2020.08.02 - Live
TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING
山下達郎

(2020)

木曜夜にあった山下達郎の初ライブ配信、在宅勤務なので何を着ても良い状況をいいことに、朝から達郎のツアーTシャツを着て夜に備えた。前日までに、繰り返し念を押されていた「視聴テスト」を済ませ、大丈夫そうであることを確認。うちはPCも光回線も贅沢なので「観れなかろうはずはない」と思いながらも、指定ブラウザを最新に、Windows Updateのやり残しも念を入れ、ネットのスピードテストも何回もしてしまう(100Mbps OK)。配信は「一度きり、見逃し配信・追っかけなし」なので、こちらの準備不足で見逃すわけにはいかない。真剣度もあがる。自分は「クラッカーの書い忘れ」を毎回会場で思い出す程度の人間なので、はい、これほどライブで事前に入れ込んだのは初めてです。

開演30分前の19時30分ごろ接続。musicslash.jpの指定ページに、eplusで買ったIDとパスワードを打ち込む。画面には「SUPER STREAMING」の文字が表示され、音声には達郎いつもの客入れドゥー・ワップBGMが流れている。そして程なく、これも会場風なアナウンス。録るなの注意事項に加えて、「止まったらリロードしてください」の説明(リロードして良いかは迷う案件なので助かるアナウンス)。開演ベルを経て、20時過ぎ、京都拾得(じっとく)の写真が。氣志團から拾得の順番と勝手に想定しており、おや、と思う。


拾得 京都 - 2018年3月17日

1. ターナーの汽罐車
2. あまく危険な香り
3. 砂の女
4. 希望という名の光
5. Since I Fell For You
5. What’s Going On

「ターナー」で始まる。とにかく音の粒がよく聴こえる。この山下、伊藤、難波の城北トリオのターナーはツアーでも演じられたが、とくにここまで難波のフェンダローズの音を聴けたことはない。「砂の女」あたりでこちらも落ち着き、初めてお酒を口にする。この音で、勝手にゆっくり聴ける。「砂の女」で十分にコンサートの没入感に浸れる。「希望という名の」で満足、と思いきやカバーがさらに2曲。ここまで拾得の5曲で40分くらいだろうか。ここまでの感想、アコースティックライブの配信という方法は極めて良い、向いている。ライブハウスではライブハウスでしか得られないものがあるだろうが、落ち着いて、この三名手のアンサンブルを聴くのにかなりよい方法ではないか。しかも客数に制限がない。拾得では20曲が演奏されたそうで、その中前半から、1曲目の「ターナー」を含め、演奏順もほぼ同じに5曲がピックアップされた。


ライブハウスから、袖ヶ浦の氣志團万博に映像が切り替わる。冒頭の翔のMCからくるとは思わなかった。「実在するのか山下達郎」(翔)。客の気持ちの高ぶりをくすぐる。そして山下達郎登場。黄色のシャツ。氣志團万博のステージに立った。


氣志團万博 袖ヶ浦 - 2017年9月17日

1. ハイティーン・ブギ
2. Sparkle
3. Bomber
4. 硝子の少年
5. アトムの子
6. 恋のブギ・ウギ・トレイン
7. さよなら夏の日


この日は台風で、開催自体が危ぶまれ、直前で選曲を変更して「ハイティーン・ブギ」でスタート。トークも控えめにどんどん押す構成。「Bomber」から鍵盤イントロで繋いで「硝子の少年」、この日会場一番のどよめきだったと記憶。筆者が一番観たかった「ブギ・ウギ・トレイン」。花道に飛び出し、雨中、黄色いシャツが雨と一緒にきらきらひかる渾身のカッティング。翔じゃないけど二度と見れるとは思わなかった。この「ブギ・ウギ」は名演です。そして「さよなら夏の日」。ジャスト40分、予告どおりにノーカット配信だった。氣志團パートは配信クオリティ以前にライブの熱量自体が記憶に残った。氣志團万博2017はWOWOWで後日放送されたのだが、山下達郎の放送はなかった(岡村靖幸も)。翔やんと氣志團ありがとう。

山下達郎の氣志團万博は、こちらにも関連記事があります。


ここまでで、予告されていた70分の配信時間を越えていたのだが、サプライズが。


1. So Much In Love (1986年10月9日 郡山市民文化センター)
2. プラスティック・ラブ (1986年7月31日 中野サンプラザ)

本当に懐かしい時代の山下達郎の登場。ホールの山下達郎がここで出てきて、とどめである。この後バックステージの映像なども流され、まりやさんの登場シーンとか、氣志團の連中と握手していたとか、とても貴重であった。


配信ライブに関して

・チケットは1週間前までに購入

 チケット購入は配信1週間前に締め切られ、これは視聴者数に合わせてサーバを用意するためとされた。サーバの容量不足はインターネット配信が観れない主要因なので、懸命な判断だと思った。他方、直前の購入希望の客を逃すので、それは大丈夫だろうかと余計な心配はした。


・視聴環境

 視聴環境(インターネット環境、端末のOSとブラウザ)には制限が設けられた。視聴テストページが設けられ、テスト映像が表示できない場合はチケットを購入しないように、ということだった。これにより観れない人が出るのは予想されたことだったが、とても興味深いハードルだった。インターネットの配信は「それなりに」という風潮が主流の中、達郎と運営は、売る側が品質を追求するので、買う側にもそれ相応の環境を求めるというきっぱりとしたものだった。


・完全リアルタイム

 完全リアルタイムというのは、リアルタイムでした視聴できない、ということを意味した。すなわち追っかけ・見逃しなどの機能がなく、また録画が禁止され、視聴者側で録画してあとで観ることもできない。その時間に張り付かないといけない点は演奏会ライブと同じで、場所はどこでもよいというのが違う。とにかく「2020年7月30日20時」こっきりだ。筆者は幸いにしてこの時間が確保できたので、このリアルタイム縛りは楽しかった。発表が配信の20日前だったが、在宅勤務をしているということが幸いした。


・配信品質とトラブル

 配信の品質は、上記レビューの通り満足だった。トラブルとしては、一度配信が滞ったことがあった。2、3回止まり、その後固まってしまった。「ブギ・ウギ」のラストあたりだったが、ブラウザをリロードし、すぐに復帰することができた。固まった原因がどこにあったか分析できていないが筆者としては想定内のことで、それもイベントの一部と理解した。一般にインターネット配信は、配信側と受信側が努力をしても、何か起きるので、今回トラブルゼロで視聴できた人がどれくらいいたのかは興味をもった。他のネット配信で見逃し配信があるのは、こういったトラブル対応の意味合いもあるのだが、今回の設定は無茶してるなとの余計な心配をし、こんごどうするかに興味をもっている(個人的には今回の「リアルタイム」は面白かったので、気にせず進んで欲しい)。
 また、今回の営みは、配信者・視聴者だけでなくインターネットにも間接的に品質を期待していたといえる。ネットは「繋がればOK」というユーザ的相場があるようにも思えるが、ネットに品質は必要で、それを求めることも必要だ。
 (8月4日追記)音ズレ(映像と音声のタイミングのずれ)があったようです。筆者は拾得のシーンで少しだけ気になりました(達郎さんのストロークに目がいくので)。友人との会話で確認できたので追記しています。(追記、ここまで)


・リアルタイムと録画コンテンツ

 今回の配信はリアルタイムだが、コンテンツは全て既録(未発表)であった。山下達郎はその狙いを配信直前のラジオ放送(サンデーソングブック7月26日)で、「配信用に企画されたライブではないが、配信用にミックスダウンとリマスターを行った。ネットでのリアルライブにはあまり意味を感じない。配信用にクオリティを確保することが重要。ただし修正とかはしない。」と説明していた。


・参考

(eplus からの公演情報)
公演名:山下達郎「TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING」【MUSIC/SLASH】
会場名:MUSIC/SLASH
公演日時:2020/07/30(木) 20:00視聴開始
席種・料金:視聴券 \4,500×1枚[チケット料金]+\220×1枚[サービス料]
座席:詳細はチケット券面でご確認ください。

(MUSIC/SLASH からの配信スペック情報)
業界最高音品質
·動画 H.264(mp4) 1080p
·音声 AAC-LC 384kbps
※参考 BSデジタルは320kbps
DRM保護
·キャプチャー不可
·ダウンロード不可
·外部機器での収録不可



(たかはしかつみ)

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