『 On The Street Corner 3 』発売記念


Frankie Lymon And The Teenagers

Why Do Fools Fall In Love

1955/1991 "Why Do Fools Fall In Love" Instant INS 5054/CD





 Doo-Wop 史上最も有名なヒット曲にして、ロックン・ロールの古典としてあまりにも有名なこの曲に私が初めて出会ったのは、中学生の頃リバイバルで見た映画「アメリカン・グラフィティ」の中ででした。そして、この映画の中で使われた遥かなるロックン・ロールの名曲達が私とオールディーズと呼ばれている音楽とのはじめての出会いでした。
 2枚組のサントラ盤を買うお金がなく、ようやくこのアルバムを手に入れたのは高校に入学してからでしたが、珠玉のオールディーズが収められているこのアルバムが私にとってまさにロックン・ロールの教科書でした。
 その後、山下達郎氏の「サウンド・ストリート」でこのサントラ盤の中に収められているいくつかの曲が Doo-Wop というカテゴリーの R&B だということを教えられてから私の中にあったロックン・ロール・ミュージックの僅かな知識がすこしづつ体系化されていったことを思い出します。
 私とロックン・ロールの邂逅となった曲たちのうちのひとつでもあり、個人的にも思い出深い1曲であります。


 Frankie Lymon & Teenagers は50年代中期に、ニューヨークで結成された名前のとおりのティーエイジャーによるヴォーカル・グループです。とくにリード・ヴォーカルで当時まだ若干13才の Frankie Lymon は天性の表現力と歌唱力の持ち主でした。若さというかあどけなさでぐいぐい引っ張っていくその歌いっぷりに微笑ましくもなります。とにかく大人顔負けの情感たっぷりなヴォーカル・スタイルが受けてこの曲は全米6位の大ヒットとなり、その後「I'm Want You To Be My Girl」、「Fools」などとヒットを連発します。
 彼らの成功にあやかって、二匹目のどじょうを狙った Lewis Lymon & The Teenchords が「I'm So Happy」という曲を出すなど彼らのようなキッズ・グループがたくさん出てきました。
 Frankie Lymon はその後、ドラッグの大量摂取によって26歳の若さでこの世を去ってしまいます。若くしてショー・ビジネスの世界に身を置いたために起きた悲劇というところでしょうか。生きていたならば、同じように子供の頃から活躍していた Stevie Wonder や Michael Jackson などを凌ぐ存在になっていたかもしれません。
 さて、この名曲を達郎さんはどう料理してくれるのか。それはとてもシンプルで感動的なアプローチでした。今から20数年前のアマチュア時代に作られたアルバム『Add Some Music To Your Day』でカヴァーした時とほぼ同じアレンジによってこの曲を甦らせたのです。
 時の試練に耐えながら生き残っている名曲と、チープなテレコで録音していたアマチュア時代とまったく同じ手法で、30年近い時を経て再びこの曲を受け継いだ頑固一徹の音楽職人。それはロックン・ロールが永遠の輝きを持ち得た瞬間かもしれません。
  「かわらないもの」への確かな手応えを感じながら、何とも嬉しくなって久しぶりに彼らの歌声にどっぷりと浸ったのでした。

(脇元和征)





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