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娘、Margaret Whiting が歌う Richard Whiting の素敵なメロディ

2025.08.12
Guilty

Guilty

Richard Whiting

(1931)

#Cinema Music Composers

(2025年8月10日SSB『納涼リクエスト大会』で "Guilty" / The Four Freshmen がかかったので、作った Richard Whiting を取り上げます。)


Cinema Music Composers シリーズ
今回は Richard Whitingを取り上げたいと思います。

Richard Whiting は1891年生まれで、これまでこのシリーズで取り上げたコンポーザーの中でもかなり古い時代に活躍した人です。ジャズシンガーの Margaret Whiting、女優の Barbara Whiting の父親でもあります。簡単な経歴から。

Richard Whiting は1891年、イリノイ州ピオリアの音楽一家の家庭に生まれています。母親がピアノ教師だったため、Richard もピアノを習得、大学卒業後は友人とピアノ中心のヴォードヴィルを始めたそうです。しかしパフォーマーとしてはなかなか芽が出ず、1913年にデトロイトでレミック出版社で新譜を宣伝するために楽譜店で演奏するピアニスト=ソングプラガーの職に就きます。

ソングプラガーしていた時に出会ったのが、無名の音楽家、George Gershwin で、Richard Whiting は彼の才能を見抜き、レミック出版社のニューヨーク支社でのソングプラガーの職に推薦、George Gershwin の音楽キャリアがスタートします。彼らは生前、とても仲が良かったそうです。

1929年、大恐慌の頃、トーキー映画大時代が来ると見越して、ハリウッドへ移り住みます。そこで多くの映画の劇伴音楽を手がけるようになり、そこからいくつかヒット曲が生まれてきます。しかし残念なことに Richard Whiting は1938年、キャリア絶頂期に心臓発作により46歳の若さで亡くなりました。

Richard Whiting の死後、長女の Margaret Whiting は1942年にシンガーとしてデビュー、アメリカを代表する女性ジャズシンガーとなります。次女の Barbara Whiting も女優となり、ハリウッドで亡き父の意思を継ぎました。

Richard Whiting が書いた楽曲の多くは、本人亡きあとスタンダードナンバーとして認知されたもので、それに一番貢献したのが、娘の Margaret Whiting でした。Margaret Whiting も2011年に他界しています。

今回は、Richard Whiting のメロディを娘の Margaret Whiting が歌ったバージョンをメインに聴いていきたいと思います。


Guilty (Richard A. Whiting-Harry Akst-Gus Kahn) / Margaret Whiting (1946)

Guilty (Richard A. Whiting-Harry Akst-Gus Kahn) / The Four Freshmen (1955)

1931年に発表された楽曲で当時は、Ruth Etting、Wayne King、 Russ Columbo がレコーディングしました。1946年に Richard Whiting の娘、Margaret Whiting が Capitol Records からリリースし、Billboard chart の4位となり、父親のこの曲を有名にします。
1955年の The Four Freshmen のアルバム『Four Freshmen And 5 Trombones』のバージョンも合わせて。タメイキが出るほど素晴らしいハーモニー。演奏アレンジは Pete Rugolo です。


My Ideal (Newell Chase-Richard Whiting) / Margaret Whiting With Billy Butterfield And His Orchestra (1948)

My Ideal (Newell Chase-Richard Whiting) / Chet Baker (1957)

1930年、映画『巴里選手』 (PLAYBOY OF PARIS) から生まれた曲で、主演したモーリス・シュヴァリエ (Maurice Chevalier) が歌い、当時レコードもリリースしました。
この曲も娘、Margaret Whiting の声で聴いてみましょう。大ヒットとなった "Moonlight In Vermont" のB面に収録されました。
1957年の Chet Baker のアルバム『Chet Baker Sings』のバージョンも合わせて。素敵なチェレスタの響き、Chet Baker の甘い声にノックダウンです。


He's Funny That Way (Neil Moret-Richard Whiting) / Margaret Whiting (1954)

He's Funny That Way (Neil Moret-Richard Whiting) / Nat King Cole (1959)

1929年、短編映画『Gems of MGM』で生まれた楽曲。これは Richard Whiting が詩を書き、Neil Moret が曲をつけたものとされています。娘の Margaret Whiting によると、父は母に対して "She's Funny That Way" 「君はおかしな人だ。でも僕はそんな君に夢中なんだ。」とよく言っていたとのこと。1954年にリリースした Margaret Whiting のバージョンは "She" を "He" に変えて歌いました。Frank DeVol And His Orchestra の演奏です。
1959年リリースの Nat King Cole のバージョンも合わせて。Dave Cavanaugh のコンダクトです。


Ain't We Got Fun (Richard Whiting-Ray Egan-Gus Kahn) / Margaret Whiting & Bob Hope (1949)

Ain't We Got Fun (Richard Whiting-Ray Egan-Gus Kahn) From "BY THE LIGHT OF THE SILVERY MOON" / Doris Day & Gordon MacRae (1953)

デュエット曲を1曲。この曲は Richard Whiting が遺した曲の中でも最も古い作品です。発表は1920年で当時ヴォードヴィルショー等で歌われた曲とのこと。1949年、Margaret Whiting が Bob Hope とデュエットでレコーディングしました。Billy May And His Orchestra の演奏です。
1953年の映画『銀色の月明かりの下で』 (BY THE LIGHT OF THE SILVERY MOON) で、 ドリス・デイ (Doris Day) とゴードン・マクレー (Gordon MacRae) がデュエットしました。朗らかな楽しいシーン。




ここからは2曲程、変わり種を。

On The Goodship Lollipop (Richard Whiting-Sidney Clare) From "BRIGHT EYES" / Shirley Temple (1934)

On The Goodship Lollipop (Richard Whiting-Sidney Clare) / Wonder Who (The Four Seasons) (1966)

1934年、『輝く瞳 』 (BRIGHT EYES) のために書かれた曲で、当時の人気子役、シャーリー・テンプル (Shirley Temple) がこましゃくて歌っています。Margaret Whiting の回想によると、この曲は幼い Margaret がロリポップでベタベタな唇で父親にキッス、ピアノの鍵盤もロリポップでベタベタにしたことがヒントになったとのこと。可愛らしい想い出となっていたようです。
The Wonder Who は The Four Seasons の覆面グループ。Frankie Valli が赤ちゃん声で歌っています。1966年にリリース作品でアレンジは Herb Bernstein。


Rock And Roll (Richard Whiting-Sidney Clare) / Boswell Sisters (1934)

一般的に "ロックンロール=Rock and Roll" という音楽形態は1950年半ば辺りから登場したと言われていますが、「揺れて転がる」という"Rock and Roll"言葉 (スラング) 自体はそれ以前に存在していたようです。Richard Whiting は1934年に "Rock And Roll" という曲を書いています。今聴くと全然、"ロックンロール"していませんが (笑)



* Richard Whiting の娘、姉の Margaret Whiting (上) 、妹の Barbara Whiting (下)


(富田英伸)