Bing Crosby and Grace Kelly

True Love

1956 Capitol CL 315/Single





 歌の王様と永遠のプリンセスからの真実の愛のプレゼントです。しゃれた弦楽に小粋な Bing Crosby のヴォーカル、そこに Grace Kelly がほんの少し印象的にからみます。この曲は1956年の映画、「上流社会」に Cole Porter が提供したもの(作詞作曲)。映画は Grace と Bing のカップルをめぐった、軽いラブコメディーミュージカル。そこに楽団のバンマス "サッチモ" Louis Armstrong (実名で登場)、お邪魔虫の新聞記者を演じる Frank Sinatra が色を添えます。特に冒頭のバスの中でサッチモがテーマ曲を「がなる」シーンはとっても印象的。
 Grace Kelly は「裏窓」「ダイヤルQ」「泥棒成金」のヒッチコック3部作などが代表の大変美しい女優さん。「上流社会」を置き土産にモナコのレーニエ大公に嫁いで映画界を離れました。Bing Crosby は戦前からジャズ歌手の代表的存在。"White Christmas" はじめ、ポピュラーなヒットがたくさんあります。Cole Porter は代表的なアメリカの作詞作曲家。"Kiss Me Kate" などのミュージカル、"Begin the Beguin" などのヒット曲を数多く持っています。 "I've Got You Under My Skin" なんかもそうですね。

 クルーナーといいますか、こういう楽に歌っている音楽が時々聞きたくなります。控えめな音楽。声なんか張り上げない、どならない。最近レコード屋さんに行くと、椎名林檎が私の音楽聞いて聞いてと迫ってきます。私は素直なので耳を傾けて、感心してしまうのですが、一方クルーナーの音楽みたいなものは成立しにくくなっているんじゃないでしょうかね。なにせ、舞台設定があって、雰囲気があって、みんなが(相手が)聞きたい気持ちになった時だけ成立するような音楽ですから。とってもナイーヴであるわけです。と書いていたら「上流社会」みたいな映画も成立しませんねえと気づきました。MGM 映画の末期の傑作ですが。でもこの歌の中のような世界は、ずーっと変わらないでいてほしいものです。True Love。

(たかはしかつみ)




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