2022.11.17 - Songwriter
It's Christmas Time It's Christmas Time
Anita Kerr

(1971)

(2022年11月13日SSB「リクエスト+棚からひとつかみ」、Anita Kerr 追悼で Anita Kerr Singers "All This" がかかったので、2017年6月12日、Anita Kerr をアップグレードします。)

Songwriterシリーズ
今回は Anita Kerr を取り上げます。

Anita Kerr は主にコーラスのアレンジャー、シンガーとして広く知られている人ですが、今回はソングライターの側面から、Anita Kerr の楽曲を聴いていきたいと思います。1950年代から現在まで活躍してきた大ベテランの女性です。簡単に概略から。

Anita Kerr こと Anita Jean Grilli は1927年、テネシー州メンフィスでイタリア系移民の一家に生まれました。1947年に Al Kerr という人と結婚し、Anita Kerr と名乗ります。

1950年代から家計を助けるため、ラジオ番組のピアノ伴奏等の仕事をするようになります。その頃、彼女の初のコーラスグループ、The Grilli Sisters を結成。1948年にナッシュビルに移り、ダンスバンド等で歌い始めます。

ナッシュビルのレコードスタジオでも仕事をするようになり、1950年、カントリー歌手兼俳優の Red Foley のバックコーラスを手始めに、様々なシンガーのコーラス及びコーラス・アレンジを担当するようになります。その一部を挙げると、Jim Reeves、Roy Orbison、Brenda Lee、Perry Como、Pat Boone、Bobby Vinton、Willie Nelson 等々で、その多くが "With The Anita Kerr Singers" としてレコード・クレジットされるようになります。この頃は The Anita Kerr Singers 以外に The Anita Kerr Quartet、Living Voices 名義でもレコードをアルバム・リリースしています。

1960年代に入ると音楽の拠点をロサンジェルスに移し、Warner Bros. Records と契約。多くのミュージシャンのコーラス・サポートを行う傍ら、The Anita Kerr Singers、そして、The Mexicali Singers 名義で既存の楽曲中心に多くのアルバムをリリース。この頃になるとコーラスワークはより複雑、洗練さを増していき、グラミー賞も受賞します。

1967年には、Rod McKuen の詩と朗読によるアルバム、The San Sebastian Strings『The Sea』で本格的に曲書きを担当し、アルバムはシリーズ化されます。

1970年代には、ヨーロッパでのライブがきっかけで、スイスに移住。音楽の拠点はロンドンとなります。夫でマネージャーの Alex Grob と一緒に、キリスト教を背景とした音楽活動を行っていくことになります。

Anita Kerr さんは2022年10月10日に94才で亡くなりました。

Anita Kerr さんの経歴をみてきましたが、コーラスとして参加したアルバムは数知れず。Anita Kerr さんが書いてきた楽曲を聴いてみましょう。


It's Christmas Time (Anita Kerr) / The Anita Kerr Singers (1971)

1971年リリースのアルバム、The Anita Kerr Singers『A Christmas Story』は イギリスの Royal Philharmonic Orchestra とのコラボレーションによるクリスマス企画アルバム。Anita Kerr はこのアルバムで多くの楽曲の作曲を行っています。その中でも白眉なこの曲を。Anita Kerr のソロ・ソプラノが素晴らしいです。


I Believe Now (Anita Kerr) / The Anita Kerr Singers (1975)

1975年、ヨーロッパ時代にリリースしたアルバム『Gentle As Morning』から、Anita Kerr のペンによるこの曲を。これも Anita Kerr のソロ・ソプラノ から始まる楽曲。"声"に酔いしれます。


Hello Willem (Dutch TV) / Anita Kerr Singers

ドイツでのTVプログラムのライブの1シーンを。1960年後半は、"Wonderful Summer" の歌唱で知られる Robin Ward こと Jackie Ward が Anita Kerr Singers に参加していました。


'Til i find you (Anita Kerr-Katherine Estes) / Dean Martin (1953)

ここからは、Anita Kerr は歌っていませんが、Anita Kerr が初期に作曲した作品を。

1950年代は Anita Kerr のクレジットはコーラス・クレジットが殆どですが、1953年映画スターでもある、Dean Martin に楽曲を提供しています。ロマンチックな曲です。


Pushing The Clouds Away (Rod McKuen-Anita Kerr) / San Sebastian Strings (1967)

本格的に楽曲制作をするようになるのはこの Rod McKuen とのコラボレーションのアルバムです。この一連のアルバムはロングセラーとなり、日本国内では岩谷時子さんが日本語詩をつけ、石坂浩二さんが朗読。当時の一体型ステレオセットの普及と一緒に、このレコードを持っているご家庭も多かったと記憶しています。


Yestergroovin (Anita Kerr) / Chet Atkins (1970)

1970年にギターリスト、Chet Atkins によるインスト曲。元々は 1969年リリースの Anita Kerr Presents Les Très Guitars『Yestergroovin'』。Chet Atkins はナッシュビルの大物プロデューサーでもありました。プロデューサー時代は音楽スタジオで積極的に Anita Kerr をコーラスとして採用していました。


Anita Kerr が関わったコーラスワークは以下を参照ください。

Magic Voices シリーズ Anita Kerr "Gonna Get Along Without Ya Now"


* The Anita Kerr Singers


(富田英伸)

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