村松邦男

SUNRISE TWIST

1984 " TOURIST " JAPAN RECORD 18JAL-3/ mini LP





 『ロンバケ』と『FOR YOU』が印象付けた"シティ・ポップス=夏"というイメージの影響は、その後のポップス・シーンに猛スピードで浸透していって(今振り返れば)バブルに向けて疾走を始めた日本を後押しするような、前向きな時代の眩しい空気感を如実に表していたように思います。「夏の音楽が好きだから夏が好きになった」という本末転倒な言い分も、そんなアーリー80'sに青春を過ごした僕のような人間にとっては十分有りなのではないでしょうか。


 今からちょうど20年前の1984年6月、このミニ・アルバム『TOURIST』がリリースされました。本作を聴いたのはそれよりちょい後の予備校時代、友達からテープに録ってもらったのが最初でした。そのあまりにも「夏な」ポップスに目眩がしたのを覚えています。村松さんのソロ作品群で1枚と言えば『GREEN WATER』か『ROMAN』あたりになるのかも知れませんが、最初に出会ったインパクトから今回はこの『TOURIST』を紹介させて頂きます。80年代に入ってソロ・ワークスを始めた村松さんの『GREEN WATER』に続く2作目。当初は春夏秋冬の4枚のミニ・アルバムを出して、最後に『フォー・シーズンズ』という1枚のフル・アルバムにまとめるコンセプトだったそうです(残念ながら実現はしませんでしたが)。その第1弾「夏」として企画されたのが本作で、サマー・ポップス集になったのはそのせいです。1曲目「SUNRISE TWIST」から疾走するビートと目眩くコーラスが夏全開。他のアルバムよりもビートが強調されエコーも深め、そしてなによりもアレンジがカラフル!4曲しかないのを悔しがりながら何回針を落としたことでしょう。
 先日(2004.04.03)のPied Piper Daysのイヴェントで「音楽の原体験は?」との質問に「やっぱりビートルズかなあ」と答えていた村松氏。「分かりやすいが奥が深い」「シンプルなメロディに巧妙なアレンジ」といった印象が強いのは、やはりビートルズの遺伝子の成せる技でしょうか。4月1日に発売された氏の初のオール・タイム・ベスト『Do You Believe In Magic? :Anthology 1975-1986』には、Todd Rundgren、Billy Joel、Jeff Lynne、Captain & Tenille、10cc、Nick Lowe…といったキーワードが思い浮かんでくるような「これぞポップス!」というような楽曲が満載で、その(同時代の洋楽の良質な部分をすぐに取り入れていく無邪気さも含めて)好曲製造家ぶりにはホント驚かされます。昨今のJ-POPSシーンでは失われつつある瑞々しい音楽の輝きに満ち溢れていて、過ぎ去った眩しい夏を想い起こすようなノスタルジックな気分になってしまいます。

(高瀬康一)




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