MFQ

Brooklyn Girl

1985 "Moonlight Serenade" Village Green D22Y0319 / CD





 先日の Maria Muldaur のライブでのアンケート用紙で、"ぜひ観てみたいアーティストは?" という質問があり、色々なアーティストが頭をかすめたのですが結局はMFQ と書き込みました。88年と90年の来日公演を見逃し、その頃出た CD (『MFQ/LIVE IN JAPAN』)の素晴らしさに圧倒され、ライブを見逃した口惜しさが日に日に大きくなり現在に至っているからです。
 僕がMFQ (Modern Folk Quartet)の名前を最初に意識したのは達郎さんの「This Could Be The Night」のカヴァーを聴いてからでした。Nilsson 作曲、Phil Spector プロデュースという今思えばMFQ の中でも超異端なこの曲にシビれ、オリジナルを探そうとワケも分からず無謀な探索を続けたのが80年代後半。神保町の中古レコード屋で見つけた63年のデビュー・アルバムのオリジナル盤『The Modern Folk Quartet』のジャケットを見て、そのフォークなイデタチに「ちょっとイメージが違うなあ」なんて思いながらも高くて買えなかったという思い出もちょうどその頃です。結局「This Could 〜」とは全く出会えず(それはそうでしょう未発表音源なのですから。でもその後Spector『Rare Masters』でめでたく聴けました)その代わり新宿のレコード屋で何気なく見つけたのがこの『Moonlight Serenade』でした。


 60年代のモダン・フォーク・ブームの中でも一際美しいハーモニーと高い音楽性で通の音楽ファンを唸らせ、ワーナーから2枚のアルバムを出していたMFQ が、その後メンバーのソロ活動が多くなった70年代を経て、85年に21年振りのリユニオン・アルバムを発表。それがこのアルバムで、スタンダード・ナンバーをこれでもかっていうくらいロマンティックにノスタルジックにハート・ウォームにキメてくれています。クラリネットやバンジョー、ウクレレ、ミュージカル・ソウ等を使った雰囲気満点のアレンジにとろけそうなハーモニー。個人的に大好きなのは「Brooklyn Girl」(Jerry Yester 作)と「Rendezvous」(Chip Douglas 作)というメンバーのオリジナル2曲で、中でも「Brooklyn Girl」のアカペラは何度聴いても感動します。(いつかオンスト・シリーズでカヴァーしてもらいたい!)
 最近はあのドリームズヴィル・レコードから紙ジャケで再発され、85年のアナログ発売も合わせると3回目の邦盤登場となります。それだけ愛されている名盤ということなのでしょう。未聴の方はぜひ。初秋の夜、虫の声と一緒に聴くのをお薦めします。

(高瀬康一)




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