2022.12.10 - Songwriter
Runaway Runaway
Vincent Montana

(1977)

(2022年12月4日SSB「リクエスト特集」で、Salsoul Orchestra "Runaway" がかかりましたので。)

Songwriterシリーズ
今回は Vincent Montana を取り上げます。

Vincent Montana は1960年代後半からフィラデルフィアで活躍したヴィブラフォン奏者、そしてアレンジャーです。今回は、Vincent Montana の作曲クレジットのある楽曲を中心に聴いていきたいと思います。

Vincent Montana は1928年、フィラデルフィア生まれ。10代の時、ドラムスを始め、その後、マリンバ、ヴィブラフォンなどの打楽器を演奏するようになりました。1940年代にはジャズマンとして活動し、1950年代後半辺りから地元、フィラデルフィアでスタジオミュージシャンとして活動することになります。主に Cameo Parkway Records のスタジオで働き、初期に参加した作品には、Frankie Avalon の1959年のヒット曲 "Venus" などがあります。

Cameo Parkway Records のスタジオのチーフエンジニアの Joe Tarsia が1967年に新たにフィラデルフィアに Sigma Sound Studios を設立すると、Vincent Montana もその Sigma Sound Studios のハウスミュージシャンとなります。Sigma Sound Studios のリズムセクション、主に、Norman Harris(G.)、Ronnie Baker(B.)、 Earl Young(Dr.)で、いわゆる Baker-Harris-Young との交流も始まります。そして、Kenny Gamble、Leon Huff、そして Thom Bell らがプロデュースする作品のセッションに参加するようになります。

Vincent Montana はヴィブラフォン演奏だけでなく、The Ethics、Cissy Houston、Barbara Mason、The Futures、The Delfonics といったミュージシャンの楽曲アレンジを手掛けるようになります。

Kenny Gamble と Leon Huff が1971年に Philadelphia International Records を設立すると、Baker-Harris-Young とともに レーベルのオーケストラグループ、MFSB のメンバーとなり、"T.S.O.P. (The Sound of Philadelphia)" で一斉を風靡することになります。

1970年代中期、ディスコミュージックが流行してくると、1975年、ニューヨークに Salsoul Records が設立。Vincent Montana はそのレーベルに誘われ、The Salsoul Orchestra を結成します。基本リズムセクションには MFSB から Baker-Harris-Young も参加。同年アルバム『The Salsoul Orchestra』がリリースされます。 Salsoul Orchestra の音楽スタイルはディスコとラテンのミクスチャーでした。

その後、Vincent Montana は The Salsoul Orchestra から離脱。The Salsoul Orchestra は Tom Moulton や Patrick Adams がサウンドプロデュースを引継ぎ、録音拠点はニューヨークになりました。

"The Godfather of Disco" と呼ばれた Vincent Montana は2013年、85才で亡くなりました。


You've Got To Try Harder (Times Are Bad)(R.B. Walker-Vincent Montana, Jr.) / Ronnie Walker(1974)

Vincent Montana が The Salsoul Orchestra を手掛ける前に制作したディスコ曲。歌っている Ronnie Walker との共作です。アレンジも Vincent Montana。こういう楽曲制作により、ニューヨークの Salsoul Records から声がかかったのかも知れません。


Standing And Waiting On Love(Floyd Smith-Vincent Montana, Jr.) / The Salsoul Orchestra(1976)

The Salsoul Orchestra の1976年のアルバム『Nice 'N' Naasty』から。共作者の Floyd Smith は後述する Loleatta Holloway の夫です。スピード感ある切れ味良いサウンド。


Merry Christmas All( Andy Kozak-Vincent Montana, Jr.) / The Salsoul Orchestra(1976)

1976年リリースのクリスマスアルバム『Christmas Jollies』から。歌っているのは Denise Montana という Vincent Montana の娘さんです。とても可愛らしいクリスマスナンバー。クリスマスっぽいベルや鈴も Vincent Montana,が担当しています。


Dance A Little Bit Closer(Vincent Montana, Jr.) / Charo & The Salsoul Orchestra (1977)

1977年、Charo And The Salsoul Orchestra『Cuchi-Cuchi』から。歌っているCharo という女性はスペイン系アメリカ女性クラシック ギタリストで、ラテンバンド・リーダーの Xavier Cugat の奥様とのこと。Vincent Montana 単独クレジット曲です。


Runaway(Vincent Montana, Jr.-Janice Gugliuzza-Ronnie James) / The Salsoul Orchestra Feat. Loletta Holloway(1977)

1977年リリースのアルバム『Magic Journey』から Loleatta Holloway をボーカルにフューチャーしたナンバー。同年、Loleatta Holloway はこのアルバムと同じスタッフでアルバム『Loleatta』をリリースしています。間奏に Vincent Montana の素晴らしいヴィブラフォンを聴くことができます。軽快なリズムギターはこの曲の共作者で Salsoul Orchestra のギターリスト、Ronnie James が弾いていると思います。




ここからはヴィブラフォン奏者 Vincent Montana として、演奏に参加している楽曲を聴いていきたいと思います。Sigma Sound Studios で制作された楽曲で、ヴィブラフォンが登場したら、殆どが Vincent Montana が弾いていると思います。いわゆるディスコバージョン、ロングバージョンと言われる12インチシングルバージョンの間奏で Vincent Montana の素晴らしいヴィブラフォン・ソロを聴くことができます。今回はこの2曲を。


Be Thankful For What You Got(William DeVaughn) / William DeVaughn(1974)

1974年の William DeVaughn のデビュー曲。プロデューサー、アレンジを担当したJohn Davis はこの曲の間奏に Vincent Montana のヴィブラフォンを持ってきます。John Davis のオルガンとても良くマッチしています。スムーズなリズムに流麗なヴィブラフォンに酔いしれます。
演奏メンバーは以下の通り。
Earl Young (Drums)
Ronnie Baker(Bass)
Norman Harris (Guitar)
Larry Washington (Congas)
John Davis(Organ)
Vince Montana (Vibraphone)


I'm in Heaven(Melvin and Mervin Steals) / Touch Of Class(1976)

1976年、The Spinners の "Could It Be I'm Falling In Love" などで知られるSteals Brothers が Touch Of Class に提供した楽曲。プロデュースとアレンジは、先と同じく John Davis 。Steals Brothers 得意のリズムパターン、後半に Vincent Montana のビブラフォンが登場。体が自然と横に揺れていきます。



* 若い頃の Vincent Montana



(富田英伸)

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