綺羅

悠久の翼

2005 " 悠久の翼 " Whisper Notes Music WHSP-0112/CD





 木戸やすひろさん、広谷順子さん御夫妻のユニット、綺羅のセカンドアルバム『悠久の翼』。前回のファーストアルバム『夏恋花』で表現したポップスと和の融合を推し進めた作品となっています。

 表題曲「悠久の翼」は現在(2005年2月)日曜朝に放送しているテレビ朝日系のテレビ番組『食彩の王国』の主題歌としてオンエアされている曲。音と声は"翼"となって大和の広大な台地を俯瞰していく様。これまでにないスケール感溢れる作品となっています。和のティストの効いたパーカッションをフィーチャーして躍動感あるサウンドに仕がっています。


 前作のファーストアルバム『夏恋花』は"花"をモチーフに源氏の世、平安の時代を詠ったとするならば、今回の作品はそれよりも前の時代、奈良、飛鳥の匂いを感じ取ることができます。霧深い山々、日本古来から生息する原生林、発ち上がる火柱、朝霧の台地、そういった"大和"の原風景、そしてその遠い彼方には広大な中国の大陸まで見えてきそうです。
 一曲目「悠久の翼」に続き、「月祭り」、十五夜の秋祭り。川面に月が浮かんでいます。広谷さんの名曲「「恋歌」通ずる女性の繊細な心を詠んだ情緒溢れた一曲。
「百人想歌」、百人一首の美しい言葉が艶やか。広谷さんのずっと変らぬ透き通った美声に身震いする思い。中国古箏の音色も美しく印象的。
「送り火」、夏、夕暮れ、お盆の風景。透き通った広谷さんの声がこれまた神秘的。
短いアカペラ「朝露」に続いて「沙羅」。この曲もテレビ番組『食彩の王国』で流れている曲。木戸さんの優しい歌唱で心が落ち着きます。
「火の穂」、力強いナンバーでこのアルバムのハイライトとなっています。最後に短いインスト「そして...」。

 このアルバムのなんといっても素晴らしいのは、楽曲の美しさと声と声、音と声とのハーモニー。これは長年スタジオで培われたコーラスワークと丁寧な音創りが実を結び、綺羅のお二人でないと表現できない、繊細でそれは美しいサウンドを創り出しています。
 今ではお2人はスタジオコーラスワークの第一人者として認知されていますが、もともとお2人ともシンガーソングライターとして個々に音楽活動を始められ、コンポーザーとしても素晴らしい数々の楽曲を残してきました。
お二人のリーダアルバムが出なかった期間が長かったため、多少の欲求不満の時期もありましたが、現在、こうやって2人が精力的にアルバムを作成されることに感無量の思いで聴きました。

 何千何万の音楽制作に関してバックミュージシャンして長年多くのミュージシャン達を支えてきた木戸さん、広谷さんですが、一般のファン僕らのみならず、お二人のリーダアルバムのリリースを心待ちにして待っていたのは、そういったこれまで関わってきたミュージシャン達ではなかったかと思います。

(富田英伸)





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