第回 : 森 勉さん



『卒業』〜『明日に向かって撃て』
レコード屋さん
−PET SOUNDS開店まで−

-大学を卒業して就職はそのままされたのですか?
 時代が時代だったんで、就職するのがかっこよくなかった、って思えちゃったんですね。大学時代に髪の毛伸ばしたり汚い格好していたのが、4年生になると急にきれいになっちゃうんですよね。僕はそんなにはロングヘアにしていたわけではなかったんですけど。なんかそれは許せないんじゃないかなと。そういうのが自分の中ではあって、ぶらぶらすることになっちゃって。それで自分では何が出来るのかなと思った時、何か当然の事ながら、好きなことを職業にしたいという希望が出てきて、その時に音楽が好きだから漠然と音楽に携わる仕事がしたいなあと。で選んだのがレコード屋さんだったんですよね。

 はじめ何軒かでアルバイトみたいな形で仕事をしまして、一番最初に働いたのがデパートの中のレコード屋さんだったんです。初めての接客業。デパートだったんで、お客様に対するいらっしゃいませから始まって挨拶から何から教わって、そういうのは大変勉強になりましたね。ただ売れるものって言えば、ごくごく普通の歌謡曲でした。1973年とか74年なので、百恵ちゃんとか、井上陽水の『氷の世界』とか、『2色の独楽』とかよく売れてましたね。クラッシック、ジャズまであって、ごくごく普通のレコード屋さんでした。デパートなので隣の楽器売場では三味線なんかも売っていたりして…。その時は自分でお店をやろういう意識はそんなに強くなかったんですけど、理想っていうのが自分の中に出てくるわけで、それが段々と強くなってきて自分で始めようかなってことになったんですね。

-勤めていた期間というのは何年くらいだったんですか?
 全部入れると7年くらいありました。そのころ仕入れたレコード業界の知識は勉強になりましたね。一つの店だとそこのやり方、客層しか分からないんですけれど、商店街の中の店であるとか、デパートの中であるとか、輸入盤も扱っているお店だとかっていうのを回ることによって、それぞれの特徴とそこの客層っていうのがあるんですよ。クラシックを買う方は盤質にめちゃくちゃうるさいとかね、ジャズの中古盤オリジナル2万5千円とかがぽこっと売れちゃったりするとかね。これは日本盤は2千円で買えるのに、同じ物が2万5千円もするのかという世界も知りました。オリジナル盤の魅力というものですね。

-お店を開いた武蔵小山は地元でいらっしゃいますよね。
 客層というか土地の様子というのが分からないとなかなか難しいなというのがありましたね。しかし始めた頃は割と、あまりいろんなことを考えずにできたのがよかったなと思います。とにかくやろう、ということから始まりました。

-お店のコンセプトはあったのですか?
 自分でもレコードを買う身としては、疑問を解決してくれる店が欲しかったですね。そんなこともあり、お客さんから聞かれたことには誠実に答えてあげたかったし、自分達で分からなかったら人に聞いてもお客さんに伝えたいというのが一番のポリシーでやりましたね。それからおすすめのレコードを明確にするために、当時としては、まだあまり見かけなかったコメント・カードをつけたりしてました。
-PET SOUNDSは街のレコード屋さんという感じで、流行ものも聴けるし、オールディーズも聴けるし。
 むかしはこういう店もあったと思うんですよね。店主の方が音楽が好きで。その方が一所懸命お客さんと勉強しながら売っていくという店が多かったと思うんですよ。やはり大型店の進出で小さな店の存続がなかなか難しい状態になりましたね。ほとんどの店がPOSシステムを導入して、どういうものが売れ筋か調べて、ランクの上のモノを入れておけば売れますよということになっちゃってるんですよ。特に在庫が限られているような店だと、ある物がみんな同じだと。ランクが上だからこの商品は入っていると。お店のポリシーで入れているものもあると思うんですけど、経営的な面でお店に置いておかなくちゃいけない。しかしPOSシステムみたいなのを、ある程度無視しないと面白い商品構成はできないですよね。少数派を尊重しないと。

 あと自分の趣味のものを多く打ち出すこと。あとは関連のもの、例えば大滝詠一の名義のものだけでなく、小林旭、小泉今日子など大滝関連のものも一緒に提示することによって、広がりが出てくるじゃないですか。僕自身が好きだし、お客さんもそういうのが好きな人がいらっしゃるんですよ。別のコーナーに入っているんじゃなくてその人の関連するコーナーで見られるっていう。トニー谷もあるし、東京ビートルズもあるし Astronouts もある。自分自身が好きだから出来るって言う部分もあるんでしょうけど、まずは分かる範囲内からやりたいですね。
(註、山下達郎のコーナーには柳家三亀松の都々逸のCDがある)



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