America

A Horse With No Name

1971 " America " Warner Bros.BS-2576/LP





 今年のお正月は穏やかなお正月だったなあという気がします。東京では三が日ともきれいに晴れ渡ってすがすがしい年の始まりでした。去年は何かと暗いことの多い一年でしたからよけいにこの穏やかさをうれしく思えたのかもしれません。
 今年は午年。天高く嘶いて、障害などはひょいと軽く飛び越えてダービーの勝馬のようにさっそうといきたいものです。そんなわけで本欄をよく読んでいただく方にはここまで読んで先の展開が読めたのではないかと思います。まことに安直との誹りを免れ得ないのですが、馬がらみの曲を年の初めの縁起物ということで取り上げてみたいと思います。馬を題材にした曲と言えば真っ先に思いつく曲がこの曲。英米そして日本でも大ヒットした曲なのでご存知の方もきっと多い曲だと思います。


 America は1960年代末期にイギリスで結成されました。アメリカ人の Gerry Beckley、 Dan Peek、イギリス人の Dewey Bunnell の3人組。イギリスのグループなのにアメリカとはこれいかに。故郷を離れたアメリカ人がどんよりと曇った空の下で遠く肥沃で広大な大地に思いを馳せて名付けたのでしょう。それにしても America。僕以上に安直だけど、それにしても勇気あるよなあ。大きすぎて誰もが手を拱いていたバンド名をいとも簡単にひょいと付けてしまったようなそんな感じ。サウンドもまったく気負ったところがないような気がします。このデビュー・アルバムで3人がそれぞれに持ち寄った曲はなぜかイギリス人の Dewey の曲に彼の地への憧憬を描いた曲が多く、アメリカ人の二人の曲はどちらかというと内省的で私小説風。デビュー・ヒットとなった「A Horse With No Name」も Dewey の曲で「名前のない馬に乗って砂漠や海辺を旅する」というアメリカン・アドベンチャーな内容です。
 後年、America は洗練されたサウンドで名を馳せますが、このころの America は The Byrds を髣髴とさせるような、いやむしろ Byrds よりも屈託なくはつらつと聴かせる12弦ギターが何ともすがすがしくて、そのすがすがしさと透明感が新年のこの季節にとってもよく合っているなあと、感じました。 そんなわけで今年もよろしくです。

(脇元和征)





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