Jackie DeShannon

Steal The Thunder

2000 " You Know Me " Varese Sarabande/JAG 3020661692/CD





 つい先日 circustown.net のスタッフ数人が渋谷で例によって音楽談義を肴に一杯やっていました。ほろ酔い加減になってきたところで誰からともなく、「これからHMVに行ってみよう、今ならまだ開いているだろう」という話になりました。土曜の夜の9時。酔いのせいで紅潮してハイ・テンションなままHMVへ。そこでふとひらめいたのが「よし、じゃあここでみんな一枚ずつ買うこと。買ったCDは2次会の場所で開陳した上、次の Music Book のレヴューにすること」というアイデア。そして我々は売り場に散ったのでした。しかし、いざ探し始めるとなかなかこれといったものが見つかりません。みんなに披露する以上少しはみんなの興味をひかなきゃいけないとか、レヴューも書かなきゃいけないしとか、そんな余計なことばかり考えているからなおさら決まりません。おまけに無数の選択肢の中から一つだけを選び出そうというしらふにだって高度な(?)判断を酔っぱらいが出来るはずもない。言いだしてみたものの次第に後悔と焦りが。そのうちにみんな一枚を選び出しています。そんな時目に飛び込んできたのがこのジャケットでした。解説は長門芳郎さん。よしこれでいこう。昨年22年ぶりに出されたこの新作のことを聞いてはいましたがまだ聴いていなかったし、この後の2次会の話題としては Jackie DeShannon というのはそれなりに話題もある。


 東京は南青山にあったパイド・パイパー・ハウスというレコード屋さんはポップス・ファンにとっては知る人ぞ知る存在でした。店長は長門芳郎さん。九州の田舎に住んでいた僕にとって南青山という何とも都会的な地名とともにパイドは憧れの場所でもあり、その当時から通販で一枚、二枚とオーダーしていたものでした。やがて上京してからはバイト代が貯まると、パイドに出掛けていってレコードを眺めるのが楽しみでした。上京して初めて買ったのが Jackie DeShannon の Liberty から出ていたベスト盤。彼女の顔が大写しになったジャケットが特に印象的でした。Jackie DeShannon はアメリカン・ポップスを聴き始めた頃に出会った名前でもあり、「Needles And Pins」や「What The World Needs Love」といった曲は僕にとっては長いこと彼女がオリジナルでした。その低いパンチのあるソウルフルな歌声は今聴くととてもセクシーですが、その当時はそういうことにはあまり気が付かなかったように思います。
 22年ぶりの新作ではむしろちょっとさらりとそして幾分高くなった声に気負いのなさを感じさせてくれます。むしろ若返った感じ。久しぶりのオリジナルを「これが自然体」とばかりに歌う彼女の声はどこまでも伸びやか。ストレートでオーソドックスなロックン・ロールによく合います。 Carl Wilson の手になる The Beach Boys の「Trader」のカヴァーも地味な選曲だけになおのこと彼女の気負いのなさを感じさせてくれます。いずれにせよ気心の知れた仲間に Steve Pocaro をゲストに迎えたこのアルバムからは、長いキャリアを経て得た歌う喜びと余裕が感じられます。
 さて、2次会でそれぞれのCDを披露しあった時の「金髪とハスキー・ボイスは美女の重要な要素」とはたかはしかつみさんの弁。さて、これから富田さん、高瀬さん、たかはしさんの収穫が順次披露されていくことと思います。何が飛び出しますか・・・。

(脇元和征)





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