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Roger Nichols & The Small Circle Of Friends

2025.05.29
Don't Take Your Time

Don't Take Your Time

Roger Nichols Part 2

(1968)

#Songwriter

Songwriterシリーズ
Roger Nichols の2回目です。


第2回 : The Small Circle Of Friends と Paul Williams


Roger Nichols が結成したグループ Roger Nichols & The Small Circle Of Friends は1968年にこれまで作っていた楽曲等を含め、アルバム『Roger Nichols & The Small Circle Of Friends』が AM Records からリリースされました。

メンバーは Roger Nichols と Murray MacLeod、Melinda MacLeod の兄妹。Murray MacLeod は同時期、Jerry Riopelle らと The Parade というグループにも所属していました。本職は子役の頃から活躍している俳優です。
このアルバムの主要制作スタッフは以下の通り。

Producer – Tommy LiPuma
Engineer – Henry Lewy, Larry Levine
Engineer [Stereo Compositions] – Bruce Botnick
Arranger - Bob Thompson, Nick DeCaro, Mort Garson, Marty Paich
Morale Booster – Dezz Buetal, Lenny Waronker, Randy Newman, Van Dyke Parks
* Morale Booster:士気向上、応援の意


アルバム『Roger Nichols & The Small Circle Of Friends』が A&M Records されたことにより、Chuck Kaye を介し、A&M Records のオーナーの Herb Alpert から A&M のスタッフライターとして薦められ、シンガーソングライターの Paul Williams を紹介されます。

2人は販促のために1970年に Almo / Irving Music Records から非売品デモアルバム『‎We've Only Just Begun』を制作。そして同年、Paul Williams のソロデビューアルバム『Someday Man』をリリース。この2枚のアルバムがきっかけとなり、Roger Nichols のメロディに魅せられた歌手、ミュージシャン、音楽関係者達が2人の作った楽曲を取り上げるようになっていきます。


Don't Take Your Time (Roger Nichols-Tony Asher) / Roger Nichols & The Small Circle Of Friends (1968)

アルバム『Roger Nichols & The Small Circle Of Friends』の1曲目。この曲を初めて聴いた時の気持ちの高揚感は今でも忘れることができません。ストリングスのピチカートで始まるポップスなんて他に知りません。スリリングなストリングスに乗りその後3人による素晴らしいコーラスが花開いていきます。冒頭のストリングスのピチカートが誰の発案、閃きが誰かわかりませんが、この楽曲のアレンジを担当した Bob Thompson について簡単に触れておきたいと思います。

Bob Thompson は1924年生まれで、Nick DeCaro 辺りと比べると一世代前のアレンジャーで、 Rosemary Clooney や Andrews Sisters などを手がけていた人です。1950年代後期には3枚のリーダーアルバムをリリースしています。ジャズオーケストラ指向のサウンドでいずれもコーラスを上手く使った楽曲に仕上がっており、そのコーラスには Marni Nixon も参加していたようです。このようにクラシックなコーラスワークに長けたアレンジャーを起用したことにより、The Small Circle Of Friends の澄みきった3人の声がサウンドに上手くフィットしたんだと思います。


I Can See Only You (Roger Nichols-Smokey Roberds-Stuart Margolin) / Roger Nichols &The Small Circle Of Friends (1968)

この楽曲はメンバーの Murray MacLeod が同時期所属していたグループ The Parade の Smokey Roberds と Stuart Margolin との共作曲になります。とても繊細で流麗な1曲。途中のストリングスも美しいです。このアレンジも Bob Thompson が担当しました。


Someday Man (Roger Nichols-Paul Williams) / Paul Williams (1970)

1969年、グループ The Holy Mackerel 解散後の Paul Williams の実質的デビューとなった1970年のアルバム『Someday Man』から。前年の The Monkees に提供した楽曲のセルフカバーになります。アルバム『Someday Man』は Roger Nichols がプロデューサーを務め、全曲、Roger Nichols-Paul Williams の作品になります。途中からリズムパターンを変えてくるアレンジを担当したのは Artie Butler 。


Mornin' I'll Be Movin' On (Roger Nichols-Paul Williams) / Paul Williams (1970)

アルバム『Someday Man』からもう1曲。これも快活でスピード感が心地よい曲。オリジナルは1年前リリースされた The Match もしくは Karen Brian 。アレンジを担当したのは Perry Botkin Jr.。そのストリングス、ホーンに呼応する素晴らしいピアノは Lincoln Mayorga だと思われます。


It's Hard To Say Goodbye (Roger Nichols-Paul Williams) / Claudine Longet (1968)

1968年、A&M Records からリリースされた Claudine Longet のアルバム『Love Is Blue』から。同年シングルもリリースされました。この曲は Roger Nichols-Paul Williams がソングライターチームとなって初めて書かれた楽曲とのことです。プロデュース=Tommy LiPuma、アレンジ= Nick DeCaro で制作されました。タイトル通り、とても切ない曲。

(富田英伸)