Joni Mitchell

Woodstock


1996 " hits " Reprise WPCR-1922 / CD





 道に迷ったときは、よき先達の声に耳を傾けます。茨の道を自らの斧で切り開いて進んできた彼女たちは、強くて大きい。わたしはやや安らいで、それまで閉じていた目を開け、足の先10cmに視線を落とすことができるようになるのです。徐々に歩を進めていくうちに、気がつくと景色は変わっていて、軌跡は自分だけの力ではないことを思い知ります。
なんてね。道に迷ったときには聴いてほしい Joni Mitchell です。いまさらなによとお思いのかたもおいででしょうが、紹介させてください。
 まっさらな大きな紙を差し出されて「好きなように描いてごらん」と言われたとき、あるいは羽を与えられて「さあ、好きなように飛んでみて」と言われたら、多分わたしは2cmくらいの線をすみっこに描き、5mくらいくるっと羽ばたくことしかできない気がします。でも Joni Mitchell は自在に描き、大空を飛び遊ぶ。さらにエナジーは有り余り、体からあふれてどうしようもない。アルバムを聴いていると、そんなもどかしさまで伝わってきてしまいます。


 このアルバムは1996年に『misses』とともにリリースされました。『hits』と『misses』を同時に出すなんていかにも彼女らしい。リアルタイムで彼女の作品に触れてきたかたはもちろんですが、あんまり知らないというかたにはこの『hits』はうってつけのアルバムだと思います。
 1970年代、シンガーソングライターという言葉が使われたのは Joni Mitchell が草分けなのでは? わたしの Joni の曲初体験は、Judy Collins の「Both Sides Now」、Buffy Sainte-Marie の「The Circle Game」です。この2曲ともこのアルバムに入っています。ギター1本でかっこいいこと!
 ピアノの弾き語り、ギターの弾き語り、両方がめちゃめちゃうまい。歌もどんな音程の変化でもへっちゃら、メロディも自由自在、歌詞も躊躇ないストレートなもの。かっこよすぎです。わたしに彼女の歌詞がその場で理解できる英語力があったなら、どんなに沁みてくるかと思うと悔しいです。訳詞を読みながら唄を聴かねばならないのは大損な気がします。英語もっとしっかり習っておけばよかった〜〜。恋愛を歌った歌などは、あまりに愛が大きすぎて、相手のオトコはそれを受け止める力がないときっと負けちゃいますね(笑)。代表作と言われるアルバム『Blue』なんて、全編愛することにあふれてます。彼女の歌詞にはあちらこちらに示唆に富む一節があって、読み物としても素晴らしいです。
 エレピで唄われる「Woodstock」。彼女は Woodstock には参加しませんでしたが、テレビ中継と友達の話からこの曲を書いたそうです。リアルタイムにあのムーブメントに出会っていないわたしには、本当のことはきっとわかっていないのだと思うけど、この曲を聴くと少し理解が深まるような気がします。
 まだまだ現役の Joni Mitchell。後塵を拝するわたしたちは、人生を習うよきお手本がたくさんいてしあわせですね。いろんなことあるけど、がんばって生きていきましょ女性のみなさま。オンナは強く大きくなきゃダメだよな〜。よっしゃー! もっと鍛えようぜ〜!(違う?)

(なかのみどり)





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