ハナレグミ

明日天気になれ

2002 " 音タイム " Capitol/Toshiba-EMI TOCT-24912/CD





 永積タカシの歌を初めて耳にした時、懐かしさを感じさせる声と歌に出会った感じがしました。彼を初めて知ったのは、某局で放送されていた(今年の3月で終了)音楽評論家の萩原健太をバーのマスター役に、永積と池田貴史(後に二人が Super Butter Dog というバンドをやっていると知りました)がそのバーの常連役で毎回出演し、音楽(たとえば、「ヒップホップ」とか「スティリー・ダン」とか・・・)の話題をゲストを交えて展開するトーク番組でした。
 それから彼の歌を初めて聴いたのは、キリンジなどのプロデューサーとして有名な冨田恵一のアルバム『Shipbuilding』の中の「眠りの森」でした。そして昨年、ハナレグミ名義でリリースされたデビュー作の『音タイム』を聴いたのです。
 私たちの世代で彼の歌を聴いて感じるのは、John Sebastian、Jesse Colin Young(昨年、ワーナー時代のソロ・アルバムがCD化されています)、そして、日本で言えば、「プカプカ」でおなじみのディラン II(西岡恭蔵)の歌を思い起こすような、そんな懐かしさが感じられると言ったらよいのでしょうか。あるいはアメリカの牧歌的な雰囲気を醸し出す歌と言ったらいいのかもしれません。


 この「明日天気になれ」(作詞は志水則友と共作、作曲は永積タカシ)は、「ゴロゴロカミナリ/見上げた頬に伝う雨/振り返ると狐のお化け/つらなる/鳥居でかくれんぼ」と歌われる始まりから、なにか世代を超えて郷愁をそそる、普遍的な夏休みの風景が弾む調子で歌われています。とりわけ彼の声質(私が考える男好きのする声、つまり同性の男からも好まれる声質。)がいいです。そして、ゆったりと包み込むヴォーカルは聴くものに心地よい時を与えてくれます。ほかに、わいわい仲間と歌う楽しさが満ち満ちている Booker T. Jones のカバー「Jamaica Song」、しっとり、そして淡々と歌われる「家族の風景」やなど、Polaris やクランボンといった気心の知れた音楽仲間に支えられて、彼ののびのびと歌っている姿がとてもよく伝わってくるデビュー作でもあります。
 今年の野外ライブ・イベントのいくつかに彼が出演するようです。皆さんの中で、彼の歌を聴く機会があるかもしれません。その時は彼の歌をじっくり味わってほしいですね。恥ずかしながら、私は、彼のライブを見ていません。早く彼の生の歌を聴きたいものです。

(伊東潔)




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