大貫妙子

ともだち

2002 " note " Toshiba EMI TOCT24719 / CD





 「あなた」と「わたし」と「私たち」の曲ばかりで綴られる40分の奇跡。
 ああ、どうしてこんなに美しい調べを紡ぎ出すことができるんでしょうか。
 いつのまにか心の深いところまで染みとおってしまったター坊の歌声は、わたしの邪悪な心、さもしい心、悲しみや妬みや嫉みをすべて洗い流してくれそうです。
 相思相愛のミュージシャンたちに囲まれて作り上げる音楽は愛に溢れ、お皿からこぼれて、みんなを暖かく、幸せにしてくれます。リズム・セクションの一発録りだからこそ生み出される一体感や、ちょっと懐かしい70年代風のアレンジが気持ちいいのは、歳のせいだけじゃないよね。詞がとても心に届くのもすごいこと。若いヒトにもおばあちゃんにも、悲しいヒトにもうれしいヒトにも、みんなにこの心地よさはきっと伝わるだろうと思います。
 大貫さんの歌は昔、あまりに研ぎ澄まされて聴こえて、わたしにはつらくなってしまった時期がありました。今の彼女は海みたいに大きく、しかも凪いでいて、ただすべてを受けとめてくれるだけ。でもそれで充分。


 音楽的には、森俊之さんの「わきまえた」アレンジがとてもいいなぁと。最近の森さんの活躍が納得できます。「ともだち」は、「You've Got A Friend」に初めて触れたときのような感動を覚えました。すばらしい曲です。これ、きっとアッコちゃんのことなのではないかしら。
 パネさんのピアノは相変わらず優し過ぎて泣きたくなるし。ボトムの人たち(林立夫、沼澤尚、小原礼、松原秀樹、高水健司、細野晴臣)の加減がまた…。ベテランの余裕なのかな。いや、それだけじゃないに違いない。ター坊と一緒だからだきっと。
 去年、オーチャードホールで観た大貫さんのコンサートのじんわりとした暖かさと凛とした強さは、そのままこのアルバムに再現されています。年齢や経験だけに左右されない、もっと普遍的な「こころの持ち方」みたいなものがヒトとして一番大事なのだと、思い知らされるなかのでした。涙涙。

(なかのみどり)




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