10cc

Une Nuit A Paris

1975 " The Original Soundtrack " Mercury 9102-500 / LP





 ゴールデンウィークにロンドンとパリに行ってきました。家族の用事でロンドンではプライベートな時間は無かったものの、パリは初めてということもあり観光に、レコ探しにと大変楽しめました。パリで泊まったホテルの場所は北駅という、言ってみれば下町。イメージしていた洗練された街とはちょっと違う庶民的な雰囲気で、ホテルも場末感が漂う安ホテルでした。パリ滞在最後の晩、観光に疲れちょっと早くホテルに戻ってベットに横になりながら聴いたのが、この 10cc の「Une Nuit A Paris」(邦題「パリの一夜」)という曲。もちろんパリ旅行ということで最初から狙ってアルバムごとMDに録音していったのですが、やはりというか、面白いほど周りの状況にハマって臨場感溢れるサウンドトラックとなってくれたのです。


 通りの外から聞こえる酔っ払いの叫び声。融通の利かないホテルのフロントマン。雨上がりの道路に写ったアヤシイ店のネオンサイン。2、3日のうちに僕がホテル周辺で体験した映像が、この曲の短編映画を観ているような細かい描写の歌詞と凝ったSEによって、頭の中にもう1度フラッシュバックしていくという、ちょっと面白い体験をしました。
 このミニオペラ風の組曲を作ったのが、のちのMTV時代に引っ張りダコの人気映像作家となったKevin Godley & Lol Creme の2人。美術学校出身で映画オタクのこの2人が、60年代から英ポップス・シーンの第一線で活躍してきた強者2人(Eric Stewart & Graham Gouldman)と結成したのが 10cc で、このアルバムは3枚目。架空の映画のサウンドトラックというブッとんだコンセプトと、個々の作品のクオリティが最高傑作の名を欲しいままにしています。ちなみにその架空の映画のサウンドトラックを、自分の旅行のサウンドトラックに使おうというのが、今回のパリ旅行の僕のコンセプト。
 彼らの映画狂ぶりはラストに収録の「The Film Of My Love」という曲にも表れています。ハリウッド映画のタイトルを散りばめながら愛のドラマをロマンティックに謳い上げたこの曲を、僕は凱旋門に続くシャンゼリゼ通りを歩きながら聴きました。『巴里のアメリカ人』『パリの恋人』『魅惑のパリ』『パリの旅愁』など、常にハリウッドが描いてきたパリの象徴である場所でこの曲を聴くことが長年の夢だったのです。どこかヨーロッパを感じさせるマンドリンの音色と、映画のエンドタイトルを思わせる大団円のコーラスが、シャンゼリゼの街並みにぴったりだったのは言うまでもありません。(しかしこのアルバムのレビューで「I'm Not In Love」について全く語らないというのも珍しいのでは...でも僕はどちらかというと Stewart & Gouldman 派なのです)
 好きな曲を相応の場所で聴くというこのシリーズ、次回は Frank Sinatra の「Strangers In The Night」をN.Yの摩天楼の夜景を見ながら聴くというのをぜひやってみたいのですが、一体いつになるやら。

(高瀬康一)





Copyright (c) circustown.net

がんばれニッポン!!