加山雄三とランチャーズ

On This Beach (白い浜)

1966 "EXCITING SOUNDS OF YUZO KAYAMA AND THE LAUNCHERS"
CBSコロンビア PS-1314-JC / LP





 僕はレコードを洋楽と邦楽に区別して収納しているのですが、邦楽なのに意図的に洋楽の棚に入れてしまっているレコードが数枚あります。加山雄三のこのアルバムもそんな1枚で、1966年の日本で制作されているにも関わらず、この圧倒的な洋楽臭は当時相当なインパクトだったのではないでしょうか。
 '65年に The Ventures が来日して起こった空前のエレキ・ブームを見逃すまいとして公開された『エレキの若大将』。この映画の制作とほぼ同時進行で、従兄弟たちと結成していたランチャーズと共に作り上げたのがこのアルバム。全編エレキ・ギターによるインストゥルメンタルと英語詩によるヴォーカル曲で構成され、当時はまだ専属制度が厳しかった日本のレコード会社において初の洋楽レ−べルからのリリ−スとなりました。その辺の事情やジャケットのカッコ良さなどから洋楽の棚に入れておきたくなる気持ちは分かって下さると思うのですが、それ以上にどうしようもなく" 洋楽 "なのが、全て弾厚作作曲、ランチャーズ・アレンジによる楽曲たち。特にまだ湘南学園高校の高校生だった(!)喜多嶋修が参加していた第2期ランチャーズのグルーヴィな演奏は今聴いても全然古臭くありません。


 今回紹介する1曲は夏真っ盛りということで「白い浜」という曲です。スティール・ギターとウクレレが心地良いハワイアン・スタイルなのですが、当時日本でたくさん作られたハワイアン風の歌謡曲とは一線を画する、Cliff Richard 辺りを思わせる品のいいメロディの名曲です。(なんたって英語タイトルが「On This Beach」!)このセンスはアルバム最後に収録された「Blue Sky In Your Eyes」にも感じられ、この2曲がこの時期の気分にぴったりなので今回このアルバムを選びました。
 他の曲にもちょっと触れておくと、「恋は紅いバラ」という邦題で有名な「Dedicated」は「君といつまでも」と同タイプの3連のロッカ・バラード。
「Honky Tonk Party」は本人の解説では Trini Lopez 風のリズムだと書いてありますが、間奏のギターは Beatles 「Everybody's Trying To Be My Baby」辺りを狙っています。「Boomerang Baby」は達郎ファンにはお馴染みの名曲。この時代の日本では画期的だった1人2重唱が美メロ度を高めています。もろ Ventures「Tomorrow's Love」風な「Demure Damsel」や、サビの転調が素晴らしいラテン系「My Gypsy Dance」、 Elvis のようなシャウトが聴ける「Sweetest Of All」、フィード・バックから偶然出来たという強力ガレージ・インスト「Crazy Driving」など、60's ポップスが好きな人ならニヤリとする名曲が次々と出てきて本当に楽しめるアルバムです。

(高瀬康一)





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