2020.10.20 - Songwriter
I'll Cry Tomorrow I'll Cry Tomorrow
George Kerr

(1964)

(2020年10月18日SSB「Doo Wop で棚からひとつかみ」で、The Serenaders "I'll Cry Tomorrow" がかかったので)


Songwriterシリーズ
今回は The Serenaders の メンバーでこの曲を作者の1人である George Kerr を取り上げます。

George Kerr はジョージア州オシラ生まれで、ニュージャージー州ニューアークで育ちました。その頃、1人の少年がワシントンDCから、George Kerr の近所に引っ越して来ます。その少年は Sidney Barnes です。Sidney Barnes はワシントンDCに住んでいた頃、高校で若き Marvin Gaye、Van McCoy、Peaches and Herb の Herb Feimster らと The Embracers という Doo Wop グループを組んで歌っていました。Sidney Barnes は Doo Wop グループをもう一度やりたい気持ちが募り、近所に住んでいた George Kerr に声をかけます。そうして結成したのが、Doo Wop グループ、The Serenaders でした。

The Serenaders は1957年、ニューヨークに出来たばかりのマイナーレーベル、Chock Records からデビューします。デビュー曲 "Never Let Me Go" とセカンドシングルとなった "Give Me A Girl" を聴いてみたいと思います。両曲とも George Kerr が楽曲制作に関わっています。

Never Let Me Go(George Kerr-Walters) / Serenaders(1957)

Give Me A Girl(George Kerr-Sammy Lowe) / Serenaders(1957)

The Serenaders はその後、同レーベルから数枚シングルをリリースしましたが、セールスには結び付きませんでした。(Kenny Seymour の項でも書きましたが)1961年、人気のあった Little Anthony and The Imperials のリードボーカル、"Little Anthony" Gourdine はソロ活動のため、The Imperials から一時離れ、ソロデビューします。その時、The Imperials に George Kerr が加入。The Imperials で George Kerr がリードボーカルを採った楽曲を聴いてみましょう。これは Richard Barrett のペンによる曲です。

A Short Prayer(Richard Barrett) / The Imperials feat. George Kerr(1962)

1961年、相方の Sidney Barnes ‎もシングルをリリース、ソロデビューします。しかしここでも好成績を残せなかった Sidney Barnes でしたが、そこで George Kerr を呼び寄せ、設立したばかりの Motown Records の門を叩きます。1964年、復活した The Serenaders は Motown Records の子レーベル、VIP Records から、" I'll Cry Tomorrow " をリリースします。楽曲は George Kerr と Sidney Barnes の共作曲です。

I'll Cry Tomorrow(George Kerr-Sidney Barnes) / The Serenaders(1964)

シングル盤に記載のある "Produced by MISS RAY" とは、Motown Records の主宰、Berry Gordy の妻の Raynoma Liles Gordy のことで、George Kerr とSidney Barnes はその Motown Records の Raynoma Liles Gordy の下で、ソングライター、プロデューサー、タレントスカウトとして働くようになります。George Clinton 率いる Parliaments も2人が発掘したと言われています。

Motown Records で修行した George Kerr はその後、プロデューサーとして独立。Linda Jones、O'Jays、The Escorts 等を手掛けていきます。1970年代以降は Sylvia Robinson 主宰の All Platinum Records などでその手腕を振いました。

Sidney Barnes についても少し触れておきます。1964年以降、Sidney Barnes は J.J. Jackson と言う人とチームを組んでソングライターとして活躍、ミュージシャンとしても Leiber-Stoller の Red Bird Records からレコードリリースしています。その後プロデューサー Charles Stepney からの誘いで、Rotary Connection に参加することになります。

Doo Wop 時代以降、George Kerr が楽曲制作に関わったナンバーを聴いていきたいと思います。


This Is Our Day(George Kerr-Ossman) / Dolls(1965)

まず、George Kerr が手掛けたガールグループを2曲。1965年、Dolls というガールグループに書いた楽曲です。リリース元の Maltese Records はデトロイトのレーベル。クレジットにある Producer – Mr. Lucky とは George Kerr のことだそうです。アレンジは後にインストグループ The Stuff などで活躍することになる Richard Tee が担当。冒頭のピアノも Richard Tee だと思います。音質ちょっと悪めですが、快活でいい曲です。


Last Minute Miracle(George Kerr-Harris) / The Shirelles(1967)

1960年代前半に大活躍していた The Shirelles が1967年に Scepter Records ‎からリリースした作品。アレンジは同じく、Richard Tee が担当。デトロイト Motown に影響を受けたサウンドです。


What've I Done (To Make You Mad)(George Kerr-Hollon) / Linda Jones(1967)

1960年代、Linda Jones は George Kerr が手掛けたミュージシャンの中で最も成功したシンガーでした。1967年にGeorge Kerr がプロデュースしリリースしたシングル "Hypnotized" が U.S. R&B Singles で2位になります。この曲はそれに続くシングルで、George Kerr のペンによる曲で、これも U.S. R&B Singles で8位を記録。アレンジは Richard Tee が担当。スィートソウル然としたナンバーです。Linda Jones は説得力あるシンガーでしたが、1972年、27才で早世。


Look Over Your Shoulder(George Kerr-Larry Roberts) / The Implements(1967)

Look Over Your Shoulder(George Kerr-Larry Roberts) / O'Jays(1968)

Look Over Your Shoulder(George Kerr-Larry Roberts) / The Escorts(1973)

The O'Jays は Philadelphia International Records で活躍する前は George Kerr がプロデュースを手掛けていました。1968年、Bell Records からリリースしたシングル。この曲は前年の1967年にリリースした The Implements がオリジナルのようです。両曲ともアレンジは Richard Tee が担当。
1973年に George Kerr はこの曲を再度取り上げ、プロデュス を手掛けた The Escorts がシングルをリリース。スィートソウル色を強めたアレンジ。アレンジを担当したのは Bert Keyes です。George Kerr が手掛けた曲で一番好きな曲。

* 写真は The Serenaders。写真上が Sidney Barnes、写真下が George Kerr。




(富田英伸)

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