2019.03.27 - Magic Voice
An Affair to Remember An Affair to Remember
Marni Nixon

(1957)

Magic Voicesシリーズ、
今回は Marni Nixon を取り上げたいと思います。

Marni Nixon は長年、ミュージカル出身ではない女優達の歌の吹き替えをやった方です。現在、ミュージカル映画ファンの間で Marni Nixon のことは"ハリウッドの影の声"として広く認知されるようになりましたが、1960年代後半頃までは、Marni Nixon の存在を殆どの人は知りませんでした。

Marni Nixon は1930年生まれ。初めて歌の吹き替えの仕事をやったのは『Big City』(1948)、『秘密の花園』(The Secret Garden、1949)の2作に出演した13才前後のマーガレット・オブライエン(Margaret O'Brien)の歌声だったそうです。その時、Marni Nixon は19才前後。

1956年に『王様と私』(The King and I、1956)でデボラ・カー(Deborah Kerr)の歌唱吹替をやります。デボラ・カーと Marni Nixon はスタジオで語りと歌を合わせるために隣同士に寄り添い録音したそうです。翌年の『めぐり逢い』(An Affair to Remember、1957)でもデボラ・カーの歌唱吹替を行いました。この2作品で、 Marni Nixon と デボラ・カーは親交を深め、その後もいい関係が続いたようです。しかし、Marni Nixon の名前は契約上、映画のクレジットに掲載されることはありませんでした。

映画界内部では Marni Nixon の"声"は評価され、『ウエスト・サイド物語』(West Side Story、1961)のナタリー・ウッド(Natalie Wood)の歌唱吹替、『マイ・フェア・レディ』(My Fair Lady、1964)のオードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)の歌唱吹替を行いました。しかしいずれも Marni Nixon の名はノンクレジットです。吹替シンガーの存在と Marni Nixon の名前を世に知らせたのは、親交のあったデボラ・カーだったと言われています。

その後、映画『サウンド・オブ・ミュージック』(The Sound of Music、1965年)では修道女の1人、シスター・ソフィア役で出演、歌声を聴かせてくれます。1970年代からは表舞台で活躍、多くのショーに出演、レコード・アルバムのリリース、子どもたちを中心としたテレビ番組等に出演しました。残念ながら2016年、86才で逝去。

ちなみに Marni Nixon の初婚の相手は『栄光への脱出』(EXODUS、1960)等の映画音楽で知られる作曲家の Ernest Gold で、2人の間に生まれた子どもが2011年、59才で早逝したシンガーソングライター、マルチミュージシャンで知られる Andrew Gold です。


Marni Nixon が歌唱吹替した楽曲のメドレー

Marni Nixon が歌唱吹替をしたものをメドレーで。よくまとまっていると思います。曲目は以下の通りです。

"Getting to Know You"(『王様と私』(1956))
デボラ・カーの歌吹替
"Tonight"(『ウエスト・サイド物語』(1961))
ナタリー・ウッドの歌吹替
"I Could Have Danced All Night"(『マイ・フェア・レディ』(1964))オードリー・ヘプバーンの歌吹替
"Hello, Young Lovers"(『王様と私』(1956))
デボラ・カーの歌吹替
"I Feel Pretty"(『ウエスト・サイド物語』(1961))
ナタリー・ウッドの歌吹替
"Tomorrow Land"(『めぐり逢い』(1957))
デボラ・カーの歌吹替
"Wouldn't It Be Loverly?"(『マイ・フェア・レディ』(1964))
オードリー・ヘプバーンの歌吹替
"Somewhere"(『ウエスト・サイド物語』(1961))
ナタリー・ウッドの歌吹替
"Shall We Dance?"(『王様と私』(1956))
デボラ・カーの歌吹替
"Continué"(『めぐり逢い』(1957))
デボラ・カーの歌吹替


An Affair to Remember (Our Love Affair)(Harry Warren) / Marni Nixon(1957)

【イントロデュース】でも触れた映画『めぐり逢い』(An Affair to Remember、1957)から特に好きなシーンを。男性主人公の祖母がこの歌声でデボラ・カーの人柄を見抜き、孫にふさわしい女性だと確信するシーン。歌の途中、遠くで船の汽笛が鳴り、祖母との別れが近づいてきます....。


The Sound of Music Screen Test - Foreign Dubbing / Marni Nixon

『サウンド・オブ・ミュージック』(The Sound of Music、1965年)で修道女の1人、シスター・ソフィア役で出演した Marni Nixon は当時、スクリーンテストを受けており、そのフィルムが現存しています。Marni Nixon の真摯な姿勢でスクリーンテストに臨んでいる姿がいいです。


A Spoonful of Sugar(Richard M. Sherman, Robert B. Sherman) / Marni Nixon(1964)

1964年、ディズニー・プロダクションが制作したアルバム『10 Songs From Mary Poppins 』から。同年、ジュリー・アンドリュース(Julie Andrews)主演により映画化されました。映画『サウンド・オブ・ミュージック』で出会った2人はお互いの仕事や歌唱を称えあったと言われています。


Boomerang Opening / Marni Nixon

Marni Nixon が児童向けのテレビ番組でホストをやっていた作品。1970年代に入ってから、このようにテレビに出演したり、多くのショーに出演して表舞台に立つようになりました。1950年代から1960年代、"ゴースト・シンガー"だった時代もただ歌うことが好きだった女性だと感じています。

(富田英伸)

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