大橋純子

眠れないダイヤモンド

1988 " DEF " Epic Sony 32-8H-150/CD





 十年一昔といいますが、流行歌の世界の流れの速さは、十年一昔どころではないという印象をどなたも持たれるのではないしょうか。1970年代、80年代の日本のポップス・シーンを駆け抜けたシンガー、ミュージシャンたちが今もシーンの最前線でその速さに流されることなく一つの宝石として輝きを絶やさないでいることは、両手の指ほどの例外的なシンガー、ミュージシャンを除いてはとても難しいことだと思うのです。
 「シンプル・ラヴ」、「たそがれMy Love」などのヒット曲で、その伸びのある声と歌唱力の豊かさで知られている大橋純子が1984年から4年間、よく言われる充電期間(ニューヨークに滞在)を経て、1988年に Epic Sony からリリースしたのが「DEF(Dream Emotion Fragrance)」でした。
 「眠れないダイヤモンド」は、このアルバムの巻頭を飾り、シングル・カットされたもので、4年間のブランクを微塵も感じさないヴォーカルがミディアム・テンポのリズムに乗ります。


 加えてこのアルバムの全てのアレンジを担当した清水信之(Epo、大貫妙子、平松愛理などの編曲で有名)の手堅いアレンジによって彼女の健在ぶりを示す作品に仕上がっています。他に Chaka Khan ばりのハイ・トーンのヴォーカルがファンクっぽいサウンドを濃厚にする「惑いのWicked Woman」なども聴き応えがあります。
 その後、このレーベルから同じスタッフ(佐藤健プロデュース、清水信之アレンジ)で同年末に『Question』そして1990年に作詞家、竜真知子を Lyric Inspirer に迎えて『Pagoda』をそれぞれリリースしました。
 最近、彼女の歌を耳にするのは、懐かしのポップス番組で聴かれる上述した大ヒット曲ばかりでとても残念が気がします。輝くべき宝石の光を求めることは難しいということでしょうか。

(伊東潔)




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