2022.09.19 - Songwriter
Somewhere Somewhere
Jimmy Wisner

(1962)

(2022年9月18日SSB『棚つかリクエスト』で Dee Dee Sharp "Never Pick A Pretty Boy" がかかったので)

Songwriterシリーズ
今回は Jimmy Wisner を取り上げます。

Jimmy Wisner は1960年代、フィラデルフィア中心に東海岸で活躍したアレンジャー、プロデューサーで、数多くのポップス音楽の制作に携わってきました。

今回は Jimmy Wisner が1960年代初期に手掛けた作品、その中でも作曲者としてクレジットが掲載されている作品を聴いていきたいと思います。

Jimmy Wisner は1931年、フィラデルフィア生まれ。子どもの頃からクラシック・ピアノに慣れ親しんでいました。1950年代に地元のジャズバンド、Charlie Ventura And His Orchestra に参加。1959年には自身のジャズトリオ、Jimmy Wisner Trio を結成、同年にアルバム『Blues For Harvey』をリリース。翌年にソングライターチーム、Robert P. Marcucci-Peter De Angelis が興した Chancellor Records からアルバム『Apersepshun』をリリースしました。

1960年、Jimmy Wisner Trio はクラブの仕事でハワイ生まれの女性シンガー、Norma Mendoza のバックを務めました。それが縁で同年、Norma Mendoza のデビューアルバム『All About Norma』がリリース、演奏を Jimmy Wisner Trio が担当しました。収録曲の多くは Jimmy Wisner が書き下ろしました。このレコーディングがきっかけで、Jimmy Wisner と Norma Mendoza は結婚。2人で音楽制作を行うようになります。

1961年、Jimmy Wisner はグリーグのクラシック曲「ピアノ協奏曲イ短調」をホンキートンク風に仕上げ、"Asia Minor" という曲をリリース。演奏者名にはジャズ・ピアニストとしての Jimmy Wisner の名前を伏せ、Kokomo という名義でシングルリリース、これが Billboard Hot 100 の8位のヒットとなります。

同じ頃、スタジオワークを通じて、Doo Wop グループ The Revels に在籍していた Billy Jackson とスタジオで知り合い、ジャズ活動を続ける傍ら、Jackson-Wisner Production を設立、2人で作った楽曲を Cameo-Parkway Records に売り込みをかけるようになります。

Cameo-Parkway Records を拠点にして Billy Jackson 以外に、Jerry Ross、John Madara-David White といったフィラデルフィアのプロデューサーと出会い、彼らにアレンジャーとして厚く信頼され、数多くの楽曲のアレンジを手掛けていくようになります。その後も Jimmy Wisner はプロデューサーとしても東海岸産の良質なポップスを数多く量産しました。

Jimmy Wisner は2018年、86才で亡くなりました。

Jimmy Wisner の仕事の主体は楽曲アレンジャーですが、今回は楽曲制作にも関わった曲を聴いていきたいと思います。聴いてわかる通り、Jimmy Wisner はポップス、R&B のアレンジャーだけではなく、ジャズミュージシャン、作曲者としても才能豊かな音楽家だったことが理解できます。


Dreamy Eyes (Jimmy Wisner-Lennie Niehaus) / Norma Mendoza With The Jimmy Wisner Trio (1960)

Jimmy Wisner と同じ歳であるハワイ生まれの女性シンガー、Norma Mendoza のデビューアルバム『All About Norma』に収録された曲。Norma Mendoza の心がこもった素晴らしいボーカル。そして Jimmy Wisner の繊細なピアノ。このアルバム制作が縁で2人は結婚します。


Somewhere (Jimmy Wisner-Norma Mendoza) / The Tymes (1962)

Somewhere (Jimmy Wisner-Norma Mendoza) / Jimmy Davis And Norma Lee (1964)

Wisner-Mendoza 夫妻は、"So Much In Love" で知られる The Tymes の Parkway Records でのデビューアルバム『Somewhere』に楽曲を提供。指スナップからは始まる曲で、その後誕生する "So Much In Love" を予感させる曲です。このアルバムには"So Much In Love" の作者の1人である、Billy Jackson と Norma Mendoza との共作もあり、このアルバム制作を通じて、Jimmy Wisner と Billy Jackson が出会ったのではないかと想像しています。

1964年、Norma Mendoza が Norma Lee 名義でリリースした Jimmy Davis And Norma Lee 『The Girl From Ipanema』で2人はセルフカバーしています。Norma Lee は Norma Mendoza の娘(前の夫との子ども)の名前、Jimmy Davis は Jimmy Wisner のことです。この頃、流行り始めたボサノバ。Norma Mendoza の優しい歌声が心に響きます。


Sydney's Soliloquy (Jimmy Wisner) / Norma Mendoza With The Jimmy Wisner Trio (1960)

Sydney's Soliloquy (Jimmy Wisner) / Mel Tormé (TV Live)

この曲は元々、1959年の Jimmy Wisner Trio のデビューアルバム『Blues For Harvey』に収録されていたインスト曲ですが、Norma Mendoza のデビューアルバム『All About Norma』で歌詞が追加され新たに録音されました。憂いのある曲調です。
後にこの曲を Mel Tormé が気に入り、1962年のMel Torme『Comin' Home Baby!』でこの曲を取り上げます。今回はテレビライブの様子を。


A Perfect Love (Robert P. Marcucci-Peter De Angelis-Jimmy Wisner) / Frankie Avalon (1960)

1960年、ソングライターチーム、Robert P. Marcucci-Peter De Angelis と共作した楽曲。その2人が設立した Chancellor Records からのリリース。Jimmy Wisner Trio のセカンドアルバムはこの Chancellor Records からリリースされました。こうやって、当時の流行ポップスとの接点で生まれてきます。


The Love That I'm Giving To You (Peter De Angelis-Jimmy Wisner) / Fabian (1961)

1961年、当時のアイドル、Fabian に提供した曲。同じく Chancellor Records からのリリース。Peter De Angelis との共作曲。アレンジも Peter De Angelis 。アレンジにおいて Jimmy Wisner はPeter De Angelis から多くのものを学んだのではないかと想像します。


Love, Love Go Away (Jimmy Wisner-Norma Mendoza) / Bobby Rydell (1963)

1963年、Wisner-Mendoza 夫妻が Bobby Rydell に楽曲を提供。Cameo Records からリリースされました。ジャズ要素もない屈託ない明るいポップスナンバー。Jimmy Wisner は徐々に、ポップス業界に足を踏み入れていきます。


Don’t Throw Your Love Away (Billy Jackson-Jimmy Wisner) / The Orlons (1963)

Don’t Throw Your Love Away (Billy Jackson-Jimmy Wisner) / The Searchers (1964)

ここからは、Billy Jackson とのコラボ作品、Jackson-Wisner Production の作品を聴いていきたいと思います。まずは1963年、女性男性混合グループ、The Orlons に提供したナンバー。Cameo-Parkway Records からのリリース。
翌年、イギリスで The Searchers がカバー。 UK Singles Chart の1位を獲得。Jackson-Wisner Production 作品の中でも一番知られる曲となります。


The Magic of Our Summer Love (Billy Jackson-Jimmy Wisner) / The Tymes (1964)

1964年、The Tymes に提供した楽曲。The Tymes に似合う夏の歌。 Ruby & The Romantics の "Our Day Will Come" を意識した作品になっています。


Never Pick A Pretty Boy (Billy Jackson-Jimmy Wisner) / Dee Dee Sharp (1964)

Jackson-Wisner が1964年、後に Kenny Gamble 夫人となる Dee Dee Sharp に提供した楽曲。Cameo-Parkway Records からのリリース。これも乗りの良い明るい楽曲です。



*写真:Jimmy Wisner(手前でしゃがんでいる人)、Joe Renzetti(Jimmy Wisnerの上、ボーダーシャツに黒縁メガネ)、Joe Tarsia(Joe Renzetti の右、Cameo-Parkway Records のチーフ・エンジニア、後に Sigma Sound Studios を設立。)



* アルバム『The Jimmy Wisner Sound Featuring Love Theme From Romeo And Juliet』 (1969)の裏面ジャケット





(富田英伸)

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