達郎書き起こしプロジェクト by ロック軍曹とサーカスタウン

2000/03/05 Sunday Song Book「Curtis Mayfield 追悼特集 Part 2」



Curtis Mayfield/Move On Up 1970『Curtis』*1
Curtis Mayfield/Superfly 1972『Superfly』*1,2
Curtis Mayfield/Back To The World 1973『Back To The World』*1
Curtis Mayfield/Pusherman(LIVE) 1972/7/6 Radio City Music Hall *3
The Staple Singers/Let's Do It Again 1975『Let's Do It Again』*4,5
Aretha Franklin/Something He Can Feel 1976『Sparkle』*4,6
Curtis Mayfield With Linda Clifford/Between You Baby And Me 1979『Heartbeat』
Curtis Mayfield/Billy Jack 1975『There's No Place Like America Today』

*1 ゴールドディスクアルバム。
*2 全米No.8ヒット。全米No.1アルバム。
*3 『Superfly』収録曲。このLiveテイクの収録アルバム不明。
*4 作曲、プロデュースともCurtis Mayfield。アレンジはCurtisのパートナーの
Richie Tufo。
*5 Sidney Poitier主演の同名映画サントラより。全米No.1。
*6 ソウルチャートNo.1。ギターはPhilip Upchurch。

一節
Move On Up(のギターパッセージ)
Pusherman(のギターコード)

内容の一部(鈎括弧内は達郎氏のコメント)

・近況

「コンピュータがぶっこわれた。セットアップが大変で昼夜逆転の生活。住所
録、原稿、番組の資料などが全部入っていて、データはバックアップしてある
が、それを元に戻すのが大変。丸一週間お疲れで、今週は休ませてもらう。
PS2でもやりながら。」

・業務連絡

オンスト0のCD盤はマスタリング終了し、現在プレス段階。

「予想を遥かに越える応募が来たのでプレスに時間がかかってしまい、下手す
ると最終的にお届けするのが4月末になる可能性がある。ご迷惑をおかけする
が、気長にお待ち下さい。まだ来ないとクレームを頂いても、羊のおなかをさ
すっても子供は出来ない。比喩が全然違うな(笑)。その替わりにスタッフの誰
もが「え?こんなに入れるんですか?」というぐらい入ってます。これで送料
400円は安いというぐらい。」

・特集の内容

昨年12月に57歳で亡くなったCurtis Mayfieldの追悼特集。後編は70年代のソ
ロワークを中心に。

「70'sはソロミュージシャンとして数々の名作を放っているが、70'sのブラッ
クミュージックは一曲が長い。それまでの2分半のヒットソングから脱却して、
ステージを長くしたり、エンターテイメントとか本当に意味での音楽表現へと
移行していく時期なので、一曲が物凄く長い。だから先週以上に今週はなめる
なんてもんじゃない。ちょっと、こする程度。」

「70'sになり、CurtisはImpressionsを脱退し、ソロシンガーへと独立する。
Curtisのような裏声で歌うシンガーはなかなか50'sから60's頭まではソロとし
て成立しにくいとされてきた。60'sにCurtisとSmokey Robinsonというとにか
く歌のうまい人が登場して、それに並行してレコーディング技術やステージの
PA技術が発展し、こうした細い声の人でもバックのオーケストラと張り合える
システムが完成した。それによりCurtisやSmokeyのような人が出てくるのも歴
史の必然であった。」

「1970年にその名も『Curtis』という1stソロアルバムを出した。丁度この頃
高校生で、私はImpressionsにはまっていたから、当時日本盤を買いました。
コロンビア。新宿の帝都無線で買いましたけど(笑)。見開きジャケットで、今
でも持ってます。今結構高いです。んなこたどーでもいい(笑)。B面1曲目の
「Move On Up」がとにかく好きで、当時はLed ZeppelinやDeep Purpleなどの
ハードロックが全勢だったけど、そういうのと全然違うギタースタイル。細か
いストロークのパッセージが延々繰り返される。James Brownもそうだが、と
ても新鮮だった。一生懸命コピーして、これから自分のギタースタイルが始まっ
た。この曲は翌71年にイギリスでシングルカットされて、これがかなりヒット
した。その影響で私と同じ世代のPaul Wellerなどがイギリスでカバーする流
れが生まれてくる訳。」

「70'sのCurtisは毎年どんどん意欲的に作品を発表する。60'sと同様に政治的
メッセージが、激化するベトナム戦争を背景に過激になっていく。2ndアルバ
ム『Roots』が1971年。そして翌1972年の3rdオリジナルアルバムはサウンドト
ラック。全員黒人の出演者であるいわゆるブラック・シネマという流れ。
『Superfly』というこの年大ヒットした映画のサントラを手掛けた。ここから
シングルカットしたタイトル曲は大ヒットし、今持って一番有名な曲。今聞い
ても素晴らしいグルーヴ。」

「1968年に自分のCurtomレーベルを作り、ずっとそこから作品を出し続けたが、
その年はMartin Luther King師が暗殺された年で、この頃からいわゆるブラッ
クパワーが音楽的に炸裂する。Sly & The Family Stoneがデビューしたのも、
James Brownが「Say It Loud, I'm Black And I'm Proud」という異常にアジ
テートに満ちた曲を発表したものこの年。1969年にWoodstockがあり、1970年
代になるとブラックミュージックが、それまでのエンターテイメントとは全然
違う形で、音楽的にも思想的にもまさしく噴出していく。そういう時代を最も
よく担っていた一人がCurtis Mayfield。それを反映して毎年すばらしい作品
を作り続ける。1973年の『Back To The World』も死ぬ程聞きました。タイト
ル曲はベトナム帰還兵をテーマに歌った大変重い内容ですが、素晴らしいグルー
ヴであります。世紀の名作。」

「ChicagoのR&BというのはJazzの影響が強いので、RockやR&B全体が8ビートに
なっていた60'sでもスウィングし続ける。スウィングビートの16ビートという
のが続いている。「Back To The World」もスウィングする跳ねたビートの曲
で、この跳ねたビートは一体何なんだろうなと、この辺が20歳になりミュージ
シャンになったばかりの自分に強烈に響きました。このアルバム、結構人生決
まった一枚という感じ。」

「レコーディングも沢山やっているけど、この時期のCurtisはライブも沢山こ
なしている。それまでのボーカルグループのエンターテイメントショーじゃな
くて、Jazzの要素やImprovisationなどで長い曲の展開になり、ブラックミュー
ジックに限らずロックもステージ全体が長時間での演奏へと変化するようにな
る。そういう中でバンドをきっちり持って、レコードと全く同じ音をライブで
出すという、これがこの時代のCurtisの大きな特徴。従ってCurtisの真骨頂は
スタジオレコーディングよりもライブパフォーマンスの音になると昔から考え
ている。次のライブバージョンは1972年で、丁度『Superfly』を出した頃の全
盛期のパフォーマンス。ほぼレコーディングと同じメンバーによる演奏。
13thのコードの繊細さがたまらない。」

「60'sと同様に人のプロデュースや作品提供をしているが、1968年に作った
Curtomレーベルがある程度成功しているので、70'sの方がヒットが大きくなっ
ている。システムが良くなったのと、ミュージシャンとのコミュニケーション
がよくなっているのが音を聞くとわかる。プロデュースはCurtis、アレンジは
Richie Tufo、先程の素晴らしいギターはPhilip Upchurch。何も言う事が無い。
20代で私がバンドを始めたころの先生。」

「前半はアップテンポやミディアムばかりだったが、Curtisはやっぱりバラー
ドを聞かなくちゃいけない。80'sに近付くとベトナム戦争が終わって政治性が
薄れるようになり、ラブバラード路線が多くなる。こうした中にも良い曲が沢
山並んでいる。デュエットしているLinda Cliffordは、この頃Curtisが作曲や
プロデュースなどで手掛けた女性シンガー。」

「55分ではこの程度が限界だなというか。それでも全盛期のCurtisはだいたい
なめる程度で紹介できたし、言いたいことも大体言えたのでいいかなという感
じ。2週間じゃとても伝え足りないけど、非常に偉大なアーティストで、私が
最も影響を受けたアーティストです。遅巻きながら御冥福をお祈り申し上げま
す。」

「今回、この特集に際して日本で精力的に出されている日本盤CDのライナーを
バッと読んでみますと、もうちょっとなんとかなんないのかなという感じがい
たしますね。お若い方が書いているので無理ないかと思いますが、Curtisの音
楽に、今流行のメローグルーヴとか、ダンサブルとか、ストリート感覚とか、
そういううわべの言葉は全然似合わないと思うんですけど。年寄りの繰言かも
しれませんが、もうちょっとわかっている人に書いてもらいたいなという気が
いたします。」

「最後にお聞き頂くのは、私がCurtis Mayfieldの全作品の中で最も好きな、
私の全人生で最も好きな音楽の一曲であります。つらい時悲しい時、何十回と
なくこの曲に慰められました。私にとって欠けがえのない一曲であります。」

今後の予定ですが

・3/26は「盗作・パクリ・似たもの特集」
達郎氏曰 「ジャーナリズムにありがちな、ちょっと揶揄した、「あれってあ
れのパクリなんだ」とかいう意地悪な企画じゃありません。しからばどういう
企画かというと私にもわかりません(笑)。やってみないとわからない。」



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