赤い鳥

ラブレター

1974 " 書簡集 " Toshiba EMI LTP-85010/LP





 人の声が重なり合って織り成すコーラスの美しさに初めて出会ったのは、赤い鳥の曲で、でした。今では音楽の教科書にも載っているという「翼をください」もよかったけれど、「忘れていた朝」、「赤い屋根の家」などの70年代初頭におおはやりだったフォークとはちょっと違う、ポップであか抜けた曲にいたく感動して、以来ファンになったのでした。
 74年にリリースされたこの『書簡集』は赤い鳥のラストアルバムで、解散後 Hi-Fi Set、紙ふうせんの二つのグループに分かれる兆候がはっきりと聴いてとれます。わたしは高校1年生のときにこのアルバムを買い、どちらかというとのちの Hi-Fi Setのリードヴォーカルとなる山本潤子の歌ばかり繰り返して聴いていました。当時わたしは、世の中にこんなにもツヤのある声で歌のうまい女性ヴォーカリストはいない!と心酔していましたので、一緒に歌っては「もっとうまくなれないものか」と凹んでたものです。


 一時期は赤い鳥の正式なメンバーでもあった村上秀一、大村憲司のふたりと、売れっ子アレンジャ―&キーボーディスト深町純のサポートもあり、当時としてはとてもソフィスティケートされたアルバムとなっており、今聴いても大村憲司のソロなどは「おおっ!」と唸ってしまいます。このときはまだ20代だったんですよね、大村さん。
 このアルバムで大川茂がソロをとっている「ラブレター」という曲は、わたしの赤い鳥フェイバリッツの中でも1、2を争う名曲です。渋い声でぼそぼそと歌う大川さん。詞がまた男の純な気持ちがよく出てていいんだな。大村憲司のギターソロも泣かせます。あの頃はあまり好きじゃなかった後藤悦次郎の曲も、今聴き返すとけっこう沁みてきます(歳のせいかも)。それにしても全員歌がめちゃうまいのには、改めて感心しました。
 赤い鳥が素晴らしかったのは、女性2人、男性3人という編成による部分が一番大きいけれど、全員がコーラスに参加できる、全員ソロヴォーカルがとれる、全員が曲作りができるという3点ではなかったかと思います。音楽性の幅広さ、混声コーラスの美しさは出色だったなぁ。アルファに所属し、村井邦彦が作曲、プロデュースに携わっていたことも大きな影響を与えていたように思います。
 昔一世を風靡したグループが数多く再結成を果たしている中、赤い鳥にはそんなうわさはかけらもありません。現役時代、ライブのうまさには定評があったグループなので、一度でいいからこの耳でライブを堪能してみたいですね。

(なかのみどり)





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