2017.09.23
Family Affair Family Affair
Sly & The Family Stone

There's A Riot Goin' On (1971)

Slyがウッドストックで一躍時代の寵児となった69年、時は「サマー・オブ・ラブ」。若者たちはベトナム反戦や公民権運動などを背景にした共同体幻想へと駆り立てられていきます。サンフランシスコはそんなサイケデリック文化をはじめとするカウンター・カルチャーの中心地でした。そしてこの街がSly & The Family Stoneの本拠地でした。

ことによると”Family Stone”というのはそうした共同体のことを指していたのかもしれません。Beatlesが『Abbey Road』で終焉の時を迎え、Janis JoplinとJimi Hendrixは最後の輝きを見せていました。一方でGrateful DeadやJefferson Airplaneといったサイケデリック文化を象徴するグループが台頭してきた時代。Slyがブレイクしたのはそんな時代でした。時代の空気を自分たちの音楽にたっぷりと取りこんでいたことが分かります。

『Stand!』の後70年にシングル「Thank You」をリリース。これがチャートの1位を獲得。スラップ奏法を駆使したLarry Grahamのベースがぐいぐいと引っ張るこの曲は彼らの最高傑作と言っても過言ではないと思います。今日私たちがファンクと言って想起するスタイルのほぼすべてが詰まったような、ファンクを象徴する1曲と言っても差し支えないと思います。バンドとして完成度の高いこの路線が続くかに思えましたが、そこから彼らは長いインターバルに入ってしまいます。

『Stand!』から2年半を経てリリースされた5作目がかの『There’s A Riot Goin’ On』(邦題『暴動』)でした。星条旗をあしらった大胆なジャケットはその昔、レコード屋で内容も分からないのに買わなくてはいけないのではないかという焦燥にかられたことを思い出します。もっとも日本盤の帯に思い切り“暴動”と書いてあるのを見て怯んでしまってその時は買えませんでしたが・・・(笑)。

ドラム、ベース、ギターにリズムボックスを中心とした隙間の多いプリミティブな音像は当時Slyがドラッグに耽溺していたからなのでしょうか。Billy Prestonが彩りを添えている「Family Affair」はSlyのポップセンスにトリップする感じが合わさった、アルバムを象徴する1曲です。
とにかくこのアルバムは、3杯ぐらいワインを飲んでから聴いていると不思議な浮遊感にいざなわれます。やばいやばい・・・。

この辺りを契機としてSlyはドラッグにまみれ、次第に精彩を欠いていくことになります。70年代初頭という揺れ動くアメリカの世情の渦に、類い稀な才能も抗えなかったのかもしれません。


今日の1曲


(Kazumasa Wakimoto)




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