The Stylistics

Betcha By Golly,Wow

1971,1990 " The Stylistics " Victor VICP-2036/CD





 The Stylistics は日本で最も有名なフィラデルフィア・ソウル・グループと言っていいでしょう。日本人好みのバラードを甘美なコーラスに乗せてムードたっぷりに聴かせることが出来るグループが少なくとも日本にはいないということ、そして何と言っても一度聴いたら忘れられない、リード・ヴォーカルの Russell Thomkines Jr. のあのとろけるようなファルセット・ヴォイス。この何とも言えない切なさが日本人受けするのでしょうか。何度も来日を果たしコンサートを開いていることもあって、とりわけ日本人にはなじみの深いソウル・ヴォーカル・グループです。
 フィラデルフィア・ソウルが注目を浴びるようになったのは1970年頃からでした。 Jerry Butler などのプロデュースを経て 72年に"Philadelphia International Records" を設立した Kenny Gamble & Leon Huff のプロデューサー・チームが The Intruders、 The O'Jays、Harold Melvin & The Blue Notes、The Ebonys などの曲を次々とヒットさせ、"Philadelphia International"をシーンの中心に据えながらフィリー・ソウルはスウィート・ソウルのメッカとなっていきます。


 The Stylistics もフィラデルフィアから生まれたヴォーカル・グループのひとつでした。もともとは The Monarchs と The Percussions という別々のグループで活動していた、James Smith、Airrion Love、James Dunn、Herbie Murrell に先の Russell Thomkines Jr. を加えた5人組で1971年に "Avco Records" と契約します。ここで彼らの専属プロデューサーとなったのが、Gamble-Huff のもとでアレンジャーとして活躍していた Thom Bell。彼はすでに William Hart という、これまたすばらしいヴォーカリストを擁する The Delfonics を手掛け「La La Means I Love You」、「Didn't I (Blow Your Mind This Time)」といったヒット曲を放っていました。彼は作詞家の Linda Creed とともに、 Russell Thomkines Jr.のファルセット・ヴォイスを最大限に活かしたサウンドづくりに取り組みます。
 Thom Bell は10代の頃にクラッシク・ピアノを勉強したこともあって、フィリーの他の作家たちに比べても、アカデミックな音づくりを指向していたことが伺えます。彼をして「ソウル界のバカラック」というのも間違いではないようで、実際同時期にヒットを連発していた Burt Bacharach の作風を意識した曲もあります。
 初期の The Stylistics は Thom Bell のプロデュースによって大成功を収めます。「You Are Everything」に始まり、この「Betcha By Golly, Wow」 、「I'm Stone In Love With You」、「Break Up to Make Up」そして Thom Bell が手掛けた最後のシングル「You Make Me Feel Brand New」まで、きら星のごとくヒット曲が並びます。
 プロデューサー Thom Bell が文字通り最も成功を収めたのが The Stylistics との仕事と言っても過言ではないでしょう。 彼らの音楽がただ甘くちょっとエッチなだけの凡百のソウル・バラディアー達と違っていたのは、Russell Thomkines Jr.のファルセット・ヴォイスと Thom Bell との幸福な出会いがあったからだと言えるでしょう。

(脇元和征)





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