映画作曲家 Jimmy McHugh その1: 朝ドラ『カムカム』の On the Sunny Side of the Street
2022.03.09
Cinema Music Composers シリーズ、
今回は Jimmy McHugh を取り上げたいと思います。
Jimmy McHugh は師匠筋にあたる Irving Berlin よりも5、6才年下で、Irving Berlin や Cole Porter 辺りに比べて若干知名度が劣るもののミュージカル中心に優れた楽曲を世に残しました。2回に分けて取り上げていきたいと思います。
まずは"On the Sunny Side of the Street" の聴き比べから始めてみましょう。
"On the Sunny Side of the Street" はイギリス出身のミュージカルスター Gertrude Lawrence が出演したブロードウェイレビュー『The International Revue』のために作られた楽曲。女流作詞家、Dorothy Fields と組んで3年程経った頃の作品となります。初レコーディングは、Ted Lewis and His Band のバージョンとされています。
On The Sunny Side Of The Street (Jimmy McHugh-Dorothy Fields) / Ted Lewis and His Band (1930)
"On the Sunny Side of the Street" で有名なのはやはり Louis Armstrong で数回レコーディングしているようです。初回は 1937年に Decca Records からリリースしました。私たちが日頃、耳にするバージョンは1956年に録音されたものだと思います。
On The Sunny Side Of The Street (Jimmy McHugh-Dorothy Fields) / Louis Armstrong (1937)
On The Sunny Side Of The Street (Jimmy McHugh-Dorothy Fields) / Louis Armstrong (1956)
Louis Armstrong の1937年バージョンでピアノを弾いていたのは Fats Waller で、"On the Sunny Side of the Street" は Fats Waller が作った楽曲と言われていた時期があります。真意は不明ですが、Louis Armstrong ととても近い人物だったので、そういう説が流れたのではないかと思います。その Fats Waller もこの曲を取り上げています。最近のリイシューされたCDのクレジットも Jimmy McHugh-Dorothy Fields となっています。
On The Sunny Side Of The Street (Jimmy McHugh-Dorothy Fields) / Thomas Fats Waller
最後に僕の好きな最近のバージョンを。映画『花嫁のパパ2』 (FATHER OF THE BRIDE PART II) で流れた Steve Tyrell の歌声を。
On The Sunny Side Of The Street (Jimmy McHugh-Dorothy Fields) / Steve Tyrell (1999)
今まで暗い道ばかり歩いてきたんだ
でも今は恐くない
たとえ1セントも持っていなくとも
気分はロックフェラーみたいな金持ちさ
明るい表通りをあるけば
足元の塵もいつか金に変わるんだ
明るい表通りをあるけば
Jimmy McHugh が書いた映画音楽は第2回に見送って、もう1曲、Jimmy McHugh-Dorothy Fields チームの曲で僕の好きな曲を。
Dorothy Fields とのゴールデンコンビによるもの楽曲で、1928年の Leslie's Blackbird Revue というレビューから生まれました。ある日、Dorothy Fields 女史が街を歩いていたところ、ウィンドウショッピングをしているカップルを見つけました。女性は窓越しのジュエリーを見つめているんですが、男性が「僕の給料では君にそれを買ってあげることはできないんだ..。ごめんね、ハニー〜」と言うのを聴いて、この詩、タイトルを思いついたそうです。
最初期にレコーディングされた The Knickerbockers のバージョンを。
Can’t Give You Anything But Love (Jimmy McHugh-Dorothy Fields) / The Knickerbockers (1928)
1938年の映画『赤ちゃん教育』 (BRINGING UP BABY) では、主演のケイリー・グラント (Cary Grant) とキャサリン・ヘプバーン (Katharine Hepburn) が真夜中に動物たち?と一緒に歌っています (笑顔) 。
Can’t Give You Anything But Love (Jimmy McHugh-Dorothy Fields) From "BRINGING UP BABY" / Cary Grant and Katharine Hepburn (1938)
2014年の映画『ジャージー・ボーイズ』 (JERSEY BOYS) では、デビュー前にライブでフランキーが歌った曲として登場。Fankie Valli 役の John Lloyd Young が歌いました。
Can’t Give You Anything But Love (Jimmy McHugh-Dorothy Fields) From "JERSEY BOYS" / John Lloyd Young (2014)
(富田英伸)