Mary Chapin Carpenter

Goodnight America

2004 " Between Here And Gone " Columbia/CK86619/CD





  メアリー・チェイピン・カーペンター様

 ご無沙汰しています。もう10年前になりますか、1994年、あなたの4枚目のアルバム「Stones In The Roads」であなたの歌との出会いでした。シンプルなメロディと抑揚のあるあなたの歌声に魅力を感じました。その後、邦盤の発売もなく、名前もあまり耳にしなくなりました。こちらの怠慢で、2年くらいの間隔でコンスタントにアルバムをリリースされていらしゃっていたんですね。


 1987年にデビューしてから、ポップ・カントリー、C&Wのフィールドでの女性シンガー・ソングライターとして、そう、今では「中堅」といっていいかもしれません。2004年、最新作「Between Here And Gone」であなたの歌と久しぶりで再会できました。前年、ベスト盤の「Essential」をリリースされていて、この新作があなたの新しい出発点のはじまりを予感させもします。
 アルバムの中で「Goodnight America」が好きですね。ギターのイントロから、詞の中に歌われるアメリカの街まち、LAからはじまり、Houston,Texas,San Jacinto,Atlanta,Charleston Town、そしてBronxへ。ロード・ムービィの中のような風景(最近、読んだ長田弘氏の『アメリカの61の風景』を思い起こすような)が見えてきます。歌詞の中の「I'm A Stranger Here/NoOne You Would Know」のフレーズが心に印象的に響きます。あなたの歌を包むかすかなドラムのシンバルの音とギターの爪弾きがハイウェイの灯りのようにほのかな色をあなたの歌に添えている感じを与えています。孤独感や寂寥感の歌なのに、あなたの歌からはそれらを包み込むビロードような温かみさえも感じさせます。
 
このアルバムでは、他にアップテンポのロックンロール調の「Beautiful Racket」(Dan Dugmoreのスティールギターがいい味を出していますね)やしっとり歌われる「Elysium」などもあなたの歌の魅力を十分に感じられます。久しぶりの再会で多弁を労してしまいました。日本ではこのアルバムのリリースが見送られましたが、もっと聴かれてよい女性シンガーだと思います(ポップ・カントリーとかカントリーミュージックとかジャンルにしばられずに)。いつかあなたの生の歌声を聴く日が来ることを楽しみに。

(伊東潔)




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