2017.09.09
Stand! Stand!
Sly & The Family Stone

Stand! (1969)

毎度忘れたころにやってくる(というか誰が憶えているのか・・・)ファンク特集は番外編のEW&Fを挟んでの8回目。
James BrownからPファンクへと連なる流れを横目に見ながら同時期にもう一つの流れを作っていたのは、サンフランシスコから現れたSly Stone率いるSly & The Family Stoneでした。

テキサスで生まれたSly Stoneは幼少の頃家族と共にサンフランシスコに移り住みます。かつてJames BrownがそうであったようにSlyも少年時代にはゴスペルやドゥワップを歌うことで音楽の世界に浸っていきます。George Clintonもキャリアの最初にはドゥワップ・グループで歌っていたことがあり、ファンクという黒人音楽の新しい潮流を作っていく彼らもR&Bというメインストリームのマナーの上に立っていることが分かります。

やがて、SlyはラジオのDJを皮切りに地元の音楽シーンで徐々に頭角を現していきます。The Beau BrummelsやJefferson Airplaneといった白人グループのレコード制作にも関わったりしながら、弟や妹たちとバンドを結成します。文字通りファミリーを中心にしたバンドであったことはバンドの骨格をなすうえで重要なことでしたが、それ以上に彼らが白黒混合のグループであったことも画期的ではなかったかと思います。白人グループと関わりあってきたSlyのキャリアやサンフランシスコという土地柄もあったのでしょうが、彼が目指そうとしていたのはソウルではなくてロックだったということではないでしょうか。ワン・アンド・オンリーなスタイルの彼らの音楽をよく理解しようとするのはとても難儀ですが、ロックという視点で捉えると少し分かるような気がします。

60年代後半から精力的にアルバム制作を続けてきた彼らの初期の傑作が『Stand!』。個人的にはこのアルバムが最も好きなアルバムです。
「Stand!」は模索を続けてきたスタイルの一つの答えを見出したようなダイナミックかつ、ある種の浮遊感が漂う作品。Todd Rundgren辺りがやっていても違和感のないような会心の曲です。また、当時のアメリカの空気を諧謔的かつ逆説的に表現した「Don’t Call Me Nigger,Whitey」、飄々とした味のある「Everyday People」などSlyの才能が横溢している感じがそのまま記録されています。

そしてこのアルバムを引っ提げて登場したのが、かのウッドストックでのステージでした。アルバムに収められている「I Want To Take You Higher」の圧巻のパフォーマンスはウッドストックのクライマックスの一つとして語り草になっています


今日の1曲


(Kazumasa Wakimoto)




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