のオーケストラです。この曲も Nancy Wilson を初め、多くのシンガーに愛されたナンバーです。
The Autumn Waltz (Cy Coleman-Bob Hilliard) / Tony Bennett (1956)
1959年に Tony Bennett に提供したワルツ曲。これも美しい曲です。詩は "Our Day Will Come" などを書いたことで知られる Bob Hilliard が書いています。演奏は Percy Faith のオーケストラです。
Witchcraft (Carolyn Leigh-Cy Coleman) / Frank Sinatra (1957)
Witchcraft (Carolyn Leigh-Cy Coleman) / Cy Coleman
ここからは女性作詞家、Carolyn Leigh と組んだ作品を。1957年に Frank Sinatra が歌いヒットしました。演奏は Nelson Riddle のオーケストラです。思わずフィンガースナップをしたくなる曲です。Frank Sinatra は1993年の晩年、この曲を Anita Baker とデュエットしました。この曲も Cy Coleman 自身がテレビショーでピアノの弾き語りにしているものも合わせて。
Doop-Dee-De-Doop (A Doodlin' Song) (Carolyn Leigh-Cy Coleman) / Blossom Dearie (1958)
とっても可愛らしい曲を。元々はショート・ミュージカルのために書かれた曲だと思います。Blossom Dearie のアルバム『Once Upon A Summertime 』から。Blossom Dearie も楽しく歌っています。余興として多くのショーでもよく使われたナンバーです。
I Walk A Little Faster (Carolyn Leigh-Cy Coleman) / Rod McKuen (1960)
この曲も Blossom Dearie を初め多くのシンガーが歌いましたが、今回は Rod McKuen のバージョンで。Rod McKuen が1960年にリリースしたアルバム『Alone After Dark』から。これも雰囲気のあるいい曲です。
Where Am I Going (Cy Coleman-Dorothy Fields) / Barbra Streisand (1966)
Where Am I Going (Cy Coleman-Dorothy Fields) / Dusty Springfield (1967)
次回の第2回目に先立って、ミュージカル『Sweet Charity』』から1曲、聴いてみたいと思います。"Where Am I Going"の聴き比べです。ミュージカルが上演になった1966年に Barbra Streisand が取り上げました。アレンジとコンダクトは Peter Matz です。
イギリスでは翌年、Dusty Springfield がアルバム『Where Am I Going』で取り上げました。こちらのアレンジは Wally Stott 。この人は1972年に性転換により"女性"となり、Angela Morley として、優秀な女性アレンジャー、コンダクターとなった人です。それぞれアメリカ、イギリスの歌姫、いずれも素晴らしい歌唱力です。
* Cy Coleman と Carolyn Leigh

次回に続く。
(富田英伸)