2022.01.17 - Cinema Music Composers
In the Heat of the Night In the Heat of the Night
Quincy Jones

(1967)

(2022年1月16日SSB「棚からひとつかみ シドニー・ポワチエ+木村拓哉」で、Quincy Jones が書いた "In the Heat of the Night" がかかりました。2022年1月7日に亡くなったシドニー・ポワチエ(Sidney Poitier)は Quincy Jones と縁が深い俳優でした。)

Cinema Music Composers シリーズ
今回は Quincy Jones を取り上げます。

Quincy Jones はジャズミュージシャンでありながら、ポピュラーミュージック界の代表する重鎮プロデューサーです。今回は Quincy Jones が手掛けた映画音楽に焦点を当てて、2回に分けて取り上げていきたいと思います。

Quincy Jones は1933年、シカゴのサウスサイドで生まれました。家族はワシントン州ブレマートンに移住。高校生の時にトランペットを吹き始めたそうです。Quincy Jones が14才の時、まだ16才の無名だった Ray Charles の演奏を観て、大きな衝撃を受け、音楽の道に進むことを決意したそうです。この様子はRay Charles の伝記映画『レイ』(RAY、2004)の劇中で描かれています。

奨学金を得ながら、学校で音楽理論を学び、Lionel Hampton のツアーに誘われ、トランぺッター、ピアニスト、アレンジャーとしてプロの道へ乗り出しました。その後、ニューヨークを拠点に Sarah Vaughan、Dinah Washington といったジャズシンガー達、そして親友、Ray Charles のために多くのアレンジの仕事をこなすことになります。

1957年にパリに定住、そこで再度音楽理論を学び直し、Eddie Barclay が設立した Barclay Records の音楽監督に就任。Henri Salvador、Les Double Six などを手掛け、自身もリーダーアルバムをリリースするようになり、名が知れ渡ります。

1961年、アメリカに帰国後、パリでの実績を得て、Mercury Records の副会長に昇進。1962年は新しい音楽スタイル、ボサノバを取り入れたアルバム『Soul Bossa Nova』をリリース。Quincy Jones は当時の流行音楽やマーケティングにも敏感で、1963年に Mercury Records からデビューすることになったアイドルシンガー、Lesley Gore のプロデュースを手掛けます。デビューシングル "It's My Party" は US Billboard Hot 100 の1位となり、Lesley Gore は Quincy Jones のプロデュースの下、ヒットを連発していきます。その頃、Quincy Jones は映画音楽も手掛けるようになっていきます。Quincy Jones が手掛けた映画音楽の詳細は次回に。


Theme From The Pawnbroker(Quincy Jones-Jack Lawrence) / Marc Allen and Quincy Jones And His Orchestra(1964)

Theme From The Pawnbroker(Jack Lawrence-Quincy Jones) / Sarah Vaughan and Quincy Jones And His Orchestra(1964)

Quincy Jones が最初期に手がけた映画音楽から3曲。1964年製作の映画『質屋』(THE PAWNBROKER)から。シドニー・ルメット(Sidney Lumet)が撮った社会派映画です。Quincy Jones のオーケストレーションの下、ピアノに Dave Grusin、ベースに Carol Kaye、トランペットに Freddie Hubbard、サックスに Anthony Ortega、Oliver Nelson、ハーモニカに Toots Thielemans らが参加しています。ジャズを基調としたクールなサウンドです。旧知の Sarah Vaughan の歌ったバージョンは当時、流行したボサノバのリズムをうまく取り入れています。


Mirage (Vocal Version)(Robert Russell-Quincy Jones) / Quincy Jones And His Orchestra(1965)

1965年の映画『蜃気楼』(MIRAGE)の主題歌。Henry Mancini が書くような美しいコーラス・ナンバーです。エドワード・ドミトリク(Edward Dmytryk)が撮った映画ですが、1968年に映画『浴槽に消えた女』(JIGSAW)というタイトルでリメイクされます。このリメイク作品の映画音楽を担当したのも Quincy Jones でした。


Opening Titles From "THE SLENDER THREAD" / Quincy Jones(1965)

1965年の映画『いのちの紐』(THE SLENDER THREAD)のタイトルバック。空撮から始まる印象的なタイトルバックです。シドニー・ポラック(Sydney Pollack)が撮った"命の電話"にかかってきた自殺願望のある女性と対峙する電話相談員を主人公にした社会派ドラマです。主演は、2022年1月7日に亡くなったシドニー・ポワチエ(Sidney Poitier)です。


写真 : シドニー・ポワチエと奥様のジョアンナ・シムカス(Joanna Shimkus)


Happy Feet(Quincy Jones) From "WALK, DON'T RUN!" / Quincy Jones(1966)

Happy Feet(Quincy Jones-Peggy Lee) From "WALK, DON'T RUN!" / With Don Elliot Voices(1966)

1943年の映画『陽気なルームメイト』(THE MORE THE MERRIER)のリメイクのロマンティック・コメディ『歩け走るな!』(WALK, DON'T RUN!)。舞台は東京オリンピック開催に賑わう日本、タイトル "WALK, DON'T RUN!" の通り、競歩競技を題材にした映画です。主演のケイリー・グラント(Cary Grant)の最終出演作品となりました。主題歌は Peggy Lee が詩を付け、ヴィブラフォン奏者でもある Don Elliott が率いる Don Elliot Voices が歌いました。とてもユーモア感のある軽やかなメロディです。


Who Needs Forever (Howard Greenfield-Quincy Jones) From "THE DEADLY AFFAIR"/ Astrud Gilberto(1967)

1967年のサスペンス映画『恐怖との遭遇』(THE DEADLY AFFAIR)から。原作はジョン・ル・カレの「死者にかかってきた電話」で、旧知のシドニー・ルメットがメガホンを取りました。主題歌はボサノバ調で Neil Sedaka とのチームで知られる Howard Greenfield が詩を付け、Astrud Gilberto が歌いました。レコードは Verve Records からリリースされ、Creed Taylor がプロデュースに就きアレンジは Don Sebesky に託しました。


The Eyes Of Love (BANNING)(Quincy Jones-Bob Russell) / Trini Lopez(1967)

1967年の映画『夜の誘惑』(BANNING)の主題歌。映画の中ではセッションシンガー、サックス奏者の Gil Bernal によって歌われた模様ですが、レコード化されませんでした。今回は Trini Lopez のボーカルで。Don Costa がアレンジを担当しています。心地よい1曲です。


In the Heat of the Night(Alan & Marilyn Bergman-Quincy Jones) From "IN THE HEAT OF THE NIGHT"/ Ray Charles(1967)

In the Heat of the Night(Alan & Marilyn Bergman-Quincy Jones) / Ray Charles(Single Version 1967)

1967年の映画『夜の大捜査線』(IN THE HEAT OF THE NIGHT)。主演はシドニー・ポワチエ。Quincy Jones にとっても映画音楽の代表作となりました。ボーカルは盟友、Ray Charles が歌いました。映画の中で流れたサウンドドラックと後にシングルリリースされた2バージョンを。オルガンは Billy Preston。アメリカ南部の熱い夜の空気が体に染み入ってくるようです。

(次回に続く)


写真 : Quincy Jones、Ray Charles



写真 : Quincy Jones、シドニー・ポワチエ(Sidney Poitier)、ウィル・スミス(Will Smith)










(富田英伸)

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