Nickel Creek

This Side

2002 " This Side " Sugar Hill SUG-CD-1941 / CD





 早いもので、2002年も残り少なくなってきました。あなたはどんな新しい音楽との出会いがありましたか?だれでも新しい音楽と出会うときのドキドキする感じは変わらないものがあると思います。しかし、流行ものに疎い私には、そういうドキドキするような出会いが少なくなっています。あなたは、いかがですか?
 Nickel Creek――2000年に全米でデビューして、その年、ブルーグラス、カントリーミュージックの世界で注目され、今年、世界的に(日本でも)デビュー作『Nickel Creek』がリリースされたアメリカのカントリー音楽、ブルーグラスの新人のトリオ。ブルーグラスは Hank Williams、Buck Owens などの音楽は聴いたことがありますが私には未知の世界。Sean Watkins(ギター、ヴォーカル)と Sara Watkins(フィドル、ヴォーカル)の兄妹と Chris Thile(マンドリン、ギター、ヴォーカル)のまだ20歳代の若い三人組です。
 デビュー作を初めて聞いて、ギター、マンドリン、フィドル、そしてベースというアコースティックな楽器を駆使したシンプルな構成や、素直な3人のヴォーカルとハーモニーにジャンルを超えた新鮮なポップスを感じました。既に Sean と Chris はソロ・デビュー作を出しており、その演奏テクニックには定評があります。


 「This Side」は、今年、前作同様 Alison Krauss のプロデュースでリリースされた同名の彼らの2枚目のアルバムのタイトル・ナンバーです。イントロの効果的なギターとマンドリンに続きミディアム・テンポのリズムに乗って、Chris Thile の開放感のあるヴォーカルが冴えます。とりわけ「It's Foreign On This Side/And I 'll Not Leave My Home Again」のコーラス部分が耳になじみやすく、Nickel Creek ならではの爽やかな心地よいポップスを楽しめます。このアルバムでは、他に Sara の朴訥で素直なヴォーカルがすがすがしいバラード「Sabra Girl」や彼らのひとりひとりのヴォーカルがいい、アップテンポな「Beauty And The Mess」などもおすすめです(もちろん、かれらの楽器の技量を感じさせるインスト曲もいいんです)。ただ、デビュー作の「The Hand Song」や「Reason Why」のようなこちらの心にすぅーと入ってくる曲が少ないのが物足りなさを感じます。しかし、まだまだデビューして2年、いろいろな楽しみや期待を抱かせる彼らです。
 ブルーグラス、カントリー・ミュージックのジャンルの枠を越えて、日本でも多くの人に聴いてほしいグループだと思います。

(伊東潔)




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