ジェローム・カーン特集 その5 (最終回)

2024.05.19
Ol’ Man River

Ol’ Man River

Jerome Kern Part 5

(1927)

#Cinema Music Composers

Cinema Music Composers シリーズ
Jerome Kern の第5回、最終回です。

Jerome Kern は1945年、60才で脳出血で亡くなりました。その翌年の1946年に、Jerome Kern の伝記映画『雲流るるはてに』(TILL THE CLOUDS ROLL BY)が公開。Jerome Kern 自身、この映画の製作に関わっており、完成を観ることなく亡くなってしまいました。

伝記映画『雲流るるはてに』では Jerome Kern が『Show Boat』を手掛けた辺り(1927年頃)でラストシーンとなっています。ロバート・ウォーカー(Robert Walker)が Jerome Kern を演じ、ジュディ・ガーランド(Judy Garland)がマリリン・ミラー(Marilyn Miller)を演じています。

その他、フランク・シナトラ(Frank Sinatra)ジューン・アリソン(June Allyson)、キャスリン・グレイソン(Kathryn Grayson)、トニー・マーティン(Tony Martin)、ダイナ・ショア(Dinah Shore)、シド・チャリシー(Cyd Charisse)、ガワー・チャンピオン(Gower Champion)、レナ・ホーン(Lena Horne)、アンジェラ・ランズベリー(Angela Lansbury) といった多彩なゲストが Jerome Kern が作ったナンバーで歌、ダンスを披露しています。

これまで多くの Jerome Kern の楽曲を聴いていましたが、取りこぼした良作をいくつか。


You Couldn't be Cuter(Jerome Kern-Dorothy Fields) / Irene Dunne(1938)

You Couldn't be Cuter(Jerome Kern-Dorothy Fields) / Margaret Whiting(1960)

1938年の映画『生活の悦び』(JOY OF LIVING)のために書かれた楽曲。主演のアイリーン・ダン(Irene Dunne)によって歌われました。おやすみの双子ちゃんに向かっておもちゃのピアノで歌う可愛いシーン。
1960年の Margaret Whiting のアルバム『Sings The Jerome Kern SongBook』のバージョンも合わせて。


Lovely To Look At(Jerome Kern-Otto Harbach) From "ROBERTA" / Irene Dunne(1935)

Lovely To Look At(Jerome Kern-Otto Harbach) From "ROBERTA" / Fred Astaire(1935)

Lovely To Look At(Jerome Kern) Title Sequence(1952)

1933年のミュージカル『Roberta』から生まれた楽曲。1935年に映画化され、アイリーン・ダン(Irene Dunne)、そしてフレッド・アステア(Fred Astaire)が歌いました。そのフレッド・アステア歌唱に続く、"Smoke Gets in Your Eyes" をバックで踊る、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャース(Ginger Rogers)の素晴らしいダンスももう一度。
1952年にこの曲を表題した映画『Lovely to Look At』が制作されました。その映画ではハワード・キール(Howard Keel)によって歌われました。今回はこの映画のタイトルシーケンスを。


A Fine Romance(Jerome Kern-Dorothy Fields) From "SWING TIME" / Fred Astaire and Ginger Rogers(1936)

A Fine Romance(Jerome Kern-Dorothy Fields) / Louis Armstrong And Ella Fitzgerald(1957)

1936年の映画『有頂天時代』(SWING TIME)のために書かれた楽曲。同年、フレッド・アステア(Fred Astaire)がシングルリリースし、フレッド・アステアの持ち歌としても有名になりました。映画では冬の雪道でジンジャー・ロジャース(Ginger Rogers)とのデュエットでした。デュエット・ナンバーとしても有名で Louis Armstrong と Ella Fitzgeraldもデュエットでレコーディングしました。


She Didn't Say Yes(Jerome Kern-Otto A. Harbach) From "THE CAT AND THE FIDDLE" / Jeanette MacDonald(1934)

She Didn't Say Yes(Jerome Kern-Otto A. Harbach) / Steve Lawrence & Eydie Gormé(1961)

これもデュエット曲として有名なナンバー。1931年のブロードウェイミュージカル『The Cat and the Fiddle』のために書かれた曲。同年に Leo Reisman も楽団などがレコーディングしました。1934年、トーキー初期期に映画『猫と提琴』(THE CAT AND THE FIDDLE)として映画化されます。当時人気だったジャネット・マクドナルド(Jeanette MacDonald)が歌いました。ユーモアある曲です。
1961年の Steve Lawrence & Eydie Gormé のアルバム『Cozy』に収録されたバージョンも合わせて。


Ol’ Man River(Jerome Kern-Oscar Hammerstein II) / Kenn Sisson And His Orchestra. Vocal by Irving Kaufman(1927)

Ol’ Man River(Jerome Kern-Oscar Hammerstein II) From "SHOW BOAT(1936)" / Paul Robeson(1936)

Ol’ Man River(Jerome Kern-Oscar Hammerstein II) From ""SHOW BOAT(1951)" / William Warfield(1951)

Ol’ Man River(Jerome Kern-Oscar Hammerstein II) From "TILL THE CLOUDS ROLL BY" / Frank Sinatra(1946)

最後に Jerome Kern の代表曲を。
1927年、Jerome Kern は女流作家エドナ・ファーバー(Edna Ferber)が出版した『Show Boat』を読んで感銘を受けます。人種差別、夫婦の争い、アルコール依存症など様々な社会問題を孕んだこの物語をミュージカル化できないかと演劇プロデューサー P. G. Wodehouse と 劇作家 Oscar Hammerstein II に相談、エドナ・ファーバーから許可が出てミュージカル化の権利を得ます。Jerome Kern は『Show Boat』のミュージカル化にあたって、18世紀後半辺りに奴隷状態だった黒人の共同体から派生した黒人霊歌を研究、理解を深め、楽曲制作に挑みました。

その後、ミュージカル『Show Boat』は1929年、1936年、1951年と3回、映画化されます。1927年初演の際にレコーディングしたオリジナル、そして、1936年、1951年に映画化された時のバージョンを。1927年初演時は軽快なリズムで歌われていたようです。
Jerome Kern の伝記映画『雲流るるはてに』(TILL THE CLOUDS ROLL BY)では、ゲスト出演したフランク・シナトラ(Frank Sinatra)が歌いました。眼を見張るばかりの舞台装置で歌唱しました。

* 『Show Boat』(1951)より



(富田英伸)