2023.01.17 - Songwriter
Giving Up On Love Giving Up On Love
Jerry Goldstein-Bob Feldman-Richard Gottehrer

(1963)

(2023年1月8日SSB「新春放談」で、Aki Aleong "Giving Up On Love"、 2023年1月15日SSB「棚からひとつかみ」で、Jerry Butler "Giving Up On Love" がかかりましたので。)

Songwriterシリーズ
今回はソングライターチーム、Jerry Goldstein-Bob Feldman-Richard Gottehrer を取り上げます。

Goldstein-Feldman-Gottehrer はいわゆる Brill Building 系のソングライターチームでアイドルからソウル、ビートポップなど幅広い分野を手掛けたチームです。チーム解散後も各々、レコード業界の幹部、プロデューサーとしてレコード業界に貢献した人達です。

まずは2023年1月8日SSB『新春放談』でオンエアされた "Giving Up On Love" をもう一度、聴き比べてみましょう。

Giving Up On Love (Jerry Goldstein-Bob Feldman-Richard Gottehrer) / Aki Aleong (1963)

Giving Up On Love (Jerry Goldstein-Bob Feldman-Richard Gottehrer) / Jerry Butler (1964)

1963年、Aki Aleong バージョンは、ニューヨークを拠点とした制作元の Vee Jay Records としては珍しく西海岸の Gold Star Studios で録音され、アレンジャー等の記載がないので詳細不明ですが、バックボーカルは、The Blossoms(Fanita James、Darlene Love、Gracia Nitzsche / Jack Nitzsche の奥様)のようです。アレンジ含め素晴らしい出来栄え。
翌年の1964年に同じく Vee Jay Recordsから Jerry Butler がこの曲を取り上げ、Billboard Hot 100 の56位となります。このシングルもアレンジ等の記載がないですが、東海岸録音だと思います。

これまで Goldstein-Feldman-Gottehrer の楽曲は「明るい!快活!わかりやすい!」というイメージがあったのですが、2012年7月8日SSB「棚からひとつかみ」でオンエアとなった以下の曲を聴いて、幅広い分野で楽曲制作してきたソングライターチームなんだと今までのその考え方が変わりました。

The Drifter (Jerry Goldstein-Bob Feldman-Richard Gottehrer) / Ray Pollard (1965)

The Wanderers という東海岸の Doo Wop グループ出身の Ray Pollard に提供したナンバー。1965年、United Artists Records からのリリースです。アレンジを担当したのは初期の Philles Records などでも活躍していた Arnold Goland。奥深いメロディで Goldstein-Feldman-Gottehrer の作品で一番好きな曲。




Jerry Goldstein と Bob Feldman は2人とも1940年ニューヨーク生まれ、同い年です。2人は幼なじみで近所には、Neil Diamond や The Tokens の Margo 兄弟たちが住んでいました。彼らが10代の頃は Doo Wop が流行っており、2人はハーモニーを練習、一緒に歌うようになりました。彼らは、Bob & Jerry、Bobbi & The Beaus 、Ezra & The Ivies、The Kittens といったグループを名乗り、地元のマイナーレコードからシングルをリリースするようになります。2人は音楽出版社の待合室で、Richard Gottehrer と出会い、ソングライターチーム、Goldstein-Feldman-Gottehrer として、楽曲提供、プロデュース活動を開始します。

楽曲提供、プロデュース活動活動の中で、ニュージャージーで結成した3人ガールグループ、The Angels を手掛け、1963年に提供した "My Boyfriend's Back" が US Billboard Hot 100 の1位となり、3人は人気ソングライターチームとなります。

Goldstein-Feldman-Gottehrer の楽曲提供、プロデュース活動を続けながら、イギリス勢ビートグループの台頭を意識して、グループ、The Strangeloves を結成。1965年、Bert Berns と共作した "I Want Candy" がヒットします。

同年、3人は The Strangeloves の活動中、Rick and the Raiders というグループに出会い、このグループのギター、リードボーカルの Rick Derringer に将来性を見い出し、The Strangeloves として録音済みだった楽曲、"Hang On Sloopy" に Rick Derringer のボーカルを乗せて録音。この曲をイギリス勢ビートグループの対抗グループ、The McCoys として売り出してヒット、成功を納めます。この曲は元々、1964年、Bert Berns と Wes Farrell が黒人ボーカルグループ、The Vibrations に書いた "My Girl Sloopy" という曲です。

3人は1970年代に入っても音楽業界の様々な分野で重要な役割を果たしていきます。

Jerry Goldstein はグループ、WAR を見出し、イギリスの The Animals に在籍していた Eric Burdon との間を取り持ち、Jerry Goldstein がプロデュースを担当し1970年に Eric Burdon and War として、1970年にアルバムデビューさせます。

Bob Feldman は1960年代に楽曲提供してきた Dion や The Belmonts などのプロデュースに関わり、1990年代はナッシュビルで活動。

Richard Gottehrer は1966年に Sire Records を設立。このレコード会社から次世代のミュージシャン、Blondie、Madonna、Ramones、Talking Heads などがレコードリリースしていきます。

Doo Wop 時代から彼らの楽曲を順を追って聴いていきたいと思います。


Losing Game (Jerry Goldstein-Bob Feldman) / Bobbi and The Beaus (1959)

Jerry Goldstein と Bob Feldman が10代の頃、組んでいた Doo Wop グループで2人が作った初期の作品です。女性ボーカルをフィーチャーしたナンバーになっています。

Dreamy Eyes (Jerry Goldstein-Bob Feldman) / Bob and Jerry (1961)

Jerry Goldstein と Bob Feldman の2人によるデュオ、このシングルのA面は、"We're The Guys (Who Drive Your Baby Wild)" という曲で、Barry Mann の " Who Put The Bomp" の詩違いの曲。Barry Mann 含め、 Brill Building で多くのソングライター達とも交流があったと思います。


My Boyfriend's Back (Jerry Goldstein-Bob Feldman-Richard Gottehrer ) / The Angels (1963)

1963年、ガールグループ、The Angels に提供。US Billboard Hot 100 の1位を獲得。アレンジャー、Leroy Glover 中心に Al Gorgoni (Gt.) などニューヨークの名うてのミュージシャンが演奏。ここでトランペットを吹いていた Ronnie Dioという青年は、のちに Ritchie Blackmore's Rainbow や Black Sabbath などを渡り歩くことになるヘビーメタルのゴットファーザー、Ronnie James Dio になります。


Thank You And Goodnight (Jerry Goldstein-Bob Feldman-Richard Gottehrer ) / The Angels (1963)

以降、Goldstein-Feldman-Gottehrer は The Angels のプロデュースで成功を納めますことなりますが、様々なスタイルの楽曲を提供していきます。その中でも特に好きな可愛らしいナンバー。アレンジを担当したのは Alan Lorber。


A Letter From Betty (Goldstein-Feldman-Gottehrer) / Bobby Vee (1963)

Bobby Tomorrow (Goldstein-Feldman-Gottehrer) / Bobby Vee (1963)

3人は西海岸の Liberty Records の Bobby Vee にも優れた楽曲を提供、プロデューサー、Snuff Garrett の信頼に応えています。2曲とも同時期、Carole King らが提供した楽曲などにに劣らない出来栄えです。2曲ともアレンジは Ernie Freeman。


Ten Lonely Guys (Jerry Goldstein-Bob Feldman-Richard Gottehrer-Cliff Adams-Eddie Snyder-Larry Weiss-Lockie Edwards Jr-Neil Diamond-Stanley Kahan-Wes Farrell) / Ten Broken Hearts (1963)

最後に1963年、Diamond Records からリリースされたこのカントリー調のこの曲を。Ten Broken Hearts とは1960年代初頭、Goldstein-Feldman-Gottehrer 初め、ニューヨークの Brill Building周辺で活動を開始した10人の若きソングライター達が組んだグループ。メンバーは以下の通り。
Jerry Goldstein
Bob Feldman
Richard Gottehrer
Cliff Adams
Eddie Snyder
Larry Weiss
Lockie Edwards Jr
Neil Diamond
Stanley Kahan
Wes Farrell

その後彼らは切磋琢磨して多くの楽曲を創り出していくことになります。この曲は作者の1人である Neil Diamond や Pat Boone が歌い継ぎました。


* Bob and Jerry(Bob Feldman 左、Jerry Goldstein 右)と Barry Mann


* The Strangeloves(左から、Richard Gottehrer、Jerry Goldstein、Bob Feldman)




(富田英伸)

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