達郎書き起こしプロジェクト by ロック軍曹とサーカスタウン

2002/8/4 Sunday Song Book「Surfin'/Hot Rod/エレキ・インスト特集(1)」



山下達郎/Southbound #9 1998『Cozy』
The Markets/Out Of Limits 1964 *1
Bruce & Terry/Summer Means Fun 1964 *2
The Pyramids/Penetration 1964 *3
The In Crowd/Speed Queen 1966 *4
The In Crowd/Cry Cry Cry 1966 *4,5
The Ho-dods/Legends 1963 *6
The Ventures/Fugitive 1964『The Fabulous Ventures』*7
The Dakotas/The Cruel Sea 1963 *8
山下達郎/I Do 1993 Single c/w「Magic Touch」*9

*1 スタジオミュージシャンが作った実態のないグループ。全米3位。
*2 先週も登場したBruce JohnstonとTerry Melcherのユニット。
作曲はP.F.SloanとSteve Barri。
*3 California州Long Beachの5人組。全員スキンヘッドで演奏する。全米18位。
ワンヒットワンダー。BassistのSteve Leonard作曲。Venturesでも有名。
*4 約20年前のNHKサウンドストリートでの特集で「The Girl In Black Bikini」
(ボーカル物)を掛けた。
NashvilleのHickoryレーベル。Produce/作詞/作曲はJimmy Duncanで、
おそらくDancan自身が歌っている幽霊グループ。
*5 「Speed Queen」のB面。
*6 Imperialから2枚だけシングルを出したインストグループ。
Lou Josie作曲。ProducerはJimmy King(Lou Josieの変名)。
*7 邦題「逃亡者」。Lou Josieの作曲。
*8 イギリスのインストグループ。Billy J. Kramerのバックバンドとして有名。
Venturesで知られる「The Cruel Sea」のオリジナル。
GuitaristのMike Maxfieldの作品。全英18位で唯一のヒット。
*9 現在アルバム未収録。2002年秋の『Rarities』に収録予定。
Brian WilsonとRoger Christianの共作。オリジナルはCastells(prod. by
Brian Wilson)。アレンジはBeach Boysのバージョンを参考にしたとのこと。
山下達郎一人で全部の楽器とコーラスを担当。

一節
My Special Angel (Bobby Helms)
String Along (Rick Nelson)

内容

・『Rarities』

「私はお陰様ですこぶる健康で、スタジオ仕事をやっております。先々週辺りか
らポツポツと申し上げましたけど、突然決まりましたが、私が所属しております
Warner Music Japan、私はMoonレーベルというところで20年間活動しておりま
すが、Warnerで20年間の間に沢山シングルやアルバムを出しておりますが、シ
ングルというのは兎角カップリングがありまして、ハッと気がつくと。もうそれ
がアルバム化されないままにうっちゃって置かれる、それがもう20年分たまっ
ております。そうした所謂B面コレクションと申しますか、未アルバム化のレア
音源、そうしたシングルのカップリング、未発表のセルフカバー、それからライ
ブ音源もシングルのカップリングには随分あります。そういう物を入れるだけ、
お時間まで(笑)入れられるだけ入れて。10/30が今のところ予定ですが、タイト
ルは『レアリティーズ』。次のニューアルバムまでのつなぎという感じですね。
数年前だったらそんなこと考えられなかったんですけど、大分テンポがよくなっ
てまいりました。今そういう奴の音源を集めて、スタジオで検討して、これは使
えるか、これはミックスダウンしなおさなきゃなんないか、これは手を加えるか
どうするか、そういう感じですね。今一生懸命やっております。まぁスタジオは
涼しいですけど、夏なのに日に当たらないので又肌が白くなっていく今日この頃
です。モグラ生活の中ですが、頑張ってやってみたいと思います。」

・Out Of Limits

「当時の宇宙旅行ブームを反映して、SFが凄く力を持った時代なので、そうし
たテレビ番組、「トワイライト・ゾーン」日本では「ミステリー・ゾーン」と言
いましたが、後は「アウターリミッツ」とかが流行っていた時代であります。そ
うしたスペースサウンド物の大ヒットナンバーです。」

・Summer Meens Fun

「作曲はP.F.SloanとSteve Barri、後のDunhillの黄金コンビ。この頃はまだ
Surfin'/Hot Rod。自分達のFuntastic Baggiesなんていうのもやっておりまっ
た。たった3年後にはフラワー・ムーブメントになってしまう。その変わり身の
早さ。まあいいや。」

・The In Crowd

「いきなりオタクな世界になりますが。1966年の「Speed Queen」というシング
ルは、HickoryというNashvilleのレーベルでして、Californiaのグループでは
ありません。60年代中期にBeach Boysを代表とするSurfin' & Hot Rodが一世
を風靡しまして、それの影響で南部やNYでもSurfin' & Hot Rod紛いのものを出
すようになりました。このThe In Crowdもそういうグループだと思います。曲
を書いてProduceをしているのがJimmy Duncanという人で、多分Jimmy Duncan
が自分で歌っている幽霊グループだと私は想像します。Jimmy Duncanというと
作曲家で、一番有名な曲がBobby Helmsの「My Special Angel」。Voguesもや
っているあれです。あとRick Nelsonの「String Along」も確かそうです。」

「(「Speed Queen」を掛けて)完全にHot Rod Songで一発当ててやろうという
あざとさが見え見えの、Beach Boysの「Shut Down」や「Little Honda」とか
の断片がどんどん登場します。このThe In Crowdという名義で10枚以上シング
ルがあります。このHickoryレーベルからは2枚出ていて、私はこれとMusicoか
ら出ている奴を持っていますが。全部このJimmy Duncanの作詞作曲プロデュー
スなので、たぶん当てに行っている。Nashvilleはこういう幽霊グループ得意で
すから。」

「実はこのシングル、B面がいいんですよ。これがね、聞くと笑えるんです。
(「Cry Baby Cry」を掛けて)Beach Boysの『All Summer Long』を聞きながら
曲を書いたとしか思えないような一作。でも途中からBrassが入ってくる。金は
掛けてんです、結構ね。かすりもしなかった一作でございます。」

・Bruce Johnston関連Q&A

 Q: Bruce Johnstonが曲を出すときに、なぜいろいろと名前を使ったのかという
点が疑問に残りました。日本では何曲か出して売れないと芸名を変えたりし
ますが、彼らの場合はそうでもなさそうです。

「60年代のあの時代はすぐレコードが作れたんですよ。所謂インディですね。
今も日本ではインディが一般化しましたけど。とにかくすぐ作って、もしそれが
ラジオでかかってパッと売れ出したら、すぐにヒットが出るんです。そんな一発
ヒットでも小遣い稼ぎになるので、みんなそうやって幽霊グループを作って、た
とえば作曲家の人ですとスターじゃないんで声だけで出して、適当な名前を付け
て幽霊グループでも当たれば勝ちというそういう時代だったので、後から後から
勝手に名前を付けて出しているという。例えば大瀧詠一さんが、多羅尾伴内とか
厚気羅漢とかいろんな名前を持っているのと、ああいう感じだと思っていただれ
ば。」

Q: Bruce JohnstonがBeach Boysに参加したのは1965年ですか?

「そうです。1964年の終わりにBrian Wilsonがツアーの途中で精神的に壊れて
しまい、ツアーに参加できなくなったので1965年にGlen Campbellが少しやった
後に、Bruce JohnstonがBassistとして参加して、そのままBeach Boysのメン
バーになりました。」

Q: Bruce Johnstonのアルバムが現在発売されているのですか?

「いわゆるソニーが扱っている『Surfin' 'Round The World』や『Going
Public』と70年代のアルバムとかは今はおそらく廃盤だと思います。先日、と
いっても数年前ですけど、60年代初頭にBruce JohnstonがDonna/Del-Fiレー
ベルで仕事をシコシコやっていた、所謂インスト物が大半ですが、そういう仕事
の全仕事のCDというのが数年前に発売されておりますが、あまり聞いて面白い]
もんじゃありませんね(笑)。でもまあセコハン屋とかネットとかでお探しにな
ればあるんじゃないかと思います。」


・The Ho-DadsとLou Josie

「シングルがこのグループ名義では二枚しか出ておりません。Imperialより、
1963年に一枚、1664年に一枚。たったの二枚のシングルですけど、私の凄く好
きなレコード。」

「この曲を書いているのはLou Josieという人で、一番有名なのはBar Kaysのヒ
ット曲で「Soul Finger」なんていうのがあります。あとGrass Rootsの「
Midnight Confession」。日本ではもっと有名なのがVenturesの「逃亡者
(Fugitive)」。プロデュースしているのがJimmy Kingで、これ最近の資料で段
々判ってまいりましたが、実はこのJimmy KingはLou Josieの変名で、自分で書
いて自分でプロデュースしている。これも結局スタジオミュージシャンでやった
曲だと思われます。ご存知の通り、Venturesの「逃亡者」という曲は、元々は
Mel TaylorがLou Josieと一緒にセッションをやる中でこの曲を知って、
Venturesの方に持ってきたといういきさつがあります。このHo-Dadsもひょっと
したらMel Taylorが叩いているんじゃないという説も大きくあります。来週も
う一枚のシングルをおかけしようと思います。」

「私は十代の頃から所謂作家オタクで、この曲を作っているのが誰かというのが
一番の興味の対象でした。Venturesは私の青春の、中学校からのアイドルでし
たが、「逃亡者」という曲は1964年の『The Fabulous Ventures』というアル
バムに入っていて、この曲が死ぬほど好きで、一体この曲を作ったLou Josieっ
ていうのはどこのどなた様なんだろと、長いこと色々調べておりますと、
Ho-Dadsの二枚のシングルの4曲全部このLou Josieの作品でして、この辺から
きっとMel Taylorと繋がってるんだろうなと想像が掻き立てられます。」

今後の予定

・8/11も「Surfin'/Hot Rod/エレキ・インスト特集」
・8/18,25は竹内まりやさんを迎えて「納涼夫婦放談」
・「リクエスト特集」は9月に。
・次回の「わがリク」は秋口の予定。


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