Smokey Robinson and The Miracles

Ooo Baby Baby

1965 " Going to a Go-Go " Tamla Motown 11024/LP





 先日、『永遠のモータウン』という映画を試写会で観てきました。モータウンの最盛期を支えたミュージシャン達、The Funk Brothers の功績を讃えたドキュメンタリー映画です。現在の彼らが、デトロイトにある伝説の「ヒッツヴィルU.S.A」のAスタジオを訪れるシーンから始まり、60〜70年代のモータウンのヒット曲がどのように生まれていったかを膨大なインタヴューと貴重な映像を交えて綴っていきます。クライマックスは、今は亡きメンバーの遺影を掲げながら、Chaka Khan やBootsy Collins などのゲスト・ヴォーカリストを迎えて往年のモータウン・クラシックスを再現させる再結成ライヴ。それは誰もが親しんだ紛れもないあのモータウン・サウンドであり、今まであまり語られてこなかった影武者たちの実像が30年の時を超えて浮かび上がった感動の瞬間でした。


 面白かったのは当時のレコーディング秘話。故James Jamerson が立てなくなるほど泥酔して寝ながらレコーディング(で、あのグルーヴ!)した話や、「What's Going On」で印象的なコンガを叩いているEddie "Bongo" Brown が楽譜台にいつもグラビアを置いていた話、遅刻癖のあるドラムのBenny "Papa Zita" Benjamin が遅刻した時の荒唐無稽な言い訳の話、昼間のスタジオ仕事の後に夜な夜なナイト・クラブで繰り広げられたジャム・セッションの話など(そこで生まれたアイデアはすぐに翌日のスタジオ仕事に活かされた)、ヒット生産工場と言われた彼らにしては実に人間臭い話ばかり。忙しいながらもとにかく楽しもうとしていた彼らの姿が印象的です。中には切ない話も多く、例えばあの「My Girl」のイントロのギター・フレーズを弾いている故Robert White が、後年レストランで偶然「My Girl」を聴いた時、周りの人たちに「これは自分が弾いてる」とは言えなかった理由として「頭がおかしいと思われるよ」と答えているエピソードは、どんなにアーティストや曲が有名になっても今まで彼ら自身には全くスポット・ライトが当たらなかったという歴史を裏付けています。他にもMartha & The Vandellas の Martha Reeves の現在の太った姿に驚いたり、The Capitols の「Cool Jerk」も実はThe Funk Brothers の演奏だったなど、興味深い発見も多かった映画でした。
 さて映画の話ばかりになってしまいましたが、個人的にモータウンと聞いてまず頭に思い浮かべるアルバムが本作。Bob Dylan も絶賛したSmokey Robinson の歌詞が感動的な「The Tracks of My Tears」、上記のBenny "Papa Zita" Benjamin の強烈なリズムで始まるダンス・ナンバー「Going to a Go-Go」、モータウン産バラードの中でも屈指の名曲「Ooo Baby Baby」の冒頭3曲でK.O、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったモータウンの魅力が全て詰まったアルバムと断言できます。その勢いが躍動的なジャケットにも表れていて、60年代のアルバム・カヴァーの中でもベスト3に入る(と思う)カッコ良さも特筆もの。本作から1曲を選ぶならやはり「Ooo Baby Baby」でしょう。
Smokey Robinson のファルセットが昇天モノで、"タイム・マシンがあったら生で聴きたい曲" 筆頭ナンバーです。

(高瀬康一)





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