Frankie Valli

Swearin' To God

1975 " Closeup " Private Stock PS2000/LP





 The Four Seasons のリード・ヴォーカル Frankie Valli は60年代後半からグループの活動と平行してソロ活動を始めます。特徴あるファルセット・ヴォイスが人気を呼んでいましたが、地声で歌っても十分に個性的で魅力的な彼の声に、本人もまわりのスタッフにもソロ活動への意欲があったようです。
 後にThe Walker Brothers で大ヒットした「The Sun Ain't Gonna Shine Anymore」を皮切りに、67年には全米第2位となる大ヒット「Can't Take My Eyes Off You」を放ちソロとしても大成功を収めます。
 70年代に入りFrankie Valli は The Four Seasons とともに Motown Records に移籍しますが Carole King や James Taylor といったシンガーソングライターの時代を迎えて、次第にヒットから遠ざかっていきます。The Four Seasons は60年代の一時の夢だったのか? 答えは否。70年代の中頃になってグループとともに華々しくカムバックするのでした。
 まずは Frankie Valli が Private Stock に移籍しシングル「My Eyes Adored You」で全米1位を獲得すると、続いて The Four Seasons が「Who Loves You」、「December, 1963(Oh,What A Night)」と立て続けに大ヒットを飛ばします。


 そして、Private Stock からの最初のソロ・アルバムとして75年に発表されたのが「My Eyes Adored You」を収録した本作『Closeup』ですBob Crewe と Bob Gaudio がプロデューサーをつとめ、Charles Callelo が全編のアレンジを担当。当時ニューヨークでも最先端と言われた Media Sound Studio を中心に、後に Stuff に参加する Gordon Edwards のベース、Rick Marota のドラムス、Jeff Mironov のギター、ホーンセクションには Lou Soloff、Jon Faddis、George Young といった、ニューヨーク最高のスタジオ・ミュージシャンを配して、クロスオーヴァー・テイストな路線が展開されています。
 白眉なのは10分に渡って延々と続くニューヨーク・ディスコの最高峰とも言える「Swearin' To God」。緊張感溢れるリズム・セクションにホーンが絶妙に渡り合い、そのすきまをストリングスが華麗にただよう。そこに粘っこい Frankie Valli の声が絡み合っていきます。ひとときも飽きさせることなく腕利きミュージシャン達がソロを廻すところは絢爛豪華!
 山下達郎はこのアルバムが直接の動機となって『Circus Town』を Charles Callelo に託したとのこと。 Charles Callelo に「Swearin' To God」のスコアを見せてもらい、その緻密さに驚いたと言います。何らアカデミックな音楽教育を受けていない Charles Callelo のアレンジ手法を徹底的に分析する中で自分なりのアレンジの手法が確立したそうであり、山下達郎こそが日本で唯一の Charles Callelo 直系の"アレンジャー"でもあります。
 「My Eyes Adored You」の作曲者でもあり、シンガーソングライターでもある Kenny Nolan がとてもいい仕事を残しているのもこのアルバムです。(本サイト富田氏の「ニューヨークの伊達男〜Bob Crewe」も是非ご一読ください。)
 Private Stock のレコードは現在一枚もCD化されていません。早くCD化されるといいですね。

(脇元和征)





Copyright (c) circustown.net