Petula Clark

True Love Never Runs Smooth

1964/1993 " Down Town " Pye/Sequel NEB CD 661/CD





 イギリスの生んだ女性シンガー Petula Clark。ブリティシュ・インベイジョンまっただ中の1964年、彼女のシングル「Down Town」は初の全米 No.1を獲得しグラミー賞も受賞しました。バンド・ブーム全盛のイギリスのミュージック・シーンから、いかにも当時のアメリカン・ポップ・フィールドを意識した歌手が飛び出し、そして大成功を収めたことに少し不思議な感じもしますが、彼女自身の伸びやかな歌声が十分に魅力的であったことはもちろん、優れたスタッフに恵まれたことも大きな要素の一つではないでしょうか。当時からイギリスにはそういうポテンシャルが十分にあったようです。
 母親も歌手であったという彼女のシンガーとしてのスタートは早く、40年代には Julie Andrews と映画で共演したりもしています。歌手としての本格的な活動は60年代に入ってからのようで「Down Town」がヒットしたとき彼女は32歳。芸歴は長いものの遅咲きのシンガーだったようです。Pye Records で専属プロデューサー、Tony Hatch と出会って以降彼女の成功は確実なものとなります。先述の「Down Town」も Tony Hatch のプロデュースであり同時に作曲も手掛けています。このほかにも彼女が曲を書き Tony Hatch が詞を書いた「You're The One」も多くのカヴァー曲を生んだ大ヒット曲として有名。


 Tony Hatch もイギリス生まれ。Petula 以外では The Searchers でや Jackie Trent でも成功を収めました。またテレビ・ドラマのサウンド・トラックなども多く手掛けており、自ら率いた Tony Hatch & His Orchestra では指揮も務めています。
 そんな”イギリスのバカラック”Tony Hatch が全面的にプロデュースしたこのアルバムには本家 Burt Bacharach-Hal David の曲が収められています。「True Love Never Runs Smooth」がそれ。1963年に Gene Pitney がスマッシュ・ヒットさせましたが、出来は断然 Petula Clark の方が上。実は私自身、多くのバカラック作品の中で最も好きな曲だったりします。Bacharach らしいロマンティックでダイナミックなメロディーに心を揺さぶられます。
 そして何とも切ないこのタイトルが印象的。そういえば大滝詠一氏が久しぶりに歌った「幸せな結末」が主題歌だった、キムタクとマツタカ主演のドラマ『ラブ・ジェネレーション』で"True Love Never Runs Smooth"と書かれたポスターがストーリー展開を暗示するかのように、効果的に使われていました。久しぶりに大滝さんを引っぱり出したプロデューサー、この曲が好きだったのかなあ。

(脇元和征)




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