Prefab Sprout

Carnival 2000

1990 "Jordan: The Comeback" Kitchenware/CBS KWCD14/CD





 明けましておめでとうございます。2000年最初に聞いた曲はなんですか?人によってそれぞれ答えは当然違うでしょうが、結構人気を集めると思うのは Prefab Sprout の「Carnival 2000」。私も真っ先にこれを思いつきました。1990年に発表された曲ですが、この10年間にその輝きが失われることの無かった作品の一つです。
 Prefab Sprout はイギリスはニューキャッスル近郊出身のバンドで、1982年8月に Candle レーベルから自主製作シングル「Lions in My Own Garden:Exit Someone」でデビュー。その後は地元のインディーレーベル Kitchenware から、これまでに6枚のオリジナル・アルバムを発表しています。当初は Aztec Camera や The Monochrome Set らと並び称されるギター・ポップ・バンドの一つでしたが、リーダーのPaddy McAloon による転調や変拍子を多様した才気走った作風は当時から異彩を放っていました。Paddy はその後もソングライティングに一層磨きをかけ、甘く美しいメロディーの上に Jimmy Webb に通じる無垢で内省的な歌の世界を作り上げ、今や英国の至宝というべき孤高の存在となっています。


 大貫妙子を彷彿させる Wendy Smith のコーラスも魅力の一つ。彼らの 2nd アルバム『Steve McQueen』(1985年 アメリカでは『Two Wheels Good』として発表)と 4th『From Langley Park To Memphis』(1988年)は80年代屈指の名盤として知られています。
 その2作のプロデュースを手掛けた Thomas Dolby と三たびコンビを組んだ『Jordan: The Comeback』(1990年) は全19曲、トータルで64分という大作となりました。Elvis Presley やアメリカへのオマージュとスピリチュアルな色調に彩られたその作品は、圧倒的な完成度により彼らの最高作、90年代随一のアルバムという評価を受けています。軽妙な「Looking For Atlantis」、ロマンチックな事この上ない「We Let The Stars Go」や「Wild Horses」、優雅な組曲という趣の「Jordan: The Comeback」〜「Moon Dog」の4連発、神の声が聞こえるバラッド「One Of The Broken」、そしてラストの「Doo Wop In Harlem」はまるで賛美歌のよう。このアルバムを聞くと、彼らこそが80年代以降で最高のソフト・ロック・グループではないかとつぶやきたくなります。
 「Carnival 2000」は同アルバムの5曲目。ちょっとブラジル風味の利いた軽快な曲調で、ブラスのリフが印象的です。内容は、紀元2000年も希望の持てる年であって欲しいという願いが籠められているようです。人も愛も生まれては死んでいくけど、生と愛の美しさは誰も否定できない、犯した過ちもこれからの年月が許してくれるだろう、善き行いは僕等が居なくなっても残るだろう、といういかにも Paddy らしい肯定的な曲です。
 それ以降はオリジナル・アルバムとして1997年に耽美的な『Andromeda Heights』を出しただけで、すっかりリリース・インターバルが山下達郎に匹敵する状態になっている彼らでしたが、昨年11月に突如2枚組のベスト盤『38 Carat Collection』を発表。また同じ頃にオフィシャルサイトをスタート。そして昨年末に Paddy が急拠来日し、12月18日に東京で先のベスト CD 発売記念のサイン会がまさかの実現。さらに今年には Live 活動を再開してUKツアーを行うという予定も。2000年を前後にして急にあわただしくなってきました。夢にまでみたニューアルバムの発売も近いかも知れませんね。

(パープル蛭子)





Copyright (c) circustown.net