2019.03.11
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Tower Of Power

We Came To Play! (1978)

またまた前回から時間が経ってしまったのですが、Tower Of Power(TOP)の続き。TOPは白黒混合のファンク・バンド。サックス奏者のEmilio Castilloを中心としたホーンセクションを抱える大所帯のバンドです。

大所帯のバンドらしく幾多のメンバーチェンジを繰り返しながら現在も活動を続けていて、そうした新陳代謝が少しずつ音楽性の変化も生み出しています。73年に大ヒットした「What Is Hip?」が収録されている3枚目のアルバム『Tower Of Power』をリリースの後、74年には『Back To Oakland』を発表。このアルバムに収められている「Squib Cakes」はTOPを代表する1曲と言ってもいいのではないでしょうか。Brent Byarsのドラム、Francis Rocco Prestiaのベースがソリッドなリズムをキープし、Chester Thompsonのオルガン、Bruce Conteのギターが粘っこく絡みます。そしてそのリズム・セクションを包み込むように重層的にホーン・セクションが呼応するという、なんともスリリングな1曲です。

74年は彼らの黄金期で立て続けにアルバム『Urban Renewal』を発表します。ここではアルバム1曲目の「Only So Much Oil In The Ground」でいきなり度肝を抜かれます。スピード感のあるストレートなファンクがJB’sを彷彿とさせます。
さらに75年にはアルバム『In The Slot』を出しますが73年からここまでの間に、ドラムのDavid Garibaldi、ボーカルのLenny Williamsがバンドを抜けています。そして彼らはライブ盤をリリースしたのを最後にワーナーを離れてコロムビアに移籍します。ドラムにはRonnie Beckが加わり、移籍を機にポップな方向に舵を切ります。

76年に発表された『Ain’t Nothin’ Stoppin Us Now』はディスコ・ムーヴメントとも相まってかなりポップな出来です。当時コアなファンからはかなり批判もあったようですが、TOPホーンセクションがこの後様々なアーティストのバックに起用される端緒を開いたのがこの時期だったのではないでしょうか。ファンク・バンドとしての迫力とメロディアスな楽曲の数々によって、奥行きがあってスケールの大きな”聴かせる”ファンクに昇華したように思います。個人的にはこのころのTOP好きなんですが・・・。

そして、78年にあのSteve Cropperをプロデューサーに迎えて制作されたのがこの『We Came Play!』です。Steve Cropperはこの時期メンフィスからロサンゼルスに活動拠点を移しており、76年にNed Dohenyの名作『Hard Candy』をプロデュースしたりPocoの一連のアルバムを手がけたりしています。スタックスを離れて活動の幅を広げ始めていたSteve Cropperを迎えたことで新しい方向性を打ち出そうとしていたのかもしれません。
メンバーもかなり入れ替わり、音楽性も変化していて、TOPのファンの間ではそれほど重要視されていないアルバムではありますが、今でもライブで演奏されている「We Came To Play」やSteve Cropperも作曲に関わった「Love Bug」、同時期のEW&Fを意識したような「Yin-Yang Thang」、メロディアスな「Somewhere Down The Road」など新しい魅力を幅広く伝えることに腐心した跡がうかがえます。


時代の流れに呼応してメンバーを入れ替えながらファンクからディスコやメロディアスなポップス、そしてエレクトロニックな方向性などを打ち出しつつも、常にホーンを基調とした迫力のある音作りを志向してきたTOP。ファンクという言葉がもはや死語と化しつつある21世紀の今にあっても現役で活動を続け、ファンクの魅力を今に伝えてくれています。次回はそんな彼らの番外編を。

今日の1曲

(Kazumasa Wakimoto)

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