2022.04.04 - Cinema Music Composers
		The Green Leaves of Summer Dimitri Tiomkin (1960)

（2022年4月3日SSB「リクエスト特集」で、Dimitri Tiomkin が書いた Nelson Riddle Orchestra "The Green Leaves of Summer" がかかりましたので）

Cinema Music Composers シリーズ、
ウクライナ生まれの映画作曲家 Dimitri Tiomkin を2回に分けて取り上げます。

Dimitri Tiomkin はウクライナ出身ですが、アメリカ映画黎明期から活躍した映画音楽の巨匠です。
今回はまず1960年の映画『アラモ』（THE ALAMO）の主題歌となった、"The Green Leaves of Summer" をオリジナルサウンドトラックから聴いていきたいと思います。

The Green Leaves of Summer（Paul Francis Webster-Dimitri Tiomkin） From "THE ALAMO" / Dimitri Tiomkin（1960）

映画『アラモ』はテキサス独立戦争中の1836年に実際に起こったアラモの戦いを描いている映画です。

映画では最後のアラモの戦いの前夜にジョン・ウェイン（John Wayne）扮するデイビー・クロケット大佐は仲間から「今、何を考えているんだ？」と問われ、「何も考えちゃいないさ、ただ、思い出しているだけさ。」と答えます。その場面でこの歌 "The Green Leaves of Summer"が流れてきます。
アカペラがとても美しいです。

以前から常々この歌は西部劇に似つかわしくないなあと思っていたのですが、作曲者の Dimitri Tiomkin がウクライナ（当時ロシア帝国）出身者であることで腑に落ちました。

農地や故郷の土地に対する郷愁がウクライナ周辺東ヨーロッパの風景を想起させます。冬から春にかけて荒涼な大地に芽生えてくる美しい緑、夏にかけて若葉から青葉へ、そして秋の収穫。四季と寄り添って生きる家族、友人、恋人達との暮らし....。

1836年の決戦前夜、クロケット大佐も、自分が守るべき国＝故郷を思い出していたんだと思います。その故郷を思う気持ちは180年前のアラモの戦いの時代と、2022年、ウクライナで起きている戦争の今と何も変わっていないはずです。


刈り取りの時
種撒く時
夏の緑の葉が
私を故郷へ誘う


他のバージョンもいくつか聴いてみたいと思います。

The Green Leaves of Summer（Paul Francis Webster-Dimitri Tiomkin） From "Inglourious Basterds" / The Nick Perito Orchestra （1960-2002）

2002年の映画『イングロリアス・バスターズ』(Inglourious Basterds)では冒頭にこの曲が流れてきます。第二次世界大戦中のドイツ国防軍占領下のフランスが舞台。歌詞に合うような美しい田園風景の下この先、悲劇が待ち受けています。
このバージョンは 1960年リリースの The Nick Perito Orchestra のバージョンが使われました、アレンジは Don Costa。


The Green Leaves of Summer（Paul Francis Webster-Dimitri Tiomkin） / The Springfields（1961）

1960年にイギリスで結成されたフォークグループ、The Springfields がこの曲を取り上げました。メンバーの女性、Mary "Dusty" O'Brien は Dusty Springfield と名前を変え、のちにイギリスを代表する女性シンガーとなります。その兄の Dion O'Brien も Tom Springfield と名前を変え、The Seekers が歌った "Georgy Girl" などを作曲していきます。


The Green Leaves of Summer（Paul Francis Webster-Dimitri Tiomkin） / Shelby Flint（1966）

1961年にはフォークボーカルグループ、The Brothers Four がこの曲を取り上げ日本でも広く知られるようになります、フォークに造詣が深い Shelby Flint も1966年のアルバム『Cast Your Fate To The Wind』の1曲目で取り上げました。

Dimitri Tiomkin のバイオグラフィーやその他の楽曲については2回目で。

写真： アラモ（1960）より。ジョン・ウェイン（John Wayne）とリチャード・ウィドマーク（Richard Widmark）

上部写真：ジョン・ウェイン（John Wayne）とその妻 ピラール・パレット（Pilar Pallete） と Dimitri Tiomkin